No title
それからと言うもの、高尾は何をしても注目の的だった。
いざ練習が始まれば、真面目にいつもの練習メニューに必死でついてこようとする姿勢は称賛に値する。
だが、高尾が走るたびに胸がブルンブルンと大きく揺れてみんなの視線はソレに釘づけ。
正直練習に身など入るはずもない。
「っは〜、やっぱキッツ〜……女ってのは大変なんだな」
腹を捲り、パタパタとシャツで仰ぎながら大股開きでベンチに腰を下ろす。
「おい、もう少し恥じらいと言うものを持つのだよ。破廉恥な!」
「ぶっは! 破廉恥って! 真ちゃん古風過ぎ〜っ! つか、真ちゃん顔真っ赤だぜ?」
「五月蠅い黙れ!」
ニヤニヤとしながら顔を覗き込まれて低い声が出た。
全く、ずっと我慢しているオレの身にもなるのだよ。
汗でシャツが身体に張り付くから、胸の形が最初の時よりもさらにくっきりとよく見える。乳首の位置までわかってしまうほどなのに、本人は全くその事に気付いていないのだからタチが悪い。
「よぉ、高尾妹! オレと1on1しようぜ!」
赤面していると、宮地さんがやってきて高尾の肩に手を置いた。
「1on1? するする♪ ちょうど誰かとやりたいって思ってたんっすよ」
ウキウキした声で宮地さんの腕ににぴったりとくっつく高尾。
宮地さんも宮地さんで、何をそんなに嬉しそうな顔をしているんだ!
ハッ! このままでは高尾が宮地さんに食われてしまうかもしれない!!
二人の後を追いかけようと思ったが、タイミングの悪い事に監督に呼び止められオレはチッと小さく舌打ちをした。
背後ではバッシュのスキール音と、ボールを突く音。そして周囲の感嘆の溜息が聞こえてくる。
こういうときに限って長い監督の話にイライラしながら、オレは背後の二人が気になって仕方がない。
「聞いてるのか? 緑間」
「すみません、聞いてません。失礼します」
それだけ言うと、まだ何か言っている監督を置いてくるりと踵を返した。
だが、肝心の二人の姿が何処にも見当たらない。
「高尾の妹ならさっき裏から出て行ったぞ。なんか、高尾の足がつったとかなんとかで……。
「何!?」
宮地さんと二人で!? それは、危険極まりない!
「すみません! 失礼します!」
オレは大坪さんに一礼すると慌てて裏口から飛び出した。
一体何処へ?
部室か、保健室かそれとも……。
そのとき、オレから丁度死角になっている角の方から何やら声が聞こえてきた。
「あっ、いったぁ……も、宮地さんっもっと優しくしてくれよ……」
「いいから、暴れるなって。女の子がそんな言葉使ったらダメだろ?」
「そんなこと言ったって……いてっ、ああっ痛いって……! 初めてなんだから、もう少しゆっくり……」
頭の中が真っ白になったようだった。
……宮地さん!! オレの高尾に一体ナニを!!!
「高尾っ!」
勢いよく飛び出したオレの目に飛び込んできたモノは
片足を上げた状態の高尾と、ツボ押し器を持った宮地さんの姿。
「んっ、よぉ、一体どうしたんだよ。真ちゃん血相変えて」
「な、ナニをしているのだよ」
「何って足ツボマッサージ。さっき足つっちゃってさぁ……宮地さんがこうすると早く良くなるからって」
「足ツボ……そうか……」
よかった。高尾がキズモノにされていたわけではなくて。
事なきを得てホッとしたが、こんな状態であと数時間過ごすのは流石にオレが限界だ。
「帰るぞ高尾。 やはりお前は今日は家にいるべきなのだよ」
「ええ〜っ、やだ。俺これから宮地さんとイイコトするって約束したんだよ」
「……は?」
オレの手を振り切って宮地さんにしがみつく高尾。
「俺達、結婚して子供たくさん産んでバスケのチーム作るんだから邪魔すんなよな」
「な、なっ!?」
何故、宮地さんと!?
そんなの――。