No title
部屋に戻ると、真ちゃんが壁に凭れてウトウトと眠っていた。
「なんだ、緑間いんのか……」
チッと、宮地先輩が悪態を吐いて真ちゃんの顔を覗き込む。
「……コイツ、爆睡してるみたいだな」
「そりゃそうっすよ。真ちゃん、なんだかんだで俺らよりもスゲー練習してるし」
この合宿中だって、遅くまで一人残って練習してたりするし。
自由時間に真ちゃん探す時は、大抵体育館に行けばすぐ見つかる。
それだけ練習すれば、昼寝も必要になるだろ。
「ふああ。いいなぁ、俺も少し横になろっかな」
「……おいおい、何言ってんだ。冗談言うなよ高尾」
「へっ?」
大きく伸びをした背後から、脇腹を撫でられて反射的に身体が震える。
「ちょっ! 宮地さんっ何やってんっすか!」
「騒ぐな。緑間に気付かれるぞ」
「……っまさか、宮地さ……」
「そ! そのまさかだよ」
獲物を前にした肉食獣のような目をして近づいてくる宮地さん。
彼の手がゆっくりと頬に伸び、指先が頬を掠める。慌てて大きく後ずさるが壁際まで追い詰められて逃げ場を失ってしまった。
「ダメだって宮地さん! ここには真ちゃんいるし! どっか他の場所探して……」
「……そんなに、待てないんだよ!」
そういい終わるが早いか、宮地さんはいきなり腕を伸ばしてきた。顔の真横の壁に、勢いよく手を突く。
「今すぐ、お前が欲しい。つか、ヤらせろ」
「っ」
ギラギラと欲望を湛えた瞳に見据えられ反射的に身体が竦む。
顎を掴まれたと思ったら強引に唇を奪われた。噛み付くような激しいキスに呼吸がままならない。
「ん、ん! ……ふ……ぅっ」
息苦しくなって顔を背けようとしても許して貰えず、逃げるように巻いた舌が、ぬるりと宮地さんの舌と絡んだ。口の端から溢れた唾液が顎から首筋に伝って冷たい。じわっと染みるような感触に怪しい震えが背筋を駆けた。途端かくりと膝が笑って、立っていられなくなってしまう。