No title
試合は結局俺と青峰だけで危なげなく快勝!
すべてのチームに文句なしで勝利したっていうのはやっぱ気分がいい。
スポーツドリンクに口を付けながら、ベンチに座りふぅっと息を吐く。
「あははっ! 真ちゃんのあの苦虫噛み潰したような顔! マジうける!」
「あいつもアレで案外負けず嫌いなとこあるからな」
「つか、高尾が緑間にパス出さなきゃもっと点取れてた」
「う、ゴメンて火神〜。しゃーねーっしょ。部活終わったあと、毎日何十本も真ちゃんにパス出してシュート練習付き合ってんだし」
毎日練習付き合うとか、すげーな。
高尾曰く、それなりに努力しないと天才の相棒なんて務まらないのだそう。
まぁ、そんだけやってりゃ条件反射にもなるか。
「勝ったからいいけどよ、ちょっと危なくなったのはお前の所為だからアイス奢れよ」
「は? マジで言ってんのかよ火神」
「マジマジ。大マジ。すぐそこにあるコンビニのバニラソフト、でかくて美味いって評判なんだよ」
スゲー嫌そうな面で眉を顰める高尾。
「お! アイスか。俺のも頼むわ」
さり気なく便乗してきた青峰と俺を見比べ、やがて諦めたのか小さく溜息を吐いて公園を出てすぐ近くのコンビニへ走っていった。
「――あ〜久々に楽しかった」
「パスも結構通ってたしな」
「たまにはこういうバスケもいいかもしんねぇ」
何気なく空を見上げ、ベンチに身体を預ける。秋が近いのか、吹き抜ける風が爽やかで心地いい。
「お待たせっ!」
戻ってきた高尾は何処か少し表情が優れないみたいだった。
「どうかしたのか?」
「え? なにが?」
「いや、なんか元気なさそうに見えたから」
そう言った瞬間、高尾の肩がぴくりと震えるのを俺は見逃さなかった。
でも、
「こんな暑い中コンビニにパシらせるからだろ? 俺だって疲れてんだよ」
へらっと笑いながら買ってきたばかりのソフトクリームを俺たちに差し出す。
そして、俺と青峰の間にすとんと腰を下ろした。