No title
緑間の長い指が足の裏から脹脛を優しく辿る。何気なく受けていたマッサージだったが、急にそこを意識してしまった。
いつも、この綺麗な指先に翻弄されている事実を思い出してしまい、その仕草が途端にいやらしいものになってしまったような羞恥を覚えた。
緑間の視線が自分の足に注がれている。そう思うと変に意識してしまい鼓動が少しずつ加速してゆく。
緑間が触れた箇所から甘い痺れがじわりと沸き起こった。
「……なぁ、真ちゃん……」
「なんだ?」
「今からさぁ、俺とイイコトしない?」
熱い息を吐きながら、思い切って訊ねてみると、緑間の動きがぴたりととまる。
「――な、な、なななっ! 何を言い出すのだよいきなりっ!」
流石のエース様もどうやら不意打ちには弱いらしい。ズザザザッと物凄い勢いで飛び退いて部屋の壁にぶち当たった。
「あはっ! 何その反応面白れ〜。つか、今更そんな驚くことかよ」
思わずブッと吹き出した高尾に緑間が鋭い視線を向ける。だが、その顔が茹でたタコのように赤くなっていて、にやける顔が抑えきれない。
「いきなりい、意味がわからないのだよ!」
「ぶふっ、やべぇ、マジでウケる。真ちゃん顔真っ赤だし、なにどもってんの」
近づいて顔を覗き込めば、赤くなった顔をツーンと逸らされてしまった。
「……人をからかうのは止めろ。悪趣味なのだよ」
「だって、真ちゃんの反応面白れぇもん。つか、さ……」
緑間の膝に手を添えて身を乗り出し、耳にそっと甘く囁きかける。
「俺、今……凄くシたい気分なんだよ」
「――なっ!?」
絶句する緑間の頬に触れ、両手で顎に手を添えると触れるだけのキスをした。
「……っ! お前はさっき疲れていると言っていなかったか?」
「アレ? 疲れてる時ってムラムラしない? それにさぁ、真ちゃんのマッサージ受けてたらなんかゾクゾクしちゃったんだよな〜俺」
上目遣いで見つめながらするりと肩に腕を回す。
色香を含んだ視線に充てられて緑間はごくりと息を呑んだ。
「な? ヤろうぜ」
「ひ、品のないことを言……っ!」
言葉を全て言い終わる前に緑間の唇を塞ぐ。呆然としたように動かない舌に自分の舌を絡め、吸い上げ、舐め回し、舌先で突いてやる。
逃げる舌を追いかけて絡め取ると、ようやく我に返ったように緑間の舌が動き出した。
角度を変えて何度口付けながら、唾液を絡め合わせる。息継ぎの合間が惜しいほどついては離れ、離れては再び唇を触れ合わせる。
「ん、ん……っ」
「後で後悔しても知らないのだよ」
身を乗り出して唇を貪る高尾のシャツを首から引き抜き、床に押し倒す。
「へへっ、後悔なんてしないって」
高尾は、心底楽しそうに微笑みながら背中に腕を回した。