No title
目が覚めると、周囲は闇に包まれていた。見覚えのない天井をボーッと眺めていると右半身に違和感を感じた。
身じろぎしようとして、身体がびくとも動かないことに気がつきそっと息を吐く。
(全く……オレは抱き枕ではないのだよ)
寝息が首筋に当たる。暖かい体温を感じて、緑間は苦笑しながら高尾を起こさないようにそっと腕から抜け出そうとした。
だが。
「ん?」
腕を解こうとしたけれど、抱きしめるように回った腕は全く緩まない。眠っているはずなのにこの力はなんだ?
「……高尾。起きているな」
絶対にそうだという確信を持って、緑間は彼の腕を揺さぶった。
すると高尾はぱっちりと目を開けて表情を緩める。
「なぁんだ、バレちゃぁしゃーねーな」
もう少しこうしていたかったのに。と、残念そうに呟く高尾に思わず溜息が洩れた。
「それにしてもさ、真ちゃん今日ヤりすぎじゃね? 腰がチョー痛てぇ。やっぱメイドさんにコーフンしちゃった?」
「馬鹿を言うな高尾。お前が強請るから付き合ってやっただけだ」
クスクスと笑いながら顔を覗き込まれ、緑間はフンと顔を背ける。
確かに、少しヤり過ぎた感は否めない。昼過ぎにここに来て、それから今までベッドの上から一度も降りていない。
何度身体を合わせても飽き足らず、狂ったように互いの身体を求め合ってしまった。
普段は絶対に見ることの出来ない姿に興奮し、我を忘れるほど行為に没頭するなど、普段の自分からは絶対にありえない事。
高尾が言うように、いつもと違うシチュエーションだったからだろうか?
本当に自分らしからぬことをしてしまったと、今更ながらに後悔している。