No title
部活が終わり、人気の少なくなった体育館にボールを放る音が響く。大きく綺麗な弧を描くそれは、天井に着きそうな程高くそして、正確にゴールへと吸い込まれてゆく。
緑間は余程の事が無い限りシュートを外すことはない。
やっぱり神掛かっているよなぁ。と、緑間の手から放たれたボールを目で追いながら高尾は感嘆の溜息を吐いた。
「なぁ、真ちゃん。シュート練習する時っていつも何考えてるんだ?」
「藪から棒になんなのだよ」
唐突な質問に緑間は構えていた手を止め、怪訝そうに眉を寄せる。
「だってさ〜、毎日毎日黙々とシュートしてんじゃん。その間何考えてんのかと思ってさ」
実はずっと前から気になっていた。飽きもせずに毎日同じことの繰り返し。
自分なら何か考えながらでないと続かない。
「真ちゃんってさ、あまりベラベラと自分の事喋る方じゃねぇだろ? 気になるじゃん」
床に転がっているボールを拾い上げ数回ドリブルをしてから緑間にパスを出す。
それを受け取った緑間は「そうだな……」と、呟いて狙いを定めると他人には絶対に真似の出来そうにない距離からボールを放った。
「例えば……」
ちらり、と眼鏡を押し上げ高尾へと視線を移す。
「例えば?」
「高尾は随分エロい恰好をしている。汗で張り付いたシャツから乳首が透けて見えているのだよ。無意識なのか誘っているのかは知らんが、この場で押し倒してしまいたい」
「!?」
流暢な言葉でさらりととんでもない事を言われ、高尾は我が耳を疑った。