No title
「は〜、生き返る〜」
大浴場で入浴を済ませ、腰にタオルを巻いた状態で扇風機に当たる。頬を撫でるそよ風に俺はうっとりと目を細めた。
暑い夏の合宿ともあって、体育館は蒸し風呂状態。汗だくで練習して、風呂に入ってさっぱりしたあとそよそよと流れる涼風に浸るのが、俺の密かな楽しみだったりする。
「マジ、幸せかも」
「……何やってんだ? んな格好で」
「んぁ?」
後ろから声を掛けられて振り向くと、そこには風呂から上がったばかりの宮地さんの姿。
「お疲れっす。いやね、風呂上りの扇風機って最高じゃないっすか?」
「……」
「なんか、すっげー気持ちよくって俺、大好きなんすよ」
「へぇ……。そりゃ確かに風は気持ちいいよな。でも、俺はどうせ気持ちよくなるなら、
別の方法でなりたいけどな」
「へっ!?」
いきなり後ろから抱きしめられて、ひゃっと身体が強ばった。
「ちょっ、宮地さんっ!」
慌てて止めようとしたけれど宮地さんの動きの方が早かった。
俺の肩先へ顎を沿わせる形で屈んでいた宮地さんはふっと意地悪な笑みを浮かべながらするりと唇を寄せてくる。
片方の手は胸に触れ、もう片方の手は腰をがっしりとホールド。ツツと指でなぞられて、ゾクゾクするような甘い痺れが全身を駆ける。
「……ンッ」
耳に生暖かい息を吹き込みながら、胸元を辿っていた指先に乳首を摘まれて鼻から抜けるような変な声が洩れた。
「相変わらず敏感だな」
耳たぶに唇が触れ、低い声でねっとりと囁かれ身体がぶるっと震える。
「み、宮地さんがいきなり、しゃべるから……っ」
意識してはダメだと思うけど、色気を含んだ指先や仕草にドキドキさせられてしまう。