清水が使いそうなルートを辿りキーンの車が滑る様に夕方のハイウェイを走っていく。

「おっかしいな。アイツマジで道間違えたんじゃねぇのか?」

大きい通りを辿って行ったのなら逢える確率は高いが、小さな道を行ったのならすれ違ってしまったと言う事も考えられる。

レンタカーを借りたのなら一直線のこの道を使うだろうと予測したのだがそれらしき車は全然見当たらない。

(つーか俺、車種とか色とかマジで聞くの忘れてたぜ)

外はだんだんと暗くなって来るしこんなんで見付かるのかと少々不安になって来る。

「……目的の彼女を見付ける前に、レンタル料をいただこうか」

突如潰れたモーテルの前に車を停めるキーンに、何か吾郎は嫌な予感を感じた。

「ち、ちょっと待てキーン! ほらっ、こんな所じゃ飯も奢れねぇだろ? ちゃんとした店の方が……うわっ」

ガタンとシートが倒されキーンが覆い被さって来る。

「お前、本気でレンタル料が飯を奢る事だと思っていたのか?」

「……っ」

浅黒い指先が頬に触れ、至近距離で見つめられ息が詰まる。

「お、お前の言うレンタル料ってこういう意味だったのかよ」

自然に赤くなる頬を悟られないよう視線を逸らした吾郎の様子にキーンはふっと笑みを零した。

「他に何があると言うんだ?」

「たくっ、いつもムスッとしててこう言う事に興味ないって顔してるクセに頭の中そればっかじゃねぇか」

「ま、俺も男だからな。好きな奴とどうやって一つになるか。考えるのは当然の事だろう」

しれっとそう言いながらシャツの隙間に手を這わせられ反射的に身体がびくりと震えた。

「ん、で、でも俺……もう寿也以外とはこういう事しねぇって約束したから」

「トシヤ? あぁ、日本に置いて来た恋人の事か。安心しろ黙っていればバレないから」

「それがなんでかばれちまうんだよ! アイツの勘の鋭さは野生の獣並みだからな」

なんとか抵抗しようと試みるが狭い車内では上手く身動きが取れない。

両手を万歳の格好に押さえ付けられ、たくし上げた服の隙間から胸の飾りに吸いつかれてゾクゾクするような甘い痺れが下半身に沸き起こる。

どうやらキーンはこの行為を途中で止めるつもりは無いらしい。

「……っ、あっ、んぅ」

「嫌だと言っている割に腰が浮いているぞ」

「うっせ! いちいち言うんじゃねぇよ」

いやらしい手付きで撫でられ腰が揺れる。

「大体、俺と身体を合わせるのが嫌ならお前との約束は無効だ。ここで俺は帰らせてもらう」

「んな!? なんだよ、それ」

「当然のことだ。折角の自由な時間をお前の幼馴染の為に費やしてやっているんだからそれ相応の見返りが無いと不公平だろう」

「ありえねぇ。俺だって明日大事な登板が控えてるんだぜ? それなのに俺をこんなとこに置き去りにするってか」

キーンの目は本気だ。こんな廃墟のような所に置いて行かれた挙句、清水も見つからなかったら明日の登板がどうとか言っている場合ではなくなってしまう。

(しかもコイツなら本当に置き去りにしそうだし)

「俺はどちらでも構わんが?」

「チッ、人の足元見やがって。OKわかったよ。お前とヤればいいんだろ? ヤれば」

盛大な溜息を吐き、不貞腐れたようにシートに凭れる吾郎を眺め、キーンは「それでいい」と満足そうに笑いながら吾郎の肩に唇を這わせた。


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