No title
「お前は俺のモノなのだよ。だから他の奴に隙を見せるな」
オマエハオレノモノ――?
頭に届くまで数秒を要し、ようやく意味を理解した時には心臓が止まっちまうかと思った。
だって、俺が真ちゃんのモノだって……!
「真ちゃんそれって……」
「煩い黙れ。何も言うな。とにかく、俺以外の奴と俺の知らないところで馴れ馴れしくするな!」
なんつーワガママ。でも……すげぇ嬉しい。
そっと、背中に腕を回すと真ちゃんの身体が大げさな程びくりと跳ねた。
真ちゃんのシャツは洗いたてのいい香りがする。
「サンキュ、真ちゃん」
「……ッ。そろそろ行くのだよ。朝練に遅れる」
真っ赤になって、慌てて体を離す姿に思わず笑いが込み上げて来た。
「つか、宮地先輩に今日こそパイナップル投げつけられつんじゃねぇ? 狸ぶつけちゃったワケだし」
「知らないと言えば済むことだ。アイツは俺に全く気づいていなかったからな」
そりゃ気付くわけねぇよ。つか、普通空から置物が降ってくるなんて思わねぇし。
「まぁ、なんとでもなるのだよ。今日もラッキーアイテムは持ってきているのだから。それよりも、早く行くぞ」
「了解!」
すっと差し出された左手に自分の手を重ねて、俺たちは再び体育館の方へと向かった。