No title

(青峰SIDE)
その頃、青峰は自宅でゴロゴロしていた。大好きなマイちゃんの写真集を眺め一人テンションを上げていると、突然静かな室内に着信音が流れビクリと肩が跳ねた。
「んだよ、誰だ?」
表示された名前を確認し、青峰は面倒臭そうに頭を掻いた。いっそ気付かなかったフリでもしてしまおうかとも思ったが、緑間はしつこい。
桃井の作ったお菓子を押し付けた手前、出てやらないといけないような気がして大きなため息を吐くとスマホを耳に押し当てた。
「なんか用か?」
『青峰! 貴様なんてものを寄越したのだよ!』
「は? いきなり何キレてんだよ緑間」
挨拶も無しに、怒鳴りつけて来た相手にムッとしつつ大きな欠伸を一つ。
桃井の作ったモノが激マズなのは緑間も知っているはずだから怒鳴られる筋合いはない。
『非常事態だ。お前のせいで高尾が……』
「高尾? 高尾って確かお前の横に居るあの者好きなアイツか?」
『……そうだ。オマエが寄越したドーナツのせいで高尾が目を覚まさないのだよ!』
何とかしろ! と叫ぶ緑間は余程冷静さを欠いているらしい。状況説明すらまともに出来ない程焦っているのだろうか?
と、言うか可愛そうに……。高尾はアレ食べたのか。
「あー、さつきが作ったドーナツが不味過ぎて失神してるだけだろ。んな事で一々電話してくるなよ」
桃井の手料理が殺人レベルなのはキセキの世代なら誰でも知っていることだ。食べて失神するのは想像の範囲内だろう。
『それが、味は普通だったのだよ!』
「はっ!? 普通だった?」
『普通の味だと高尾は言っていた。それを二個程口にしたところで突然ぱったりと倒れてしまったのだよ』
何とかしろ! と、電話口で喚く緑間の声を青峰は信じられないと言った様子で聞いていた。
桃井の作ったモノがまともだったことなんて未だかつて一度もない。
「オイオイオイ、大丈夫なのかそれ?」
『大丈夫じゃない! 早く、何とかするのだよ青峰!』
「なんとかって言われてもよ……寝てるんならそのまま起きるまでそっとしといてやれよ」
『そんな事言ってこのまま二度と起きなかったらどうする?』
「知るかよんな事」
絶対に有り得ないとは言い切れないところが怖い。
「そん時は病院にでも連れていけばいいんじゃねぇの」
『何をそんな――ッ、高尾……?』
電話の向こうでハッと、息を呑む声が聞こえた。ドサッと何かが落ちる音がする。
「どうした、緑間?」
『なっ、なんだその姿は!? おいバカっ、やめっ……ぅ、』
「!?」
くっ、と息を呑む声が耳に響く。どうやら起きたらしいが何か様子がおかしい。
「おいコラ! どうしたんだよ!? 大丈夫か?」
訊ねてみても、答えは返ってこない。スマホが手元から離れてしまっているのか、何やらゴソゴソと物音と遠くの方で話し声がするだけだ。
「たく、なんなんだよ一体……」
高尾はどうやら目を覚ましたようだが、どうも様子がおかしい。
これはどうしたものかと、青峰は頭を掻いた。


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