「一応確認してるんだ。無理やりするのは趣味じゃないからね」

上に覆いかぶさりながら、唇が触れそうな距離で囁かれ、

「嘘吐け。嫌がる方が燃えるクセに」

と、悪態を吐く。そしてこう続けた。

「俺だって寿としてぇと思うけど、今は無理だろ。親父も警戒してるだろうから早く行かないと怪しまれちまうだろうし」

「うっ、それはそうだけど……」

クゥンと、お預けを喰らわされた犬のように悲しそうな瞳で見つめる寿也に吾郎はそっと溜息を一つ。

自分だって出来る事ならこのまま本能に任せて一つになりたいと思う。けれど、万が一誰かに見付かってしまった時の事を考えると、どうしても躊躇ってしまう。

「んな顔すんなって。そのままじゃお前も辛いだろうからその…………口でシてやるよ」

「えっ!? 今、なんて?」

「……っ、だから俺がシてやるって言ってんだよ!」

言いながら顔が赤くなってしまった。半ば乱暴に寿也を立たせ、ズボンのチャックを下ろして既に臨戦態勢の寿也のモノを取り出す。

「ご、ごごごっ、ごろう、君!?」

「んだよ、変な声出すなって。静かにしてろ」

目の前の物体を見て思わず喉が鳴った。吾郎はソコに顔を寄せ、亀頭を口に含んだ。そのまま舌でぐるりとなぞると口の中に寿也の味が広がる。

「……ふ……っ、ん……」

静かな部屋にぐちゅぐちゅと言う卑猥な音が響き渡る。備え付けのベンチに跨って茎の根元を支え唇を窄めて深く呑みこむ。届かない根元は手で扱くと口の中でびくびくと震えた。

吾郎の口で愛撫をされている事に興奮しているのだろう。ほろ苦い液体が後から後から溢れてきて唾液と混ざり合い口の端から滴って床に落ちる。

「はぁ……」

ぎりぎりまで追い上げられた寿也がひどく色っぽい溜息をつき吾郎の髪に触れた。

「吾郎君、もう……」

「いいから……出せよ。もう、イキそうなんだろう?」

咥えたまま上目遣いで顔を覗き込む。寿也は熱い吐息を洩らしながら切なげに眉を寄せ官能に濡れた瞳で吾郎を見下ろしている。

いつも先に余裕が無くなってしまうのは自分の方。だから、切羽詰まった寿也の姿は新鮮で言いようのない興奮を覚えた。

「全部飲んでやるから」

「――っ」

寿也が息を呑むのがわかった。構わず頭を上下させさらに高みへと追い詰めて行く。

「く……っ」

髪に触れていた手に力がこもり、喉の奥に陰茎を押し付けられて苦しさで嘔吐感が込み上げて来る。それとほぼ同時に寿也が口腔内で弾けた。

熱い飛沫が勢いよく口の中に流れ込み、噎せそうになりながらも全て受け止め、ゴクリと音を立てて嚥下した。

「結構出したな」

濡れた口元を手で拭って見上げると、寿也は乱れた呼吸を整えつつ少し困った表情で吾郎を見つめ、

「吾郎君の顔がエロすぎるからだよ」

と、言いながら吾郎の頬や頭を撫でる。

「でも、凄く快かった」

「たく、恥ずかしい事言ってないで早くソレ仕舞えよ。怪しまれるだろ?」

うっとりと恍惚に浸る寿也に呆れながら、乱れた着衣を直し立ち上がる。

急いで更衣室から出ようとドアノブに手を掛けた時、着衣を整えた寿也が腕を絡ませて来た。

「ねぇ、吾郎君……」

「なんだよ?」

「今度は、顔射させてよ」

「はっ!?」

笑いながらとんでもない事を言いだした寿也。冗談とも本気とも取れない笑顔に顔が引きつる。

「調子乗ってんじゃねぇよ。ぜってー嫌だからな! んな事しやがったら二度とヤらねぇぞっ!」

「あはは! 冗談に決まってるじゃないか」

「お前が言うと冗談に聞こえねぇんだよ」

クスクスと楽しそうに笑う寿也に歩幅を合わせながら、吾郎は盛大に溜息を吐いた。


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