No title

その日、緑間真太郎は恋人である高尾和成の部屋を訪れていた。

彼の家族は今、親戚の結婚式に呼ばれ出かけてしまっている。

高尾も行く予定だったのだけれど部活を優先させた結果、留守番する事になったらしい。

ベッドに腰掛け、あらかじめ持参した本を読んでいると扉が静かに開いて高尾が躊躇いがちに顔を出した。

「遅いぞ高尾。いつまで待たせる気なのだよ」

「悪い、悪い。コレ、着方がよくわかんなくってさ」

頭を掻きながら部屋に入って来た高尾は紺色のメイド服に身を包んでいる。

「たく、真ちゃん悪趣味だよな。俺にこんな服着せてなにが楽しいんだか」

「それはお前が買ってきたものだろう。オレのせいにするな!」

悪趣味はそっちの方なのだよ。と、抗議すれば高尾はへへっと表情を崩した。

「でもなぁ、真ちゃんに着せてやろうと思ったのに、まさか自分で着る羽目になるなんて……マジ、ついてねぇ」

あ〜ぁ、残念。などと呟きながら高尾は緑間の隣に腰掛ける。

そもそも、自分にメイド服を着せたいと思う神経がよくわからん。と、思わず深い溜息が洩れた。

「ゲームなら絶対に勝てると思ったんだけどな。つーか、真ちゃんってどうなってんだよ? 何でもかんでも強すぎじゃね?」

「オレは人事を尽くしているからな。罰ゲーム付きのくだらんゲーム如きで負けるわけがないのだよ」

「テレビゲームに人事もクソもあるかよ」

たまたま高尾が指定したゲームが、帝光中時代に仲間たちから無理やり対戦させられていたゲームだった事は、敢えて伏せておく。

普段緑間はゲームをしない。だから、これでなら勝てる! とでも思っていたのだろう。

自信満々だった高尾の負けて悔しがる姿は実に見物だった。

それにしても……高尾の黒い髪に紺色のメイド服がよく似合う。

本当にこんなメイドさんがいそうなくらい正統派のメイド姿だ。

時々身に付けている赤いカチューシャの代わりに乗っている白いヘアキャップと、フリルの付いた白いエプロンが萌えに色を添えている。

(……意外と似合うな)

無防備に投げ出された足に目がいって、ハイソックスとスカートから覗く白い素肌にドキリとした。

女の子のような柔らかさは微塵も感じないが、ほどよく引き締まった太ももは触り心地が良さそうだ。ふと見ればちょうど絶対領域ギリギリの場所に、先日自分が付けた所有の徴を発見し緑間は眼鏡のブリッジを押上げると慌てて視線を逸した。


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