No title

「緑間サーン、俺すげー暇なんだけど」

「……」

「なぁなぁ、起きてんだろ? 折角二人きりになれたんだしちょっとは相手しろよ」

頬をチョンチョンとつついたり、眉間に寄ったシワを指で広げたりしていると突然、カッと緑間が目を開いた。

「おっ? やっと起きる気になった?」

「……高尾」

「なに?」

緑間は眉間に手を充て小さなため息を一つ。

「五月蝿い。俺の邪魔をするな」

「邪魔って。……あぁそう。わかった! もういいっ」

流石にムッとして、布団に潜り込むと緑間に背を向けた。

(たく、なんなんだよ! 邪魔って。酷くないか?)

そう言えば、まだ一度も彼の口から「好き」だと言われた事はない。

緑間にとって自分は一体なんなんだと、怒りを通り越して虚しさすら感じる。

「……何を不貞腐れている?」

「別に。寝ろって言ったのお前だろ」

「全く、構ってくれと喚いていたかと思えば、今度は拗ねて……」

背後で彼が起き上がる気配がして困った奴だと呟く声が聞こえた。

それと同時に目深に被っていた布団を捲くられ、そっと抱きしめられてドキリとなる。

「少しだけなら相手をしてやってもいいのだよ」

体温と低い声の振動が背中からじわじわと伝わって、鼓動がどんどん速くなってゆく。

「こっちを向け、高尾」

「……ンッ」

ねっとりと囁くように呼ばれ、身体がぶるっと震えた。

「……どうした? 何を緊張している」

「そりゃ、真ちゃんがいきなり抱きついてくるから……」

「お前が望んだ事だろう?」

耳に息を吹き込みながら、彼の手が首筋にかかり顎のラインをなぞる。

首を斜め後ろに傾けられ、ふっと影がさしたかと思ったらゆっくりと唇を塞がれた。

唇を触れ合わせたまま、身体を捩って向き合うような体勢になり背中に腕を回す。

キスは次第に深くなり、薄く開いた口腔内に性急な動きで舌が潜り込んでくる。

いつもの冷たい言葉とは裏腹に、彼のキスは優しくて甘かった。

彼の巧みなキスに、さっきまで感じていた腹立たしさや虚しさはいつの間にか消え失せてしまっていた。

彼が求めるまま、貪るように口づけを繰り返す。

「はっ……ふ……ぁッ」

歯列をなぞられ、熱い舌先が口腔内を蹂躙する感覚に背筋がぞくりと粟立った。


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