No title

あー、気持ち悪い……。
ここ数日、俺は原因不明の風邪に苛まれていた。
咳も高い熱もないのに、とにかく身体がだるくて仕方ねぇ。
特に、腹が減るとムカムカが酷くて立っていられないこともある。
やっぱ病院行ったほうがいいかな? あ〜、でも面倒くせぇな。
色んな事を考えながら部室のドアを開けると、そこには俺より早く来ていた宮地さんが着替えている最中だった。
「はよーっす」
「おせーぞ。先輩より遅く来るとはいい度胸だな高尾。轢くぞ」
「宮地さんが早いだけっすよ」
「つか、大坪はもう練習始めてるっつーの!」
「マジっすか? 大坪さん早ぇ〜」
さすが大坪さんとでも言うべきか。練習開始までまだ一時間以上あるのに、凄い気合だ。
やっぱ次が最後の大会だと思うと気合も違ってくるか。
「……つか、高尾。お前、なんか顔色悪いぞ」
「そーっすか? あぁ、ちょっと気分悪くて、朝飯食って来なかったからっすよ」
「ばーか。今からスポーツやんのに飯食ってねぇとか、ねぇよ! さっき買ってきたオレの飯やるから、チンして食え!」
今日は珍しく宮地さんが優しい。気付いたらわざわざ備え付けのレンジで弁当を温めてくれる始末。
あんま食欲ねぇんだけど。
そう言いたかったけど、先輩の好意を無駄には出来ない。(つか、宮地先輩に逆らう勇気がない)
差し出された弁当の蓋を開くと、ホカホカと湯気が立ち昇り俺の鼻腔を美味そうな匂いがくすぐった。
その瞬間。
「……ぅっ、……やべっ、すんません。宮地さんっ」
急に込み上げてきた吐き気に、慌ててトイレに駆け込む。
ちょうど部室に真ちゃんが入って来るのとすれ違ったけれど、今はそれを気にしている余裕はない。
腹は減ってるはずなのに、ホカホカと湯気がたってるのを見るだけで気分が悪くなるとかどんだけなの俺。

「おい、大丈夫か? 何処か具合でも?」
「真ちゃん……。あんま、大丈夫じゃないかも」
心配して着いてきてくれた真ちゃんに介抱されながら、はぁっと大きなため息が洩れた。
「風邪か?」
「や、確かにちょいダルいけど、熱とかないんだよ。最近腹が減ると、なんかムカムカしてさ〜。特に炊きたてご飯がだめみたいでムカムカすんだよ……。つか、真ちゃん使って悪いんだけど自販機からレモンソーダ買ってきてくんない?」
「なに!?」
「だから、レモンソーダ」
真ちゃんは、何を思ったのか急に神妙な顔つきになって、何やら考えるような素振りを見せた。
「体が怠くて、吐き気があって……って……」
「え?」
それって、なんだよ?
「真ちゃん?」
なにやら真剣に考え事をしているらしい真ちゃんは眉間に皺を寄せていたかと思うと、いきなりバッと顔を上げた。
「高尾、お前……」
「な、なんだよっ」
「……」
急に俺の顔をジッと見つめて複雑そうな表情をする。
一体なんだ? 言いたい事があるならはっきり言ってくれよ。
すっげー、気になるじゃねぇか。
「えっと、真ちゃん。マジ一体どうしちゃったんだよ」
俺の言葉に反応し、真ちゃんの体が盛大に跳ねる。そして、凄い真面目な顔をして眼鏡を押し上げながら、こう、言い放った。


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