No title
夏休みも終盤に差し掛かった頃、誰かがストバスやろうと言い出した。
じゃぁ僕、キセキのみんなにも声掛けてみます。なんて、黒子が言い出して、あれよあれよと言う間に人数が増えた。気がつけばキセキの世代三人を含む総勢一四人が集まることに。
結局、みんなバスケ馬鹿なんだよな。取り敢えず、キリがいいってんで三人ずつに分かれて3on3をする事になって。みんなで公平にくじを引いたまでは良かった。
だけど――。
「たく、なんでお前と同じチームなんだよ!」
「そりゃこっちのセリフだ!」
よりにもよって俺が引いた青いくじにはアイツ、青峰が。
くっそ胸糞わりぃ。コイツの強さは認めてやるが、この俺様野郎はムカついてしゃーねぇ。
「まぁまぁ、お二人さん。遊びなんだからいがみ合うのは止めよーぜ」
「あぁ!?」
いきなりポンと背中を叩かれて二人同時にそちらを振り向いた。
「俺、秀徳の高尾ってんだ! 今日はよろしくな♪」
俺達の険悪な雰囲気などもろともせずに、高尾はニッと屈託のない笑顔を向けてくる。
「黒子程じゃねぇけどさ、俺も結構やれる方なんだぜ。チームワークとかいらねぇから、二人はビシビシ決めちゃってくれよ」
俺、パスの中継やるから。なんて明るく言いながら持っていたボールをほいっと青峰に投げて横す。
「なんだお前。変な奴だな。大体、その頭のカチューシャは一体なんなんだ?」
「あ、これ? これは……」
青峰の質問に、突然高尾は笑顔を収めキリッとした表情を作った。そしてエアメガネを押し上げるフリをしながら「これは今日のラッキーアイテム、青色のカチューシャなのだよ」と、アイツの真似をする。
それが地味に似すぎてて、俺と青峰はほぼ同時に吹き出した。
「俺は人事を尽くすのだよ。今日のさそり座は一位だったから今日は負けないのだよ! なぁんてな」
「ブッ! や、やめろっ、それ……クククッ似過ぎててヤバイ」
「似てるっしょ? 俺も毎日アレ聞かされててさぁ、一度やってみたかったんだよ」
頭の後ろで手を組んで呑気にへらっと笑う高尾に、すっかり毒気を抜かれてしまった俺と青峰は、顔を見合わせてまたブッと吹き出した。
「ククっ、お前変わってんな。ま、でなきゃ堅物の相棒なんてできねぇか」
「ハハッ、そうそう。結構大変なんだぜ? ま、真ちゃん面白いからいいけど♪ 」
「アイツを面白いって言い切れるお前がスゲーよ。気に入ったぜ」
笑いすぎて溜まった目尻の涙を拭いながら、青峰が屈託なく笑う。へぇ、青峰でもこんな顔するんだな。新発見だ。
「おま、すげーな。高尾」
「ん? なにが?」
「俺も青峰も、すっかり毒気抜かれちまったぜ」
高尾に対しての正直な感想を口にしたら、ヤツはさも当たり前のように言い放った。
「ま、こんくらい出来なきゃうちのエース様の相棒なんてできるわけねぇし? どうせやるなら楽しい方がいいだろ?」
人生楽しんだもん勝ちってな♪ そう言って爽やかな笑顔を見せる。本当によく笑うやつだ。正直嫌いじゃねぇ、かな。