No title

「なぁ、真ちゃん。ポッキーゲームしねぇ?」

天井の木の目を数えながら、何気なくそう訊ねたら真ちゃんは読んでいた本から目を離し、怪訝そうに眉を寄せた。

「嫌なのだよ」

「なんで? いいじゃねぇか」

「フン。オレはそんな低俗な遊びはしない」

眼鏡を押上げ、馬鹿にしたように鼻を鳴らす。

ケッ。低俗ってなんだよ、低俗って!

「別に低俗でもなんでもいいからやろうぜ? 俺さっきから暇なんだよ」

今日は日曜日。前々から一緒に遊ぶ約束をしていたけれど、外は生憎の雨。

この季節に雨の中外に出るのも面倒くさいって話になって、真ちゃんの部屋に転がり込んだのはいいけれど、真ちゃんが買ったばかりの本が読みたいとか言い出して、さっきからずぅっと本とにらめっこ中だ。

その間俺はそれをぼーっと眺めてるだけ。正直退屈。

恋人が遊びに来てんのに退屈させるとか、どうなんだよ!?

「なぁ、真ちゃん暇〜、俺暇過ぎて死んじゃう」

「勝手に死ね。今、いいところなのだよ。邪魔をするな」

「ひっでーの。可愛い恋人がこんだけオネダリしてんのにダメなのかよ」

ベッドの淵に凭れ、家から持参したポッキーの箱を弄ぶ。マジで退屈。

「あ! わかった。真ちゃん自分が勝つ自信ねぇんだろ?」

「バカを言うな。オレはどんな競技でも人事を尽くす。だから、負けるはずがないのだよ」

「どうだか? 勝負ってのはやってみなきゃわっかんねぇよ?」

そう言ったら、真ちゃんは読みかけの本にしおりを挟み短く息を吐いてゆっくりと俺の隣に腰を降ろした


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