No title
部屋に戻ると、案の定彼はぐっすりと眠っていた。
彼の寝顔は初めて見る。
それにしても、本当に整った顔をしている。 サラサラとした柔らかそうな髪。スッと通った鼻梁は真っ直ぐでまつ毛が長くて、でも男らしい輪郭で。
こうして目を閉じていると改めて彼が綺麗な顔をしていると気づかされる。
眼鏡が無いと印象がだいぶ違って見える。これは一緒に風呂に入った時にも感じた事だ。
可愛いと、言ったら怒るだろうか?
(ナイトキャップ被って寝る奴初めて見た)
髪に寝癖がつかないようにとの配慮だろうか? それとも彼お得意の験担ぎか。
それは彼のみにしかわからない。
(つか、マジで験担ぎ多すぎなんだよ)
そろそろと手を伸ばし、そっと口元に触れてみた。形の良い唇は乾燥しているのか少しカサカサしている。
「ふふ……」
そっと身を乗り出して薄く開いた唇に自分の唇を重ねてみる。
「……ん」
唇が触れ合った瞬間、緑間が微かに唇を震わせたような気がした。
慌てて唇を離し様子を伺う。だが、それ以上の反応はなく、代わりに規則正しい寝息が聞こえてきて高尾はホッと息を吐いた。
「好きだ」
声に出すと途端に胸が甘く疼いた。彼はどう思っているんだろう?
聞いてみたくても答えは返って来ない。
高尾は短く息を吐くと、自分の手を緑間の手に絡ませた。
「お休み、真ちゃん……」
もう一度、触れるだけのキスをしてゆっくりと目を閉じた。