No title
(やっべ。なんか無駄に緊張してきた……)
静かな室内に秒針を刻む音だけが無駄に大きく響き渡る。
一応、寒くないようにと暖房を付けてはいるものの薄い布切れを一枚纏っただけの姿と言うのは思いのほか心許なくてスースーする。
これで真ちゃんがノってくれなかったらどうしようか。柄にもなくそんな事を考えて、俺はフルフルと首を振った。
ここまで来たらヤるっきゃねぇっての! もしドン引きされても笑って誤魔化せばいいって――。
不安な気持ちを吹き飛ばすように頬をぺちぺちと叩いていると、タイミングよく玄関のチャイムが鳴った。
さっすが真ちゃん。時間通り!
「開いてるから勝手に入っていいぜ」
中から声を掛け、真ちゃんを待つ。
「お邪魔するのだよ――――なっ!?」
ほどなくして俺ん家に入ってきた真ちゃんは、俺の姿を見るなりそのまま固まってしまった。
「ふはっ、どーしたんだよ」
「ど、どうしたもこうしたも! その恰好は何だ!?」
「あー、コレ? たまにはこういうのもいいんじゃねーかと思って。どうせみんないねぇし」
「…………」
「腹減ってるだろ? 先に飯にする? それとも……オ、レ?」
「な……っ」
するりと手を伸ばし、ひやりと冷たい頬に触れる。上目遣いで覗き込んでやれば綺麗なグリーン色した瞳が大きく見開かれ、ビクっと肩を揺らし動揺する真ちゃんは見ていて面白い。
「なあんてな♪ 取り敢えず此処じゃ寒いからリビング行こうぜ!」
思わず吹き出してしまいそうになるのを必死に堪え、直立不動で動かない真ちゃんの腕を引いて半ば強引にリビングへと連れていく。
真ちゃんが「破廉恥なのだよ」と、呟くので俺は笑いを堪えるのに必死。
つか、破廉恥って! いつの時代だよ。
「昼飯、直ぐ作るからちょい待ってろな」
取り敢えず、ソワソワと落ち着かない様子の真ちゃんをソファに座らせキッチンに立つ。
「えーっと、チャーハンでいっか……材料、材料……」
食材探して冷蔵庫の一番下にある野菜室を中腰になって漁っていると、背後に視線を感じた。
真ちゃん、めっちゃこっち見てる――!
「……っ」
舐めるようなその視線に、心臓がバクバクと早鐘を打ち出す。
真ちゃんは何も言わない。ただジッと、俺の背中だけを見つめている。
やっべ、俺……。
真ちゃんに薄い布切れ一枚だけ纏った姿を見られている。ただ、それだけなのになんだか妙に興奮する。
アイツは今、何を考えているんだろう?
なんだかドキドキして、顔が熱い。
真ちゃんも少しは興奮してくれたりするんだろうか?
そんな事聞いたら、お前と一緒にするな。馬鹿め! とかって怒られそうだけどw
真ちゃんの怒ってる姿が容易に想像できて笑いが込み上げて来る。
でも、なんだかんだで俺の事抱きたいって思ってくれてたら嬉しいんだけど。
チラリと背後へ視線だけを向けてみれば、真ちゃんは相変わらずソファに座ったままジッと俺を見つめている。
いや、ガン見してると言った方が正しいか。
見てるだけじゃなくて、もっと近づいてくればいいのに――。
『全く、お前はいつも可笑しなことを思いつく……』
後ろから腰を抱くように引き寄せられて、呆れたよな声が耳元に響く。
『たまにはこういうのもいいだろ?』
真ちゃんはフンと鼻を鳴らし、眼鏡を押し上げる。否定しないって事は満更でもねぇって事だろ。
それに、俺の腰の辺りに感じる熱が真ちゃんの興奮を伝えて来る。
『なぁ、触ってもいいんだぜ?』
包丁を持つ手を止めて、誘うように腰を押し付けてやると、真ちゃんがぎょっとしたように目を見開いた。
『ほら、早く……』
『……まったく、ふしだらな奴だ。お前は――』
『ふしだらって……ん、ぁっ』
なんだかんだと言いながらも、真ちゃんの左手がエプロンの布越しにペニスを握りこむ。
直に触れて欲しいのに布越しに扱かれて、もどかしさに腰が揺れる。
空いている手で乳首を弄りながら、首筋を舐められてゾクゾクするような甘い痺れが沸き起こり、堪らず下半身が疼いた。
「……ッ」
『いやらしいな。エプロンに染みが出来ているのだよ』
腰にクる低音ボイスに囁かれるとマジでやばい。
『なぁ真ちゃん、早く……俺、もう……』
『早く、なんだ?』
『わかってる、くせに』
腰に感じる熱がもどかしくて、腰を押し付けてやる。
『……ッ』
早く挿れて欲しくて、シンクに手をついて腰を突き出すような格好になる。
『さっきから当たってるソレ。もうガチガチじゃん……挿れたいんだろ? いいから早く来いよ』
真ちゃんので無茶苦茶に突き上げて欲しい。奥まで激しく……。
『フン、馬鹿め……オレを煽った責任はきちんと取るのだよ』
『ん、わかってるって……』
だから、早く――。