No title
「全く! お前のせいなのだよ」
朝食後、着替えを済ませロビーに姿を現した緑間は、不機嫌極まりないと言った表情をしていた。
「え〜、俺のせいじゃねぇし。つか、おは朝見逃したくらいでそんな怒るなって」
隣に並ぶ高尾は、頭の後ろで手を組んでへらりと笑う。
高尾にとってはたかが占いでも、彼にとっておは朝を見逃すというのは死活問題だ。
「緑間くんがおは朝を見逃すなんて珍しいですね。寝ぼうですか?」
そこにひょっこりと姿を現した黒子が声を掛けてきた。
「よぉ、おはよーさん。いや、寝坊……じゃないんだけどな」
「?」
ちらり、と緑間を見て言葉を濁す高尾の態度に黒子は首を傾げる。
「高尾の声が五月蝿くてアラームが聞こえなかったのだよ」
「なっ! 俺はそんなにデカイ声出してないって言ってるだろ!」
カァッと頬を染めムキになる彼を一瞥して緑間は眼鏡を押上げ、鼻で笑う。
「だいたい、真ちゃんの一回が長すぎなんだよ」
「馬鹿め。もっと、もっとと強請っていたのはお前の方だぞ。あんなに気持ちよさそうにしていたら応えないわけにはいかんだろう」
「……っ」
小馬鹿にしたような物言いだが、痛い所を突かれ、高尾はグッと言葉につまる。
自分が最中に何を口走ったかなんて正直覚えていない。
「……」
そんな二人のやり取りを黙って見つめていた黒子がふぅと小さく息を吐いた。
「取り敢えず、高尾くん良かったですね。コレで一人寂しくトイレに篭らなくてすみそうで」
「うわわっ! いきなり何言い出すんだお前っ!」
「トイレ? なんの話だ黒子」
アワアワと慌てふためく高尾。と、意味がわからず首を傾げる緑間。
(アイツ……絶対に楽しんでんな)
三人のやり取りを遠巻きに見つめていた火神は何をやってるんだか。と、肩を竦めた。
こうして、合宿二日目の朝が賑やかにスタートしたのだった。