No title
行為後、ベッドで突っ伏していると、真ちゃんがペットボトルを持って戻ってきた。
「大丈夫か?」
心配そうに顔を覗き込みながらそう尋ねられ、羞恥で自然と顔がほてってしまう。
「だ、大丈夫だっつーの」
いつも冷たい態度を取るくせに、ベッドの中だけは妙に優しい。
それがくすぐったくて、恥ずかしくて俺は布団を目深に被る。
ギシッとベッドの軋む音がして布団ごとそっと頭を撫でられた。
テーピングの巻かれていない綺麗な左手がオレの髪に絡む。
真ちゃんに触れられていると思うだけでドキドキしてどう反応したらいいのかわからなくなってしまう。でも、それが真ちゃんには理解できないらしい。
「――高尾、何処か具合でも悪くしたのか?」
「や、別にどこも悪くねぇってば真ちゃん心配し過ぎ〜」
ただ真ちゃんの優しさに慣れてなくてどうしたらいいのかわからないだけ。
こういう時だけ優しいとかほんっズルいよな真ちゃんは。
「じゃぁ顔を出せ。隠していると心配になるのだよ」
そっと顔を上げると綺麗な深緑色の瞳と目が合って、息が止まりそうになった。
「無理させて悪かった。お前の事が好きすぎてどうも加減がわからないのだよ」
「〜〜〜っ」
すまない。なんて謝罪の言葉を口にしながら、ひやりとした掌が頬を撫で、コツンとおでこがくっついた。
俺の方がどうしていいかわかんねぇよ! 顔が近すぎてドキドキが止まらない。心臓がバックンバックン言ってて今にも壊れてしまいそうだ。
「顔が少し赤いな……」
「この部屋が暑いんだよ。お、俺汗かいたからさ、シャワー借りてきていい?」
甘い雰囲気は嫌いじゃないけれどどうも苦手。普段真ちゃんがこんなにべたべたしてくることなんて無いから、余計に意識してしまう。
真ちゃんの手から逃れるようにすり抜けて、返事も待たずに部屋を出た。