No title

高尾は誰とでもすぐに打ち解け、親しくなれる。それは最早ヤツの特技とも言うべきだろう。
屈託のない笑顔は人好きがするし、頭の回転が速く話題には事欠かない。
コミュ障気味の俺を、クラスに馴染ませたのもヤツだ。
友達なんて必要ないと思っていたのに、気が付けば高尾を介して集まってきたクラスメイト達が俺に話掛けてくることもしばしある。
人付き合いは相変わらず苦手だが、それでもこのクラスはいいクラスだと思えるようになったのは高尾のお陰と言うべきだろうか。
そう思ったところで絶対に口には出してやらないが。
最初は鬱陶しいと思っていた高尾の存在も、今では側に居るのが当たり前のようになってきている。
全く、人と言うものは変わるものなのだな。
「悪い、真ちゃん! ちょっと俺、用事が出来たから先に食べといてくんね?」
4限目が終わり、後片付けをしていると、いきなり高尾が振り向いて俺の目の前でパチンと手を合わせた。
「別に構わないのだよ」
「寂しかったら他のダチと食ってていいから」
「なっ!? 寂しいわけがないだろう!」
全く、俺はガキではないのだよ! 弁当位一人でも食える!
憤慨する俺をよそに、「じゃぁ、行ってくるな」と、教室を出て行ってしまった高尾を見送り小さなため息が漏れた。
アイツは本当に忙しいヤツだ。
昼食くらいゆっくり食べれないのか?
こんな時まで呼び出しとは……。これでは高尾が休めないではないか。
迷惑なら迷惑だとはっきり言うヤツだから、きっとどうしても外せない用事なのだろうが、昼飯食ってからでもいいんじゃないのか?
そんな事を考えながら、弁当を出そうとカバンを漁っていた俺はある事に気付いてしまった。
「む?」
全く、今日はなんて日なんだ。今朝のおは朝占いでも運気は下降気味だったし『忘れ物に注意! ショッキングな出来事に遭遇するかも』と、出ていた。
よりにもよって弁当を入れた袋を部室に忘れてきてしまうなんて。俺としたことが……。
流石に下降気味の運勢はラッキーアイテムのオリーブオイルだけでは補えないか。
仕方がない。……取りに行くのだよ。
盛大な溜息と共に立ち上がり、俺はゆっくり部室へと向かった。


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