No title
告ったのはもちろん俺からだった。その時だって一世一代の告白をOKはしてくれたもののさっさと俺を置いていっちまうし。
甘い恋人関係を夢見てた俺の現実を打ち砕くようなツンデレっぷりに正直心が折れちまいそうだ。
いや、あいつはツンデレつーより、ただのツンツンだな。
ちょっとくらいデレてくれたら可愛げもあるのに。
俺の誘いは全部無視! ことごとく断られ続けて正直凹みそうだ。
マジ、俺ってなんなの?
洩れそうになる溜息を押し殺し慌てて真ちゃんの後を追った。
緑色の長身は嫌でも目立つから直ぐに見つかったけれど、声を掛けようとして思わず立ち止まる。
ん? んん……!?
真ちゃんは、クラスでも美人だと評判の女子と話をしていた。
普段女子と話したりしない真ちゃんが、超可愛い女の子と楽しそうに会話してるとか、レア中のレア!
束縛したいわけじゃないから、女子と話をするな! とは言わないけれど……。
一応、俺は真ちゃんと付き合ってるわけだから、あんな可愛い子と喋ってんのを見るとやっぱそれなりに面白く無いわけで。
真ちゃんは俺に一度も見せたことのない笑顔で女子と話をしている。それを眺めているうちに胸の奥にはもやもやとした黒い感情が澱のように溜まっていく。
「俺より、あの子の方が彼女って感じだな」
自嘲的に洩れた言葉は予想以上に小さくて、儚げだった。
こんな卑屈な考え方したらだめだ。自分が辛くなるだけじゃん。
わかってるのに、止められない。
自分のラッキーアイテムをその子に手渡し、肩を寄せ合って話し込んでいる姿を見ていると胸が痛くなった。