No title

それは、毎朝の日課となっているおは朝占いの一言から始まった。

『今日の蟹座は恋愛運が急上昇。意外な人物と思いが通じ合える日。特に蠍座の人とは相性もバッチリ。一気に距離を縮めるチャンスかも!』

アナウンサーの良く通る声がそう告げるのを「おは朝」信者の緑間真太郎は朝食を食べる手を止め、注視していた。

今日の占いはあまり自分には関係のない事のようだ。

毎日バスケット漬けの生活をしている彼に恋愛をする余裕などない。

もとい、女性には全く興味が無いので恋をする必要性も感じられない。

色恋沙汰で浮かれるより、ラッキーアイテムを手に入れて今日一日の生活に支障が出ないよう人事を尽くす事の方が遥かに大切に思える。

『そんな蟹座のラッキーアイテムは……』

今日は一体何なのだろう? 緑間は朝食を食べる手を止め、息を呑んで発表を待った。

『バスケットボール! これを持てばさらに良い事が起きる事間違いなし!』

その瞬間、緑間の片眉がピクリと反応する。

「ほぉ、バスケットボールか……」

まさか自分が毎日触れているボールがラッキーアイテムに選ばれるとは!

手に入らない物が出てきた時の焦燥感や落胆の気持ちを思うと、聊か簡単すぎて物足りなさすら感じてしまう。どうやら今日はラッキーアイテムを探す手間が省けたようだ。

恋愛運などはどうでもいいが、今日は何か良い事があるかも知れない。

幸先のいい一日のスタートに、思わず口元に笑みが浮かんだ。


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