No title

されるがままに上向かされて、ひんやりとした手がおでこに当たった。

……真ちゃんって前から思ってたけどまつ毛長いよな。

てか顔近っ!!

「熱はないようだな」

「……っ」

不意打ち食らって、俺は咄嗟に言葉が出なかった。

普通にしなきゃと思えば思うほど動揺して、心臓なんかバクバクと激しく脈打っちゃって声にならない。

「顔が赤いな。早く帰って寝た方がいいのだよ」

それはお前がいきなり顔近づけてくるからだよっ! と、言いたかったけど言えない。

いつも冷たいくせにこういう時だけ優しいとか、マジ狡いよな。

「心配してくれんだ?」

「なっっ! 勘違いするな高尾。お前が休んだらオレがつまらなくなるから言っただけなのだよ」

真ちゃんは慌てて眼鏡を押し上げるとフンっと鼻を鳴らす。

その頬がほんのり赤くなっているのを見逃す俺じゃない。

「たく、テレんなって」

「テレてなどいない! その様子じゃ、お前の態度がおかしいと思ったのは気のせいだったようだな」

「当たり前じゃん! 俺、そんなにヤワに出来てねぇよ」

「……」

「じゃ、また明日な!」

分かれ道で真ちゃんを見送った後、一人になった途端に思わず深い溜息が洩れた。

自分の感情を隠すのって楽じゃねぇな。

この気持ちは絶対に普通じゃないから、知られちゃいけない。

誰にも気づかれちゃいけない。

だから勿論、告るつもりもねーし、告りたいとも思ってない。

俺の気持ちを知って、今の関係が崩れちまうくらいだったら、このまま“ただの友達”でいた方がいい。

だけど……。側に居たいのに、一緒にいるだけで胸が苦しくなるとか俺、どんだけなんだよ。


[prev next]

[bkm] [表紙]

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -