No title

言わないのなら、無理にでも言わせてやるだけだ!
「ていっ! 真ちゃんの眼鏡もーらい♪」
「なっ!?」
オレはすかさず置いてあった眼鏡を奪った。
「こら、返すのだよ! 高尾っ」
「真ちゃんの様子がおかしい理由を話してくれたら返してやるよ♪」
「だ、だからなんでもないと言っている!」
案の定慌てて追いかけてくる真ちゃんをかわして逃げるオレ。
ここまではまぁ、想定内だったんだけれども。少し調子に乗りすぎたかもしんない。

「高尾、いい加減にするのだよ――っ!」
「うわっ、ちょ、真ちゃんマジあぶねぇって」
物が散乱している狭い部室で逃げ回るのはやっぱ困難だったわけで、腕を掴まれたと同時に真ちゃんが隅に立てかけてあったモップの裾を踏んづけたのが目で確認できた。
「……おわっ、やっべ」
あっ! と、思った時には既に遅くずるりと嫌な音がして、バランスを崩した真ちゃんがスローモーションのようにオレの上に倒れかかってくる。
その勢いで天地がぐるりとひっくり返り、ゴチッと鈍い音がして床に思いっきり頭をぶつけた。
「って〜。目がチカチカする……」
あまりの痛さに星が数個瞬いた気がした。ハッと気が付くと鼻と鼻が今にもくっつきそうな距離に真ちゃんの顔――!
びっくりしすぎて一瞬、心臓が止まっちまうんじゃないかと思った。
 息がかかりそうなほど近くに真ちゃんの存在を感じ、じわじわと自分の体温が上昇していくのを感じる。この距離はマジで心臓に悪い。
 目の前に淡いグリーン色した瞳があって緊張で息が詰まる。まっすぐに見つめられると絡まるその視線だけで溶けてしまいそうだ。
真ちゃんて、やっぱキレーな顔してんのな。
「――――っ、高尾……」
そっと頬を撫でられて、無意識のうちに体が小さく跳ねた。
ゆっくりと唇が近づいてきて、オレのそれが重なる。
「えっ、ちょ……っ! 真ちゃ……ンうッ」
オレ、今キスされてる!? 真ちゃんの柔らかい唇が、オレの唇に確かに触れている。
嘘、だろう!?
啄むようなキスを繰り返し、引きつるように震えた唇の間にやがて真ちゃんが器用に舌を差し込んで来た。ゆっくりと歯列をなぞられ、ゾクリと背筋が粟立つ。
「んんっ……ふ、ぁ……」
オレ真ちゃんとキスしちゃてんの? マジかよ……っ。
あまりの急な出来事に、思考がついていかない。頭ん中が真っ白になってドキドキする。
心臓が激しく鳴りすぎて胸が苦しい。どうしよう身体が震えてる。
「ちょ、待てって真ちゃ……」
真ちゃんの唇がこめかみや、頬やそれから耳元にまで落ちてきて力が抜ける。
いつの間に侵入してきたのか真ちゃんの綺麗な左手がシャツを捲り上げオレの肌に触れた。
「あ……ぅっ」
耳をぺろりと舐められ、反射的に体がびくりと跳ねた。
どうしよう、ヤバい、このままじゃオレ絶対に流される。
そう思った矢先――。


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