No title
「どうした、もう降参なのか?」
「へっ、まさか」
額が合わさり眼鏡越しに淡いグリーン色した瞳があって緊張で息が詰まる。言いだしっぺが先に降りるとか有り得なくて強がりを言ってみたけれど絡まる視線だけで溶けてしまいそうだ。
あと数センチ。唇が震えて、俺はもう動けない。
緊張で膝に置いた手をギュッと握り締めた。
その直後――。
一気に間を詰めた真ちゃんの唇が俺のソレと重なる。
「んっ、ちょぉっ……待……っ!」
そのまま舌が口のなかに滑り込んできて、俺は焦って逃れようとした。
だけど、顎を引くより早く真ちゃんの左手が伸びてきて顎をしっかりと固定されて身動きがとれなくなってしまう。
「ん……っ、ん、んんっふ……」
歯列を割られ舌が絡め取られると、身体の芯が震えて何とも言えない熱いものが込み上げて来る。
「ん……っ……」
蠢く舌から吸い取られていくかのように、全身から力が抜けていく。
深く差し入れられた舌がぐるりと口の中を舐める。その感触の気持ちよさに無意識のうちにその舌を追いかけてしまう。
真ちゃんの腕にしがみつきキスの気持ちよさに浸っていると、そっと唇が離れた。
「……甘いな」
「……っ」
笑いながら囁かれ、ぶわっと体温が上がった。
互いの唾液で濡れた唇を舐める仕草が卑猥で目が離せなくなった。
「さて、勝負はオレの勝ちのようだが――覚悟は出来ているな?」
「へっ?」
言うが早いか両脇を抱え上げられてベッドに押し倒された。
「ちょ! ま、待てって、真ちゃんっ! おまっ、何ヤる気になってんの!?」
「五月蝿い黙れ。オレを誘った覚悟は出来ているよな?」
ビッと布が裂けるような音と共にテーピングがするすると外されていく。
「いや、いやいやいやっ! 誘ってねぇし!」
「問答無用だ」
しれっと言いながら、体重を掛けられて間近に真ちゃんの顔が迫る。
ほんっと、コイツのスイッチいつ入るのかわかんねぇっ!
でもま、いっか。
どうせ真ちゃんには敵わねぇし。
俺は小さく息を吐くと、そっと真ちゃんの背に腕を回した。