No title

「伊月さん、予算は〜?」

「ん〜、取り敢えず1000円以内で買えるものがいいな」

「ちょっ! 1000円って、設定金額高すぎじゃね!? ブランドモンのチョコでも買う気っすか?」

「いや、ブランド物はちょっとな……」

高校生のお財布事情はちょいと厳しい。しかも部活だなんだと忙しいオレ達は当然バイトなんて出来ねぇから必然的に金額は限られてくるハズだ。

つか、チョコ1つに1000円って、アレか? 伊月さんって、真ちゃんみたいに金銭感覚狂いまくってるボンボンなのか? それともそん位相手の事が好きって事か?

「オレなんて500円で十分かなって思ってんのに。愛の力ってスゲーのな」

「ちがっ、別に愛とか関係ないだろ! 相場がちょっとわからなかっただけだよ。……高尾が500円だって言うなら俺もそうする」

拗ねたような声を上げ、棚に視線を移す伊月さんが不覚にもほんの一瞬だけ可愛いと思ってしまったのは、気の迷いに違いない。

「ん? 何、どうかしたのか?」

思わずジッと見つめてしまっていたオレの視線に気が付いて、伊月さんが不思議そうに声を掛けてきた。

「なんでも、無いっす」

「変な奴だな」

知ってたけど。と、何気に酷い事を言いながら柔らかく笑う。

なんか、この人と居ると調子狂う。

ふと視線を彷徨わせていると、ボールの形をしたチョコを発見した。

「ね、伊月さんの好きな人ってやっぱバスケやってんの?」

「えっ、あ〜……うん」

「コレとかどうっすか?」

オレが差し出したのはバスケットボールの包装紙に包まれたチョコ。

「うーん、それはなんか芸が無いんじゃないかな」

お前だったら買うか? と、尋ねられてオレは慌てて首を振った。

こんな、なんもひねりが無いモノはやっぱオレでも渡せない。

クマさんチョコとか可愛いけど、真ちゃんに渡すってなるとちょっとな。

あ〜でも、友チョコとして渡すつもりだから、あからさまにガッツリハートとかよかこういう可愛い系のがいいか?


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