No title
俺と話してるときはいつも仏頂面で「あぁ」とか「うん」とか短い返事しか寄越さないくせに……。なんで、楽しそうに喋ってんだよ。
「ねぇ、緑間君。珍しい物が置いてあるお店知ってるから今度一緒に行ってみない?」
そんな彼女のよく通る声が聞こえてくる。
あ〜、ダメダメ。真ちゃんは誘っても「行かないのだよ」しか言わないって。
俺が、珍しいグッズの店紹介してやるっつっても、そう言ってたし。
「あぁ、今度入手困難なアイテムが出た時にはお願いするのだよ」
真ちゃんは彼女に向ってそう言った。
マジか!? 俺がいくら誘っても断るくせに!
やっぱ男より女の方がいいってか?
信じられねぇ……。なんで笑ってんだ。
なんでそんなに楽しそうなんだよ。
俺だって真ちゃんの笑顔がみたいのに。沢山話して手繋いで……。
やりたいこと沢山あんのに。
あんな顔俺には一度も見せてくれたことない。
なんで……。なんで……!
やっぱ男より女の方がいいってか?
まぁ、よく考えたらそりゃそうだよな。そっちのが自然だもんな。
俺って真ちゃんのなんなんだ。
真ちゃんは俺の事一体どう思ってんだろう。
ほんともう、わかんねぇよ――。
「……っ」
「高尾、どうした?」
胸が詰まって息苦しく思っていると不意に肩を叩かれた。顔を上げると比較的仲のいいクラスメートと目が合う。
「なんかスゲー泣きそうな面してるけど」
「なんでもねぇし! ちょっと目にゴミが入っただけだよ。つーか、何で俺が泣かなきゃいけないんだよ。意味わっかんねぇじゃん」
わざと明るく振舞って、笑い飛ばす。視界の端で一瞬真ちゃんがこっちを見たのがわかったけれど、俺は敢えて気付かないフリをした。