No title
「それにしても……コレ、どうすっかな?」
ごろんと寝返りを打って、高尾が困ったように苦笑する。
ベッド下に散乱したメイド服の残骸は無残なものだ。服のあちこちに二人が放った精液が付着しておりそれが乾いてカピカピな染みを作っている。
「捨てるしかないのだよ」
ベッドの縁に凭れ高尾は残念そうに肩を竦めた。
「だよなぁ。あ〜ぁ、せっかく真ちゃんに着せようと思って買ったのに勿体ねぇ」
「オレはそんなもの着ないと言っているだろう!」
「え〜、案外似合うんじゃね? 真ちゃん美人だし」
「お前の目は節穴か!?」
全く、なにを考えているんだと呆れてしまう。
「あははっ! 冗談だって、冗談。そー怖い顔すんなよ」
ヘラヘラと笑う高尾を見て、緑間は盛大な溜息を一つ。一体自分のどこを見て女装したら可愛いなどと思えるのか理解に苦しむ。
「大体にして、お前の冗談は悪趣味なのだよ」
「でも真ちゃん、その服を俺が着るつったら嬉しいだろ? ミニスカナースとか、女子高生風セーラー服とか」
「……む?」
自分が着るのは確かに嫌だが、高尾が着るとしたら?
ミニスカのナース服を着て今度はお医者さんごっこでもするつもりだろうか?
ほんの一瞬、自分が医者で、高尾がナースの格好をしてアレやコレやと卑猥なことをしている場面が脳裏を過ぎった。
それはそれで、燃えるかもしれない!
「ぶっ! ひゃはははっ! 真ちゃん、マジで考えちゃった? やっらし〜!」
ニヤニヤと笑いながら、堪えきれなくなった高尾が指をさして笑い出した。
「なぁなぁ、どんな場面想像したんだよ?」
「知らん!」
「嘘つくなって。顔がにやけてんぞ」
ちょいちょいと、にやけ顔の高尾が頬をつつく。
「オレは嘘など吐いていないし、顔も普通だ!」
「ククッ、でもちょっといいかもって思ったっしょ? ナースとか。買っちゃう?」
「買うのは構わんが、オレを巻き込むな!」
思わずツンとそっぽを向いてしまった。その反応が面白かったのか高尾はますます顔を笑いの形に歪ませる。
人をからかってなにが楽しいのかわからない。
「全く、悪趣味なのだよ」
と、呟いて緑間は盛大な溜息を吐いた。
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