No title

流石に昼飯時だということもあって、いつもは騒がしい部室棟もひっそりと静まりかえっていた。
騒々しいのはあまり好きじゃないからこれは好都合だ。
ゆっくりと通いなれた長い廊下を歩いていると、バスケ部のドアがほんの少し開いている事に気が付いた。
中からカタンと小さな物音がして、人の気配を感じる。
誰かいるのだろうか?
そっと隙間から様子を伺うと、見慣れた黒髪を発見。 
なんだ、高尾の用事は部室にあったのだな。
何処かホッとして、ドアノブに手を掛けた、その瞬間――。
「ちょっ、ダメですって。誰か来たら……」
「この時間に、部室に来るような熱血馬鹿はいないだろ」
「で、でも……っ」
何やら不穏な空気に、俺は一瞬中に入るのを躊躇ってしまった。
どうやら取り込み中のようだ。
高尾と一緒にいるのは……宮地さんか?
そっと中の様子を伺ってみると、案の定はちみつ色の髪が視界に飛び込んできた。
なんだ? 一体中で何が起こっている?
「お前だって、本当はこうされたくてココに来たんだろう?」
「あ、やっ……ちがっ、宮地さんが、呼び出したんじゃないっすか……んんっ」
よく見ると、ロッカーに高尾を押さえつけて、制服のボタンを器用に外し首筋や露わになった胸元に宮地さんが唇を寄せている。
「な……っ!?」
あまりにも衝撃的なシーンに直面し、信じがたいその光景に足が竦んだ。
人間違いか? とも思ったがカラスの濡れ羽のような黒い短髪、やや釣り目で意志の強そうな瞳。何よりアイツの声を俺が聞き間違うはずがない。
「ん、んんっふ……は、……あっ」
口元に手を当てて押し殺してはいるけれど、堪え切れないのか鼻から抜けるような甘い嬌声が静かな部室に響き渡る。
俺はどうしていいのかわからず壁に背を預けたまま動けなくなった。見てはいけない。頭ではそうわかっているのに二人から目が離せない。
「は、ぁ……んんっ宮地、さ……っ」
上気した頬や、乱れる吐息、制服の隙間から見える鎖骨が何とも卑猥に映って思わず生唾をごくりと呑み込んだ。


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