No title
「高尾……」
「俺、真ちゃんがすげー怒ってびっくりしたけど正直嬉しかった。真ちゃんはすぐ態度に出るけど、なに考えてんのか教えてくれないから色々不安だったんだよ」
「……」
「だからさ、今日みんなの前で言ってくれて本当に嬉しかった。いいじゃん、クラス公認! 教室でイチャイチャしてたって誰も文句言われねぇよ?」
普段からイチャイチャしていた自覚はあるから、多分今までとなにも変わることなんてないと思うけれど。
陰でこそこそ噂されるよりは、堂々と一緒にいられる方がずっと都合がいい。
緑間の前に回り込んで、両手で彼の頬を包み込んだ。逸らされないようにしっかりと目を見つめてはっきりと告げる。
「いつまでも凹んでるなんてらしくねぇ事すんなって。俺、傲慢不遜でスッゲー偉そうにしてる真ちゃんが好きなわけ。わかる?」
「――そう、だな。終わってしまった事をいちいち悔やんでも仕方がないか」
「そうそう。いい方に考えようぜ♪」
「お前は楽天的に考えすぎなのだよ。高尾」
フンと鼻を鳴らし、緑間の手が高尾の頬に触れた。ほんの一瞬戸惑うように視線を彷徨わせ、コホンと小さく咳払いを一つすると真っ直ぐに高尾を見据えた。
「……すまなかった」
そして、ありがとう。と蚊の鳴くようなとても小さな声だったけれども高尾の耳にははっきりとそう聞こえた。
「へっ、真ちゃんが素直だとなんかムズムズするな」
「なにっ!?」
「嘘に決まってんだろ」
にひひっと笑い、背中に腕を回す。
視線が絡み、引き合うように唇を寄せ合った。
「――――」
「さ、教室に戻ろうぜ。昼飯食いっぱぐれちまう」
「……あぁ」
すっと、差し出された手に緑間は一瞬戸惑いを感じた。けれども、まぁ今更かと思い直しその手をギュッと握りしめた。