「バカ、止めろって……」 「どうして? 嫌じゃないくせに」 「……っ」 「好きだろ、こう言う事されるの」 下半身を扱きながら耳の後に息を吹きかけられてぞくりと背筋が粟立った。耳たぶをねっとりと舐められ愛撫されると嫌でも息が上がってしまう。 「ぅ、ん、んっ」 「君は知らないだろうけど、誰かに見られたり聞かれたりしてる時の吾郎君は、いつも以上に感度がいいんだよ。そういうスリルが好きなんだろう?」 「んなわけねぇだろっ! ぁ……っ」 意識的にしているわけではないから、そんな事を言われても正直言って困る。 スリルを味わいたいと思ったことは一度もないが、誰かに気付かれてしまうかもしれないという状況に興奮するのは事実かもしれない。 それを認めてしまうのは癪だが。 「清水さん、君の本性知ったらどう思うだろうね? わざわざアメリカまで来たのに……」 「ちょっ! おまっ、清水の前では絶対に変なことすんなよ!」 顔を引き攣らせ、焦る吾郎。 「さぁ? 約束は出来ないな」 「い、いや、マジで勘弁……っ」 「冗談だよ。いくら僕でも女の子のピュアな夢を壊すほど悪魔じゃないから」 くすくすと笑う寿也の目は決して笑っていない。 冗談とも本気ともつかない寿也の表情に背筋が凍る思いがする。 今までの経験からして鬼でも悪魔でも、似たような物じゃないかと思ったが、口に出すのは止めておいた。 「寿、俺は清水の事はなんとも思ってねぇから。だから、変な嫉妬とか止めろよ」 身体を捩じって反転させ、向き合うような形になってから寿也の首に腕を回し自分から軽くキスをした。 「俺、マジで女の扱い方とかわからねぇし、知らないうちに傷つけたりするかもしれないけど……故意に気持ちを傷つけるような真似だけはしたくないんだ。俺が好きなのは寿だから、清水の気持ちには応えてやれないけど、あいつとは、これからも友達でいたいと思ってるし……」 「……吾郎君」 蛇の生殺しのような状況が一番彼女を傷つけているんじゃないのか? と、寿也は思ったが、それは敢えて言わないことにした。 寿也からしてみたら、清水もキーン達と同じ邪魔な存在でしかない。 はっきりと自分たちの関係を目の当たりにさせて、再起不能にさせてやればいいのにと、黒い感情が沸き起こってくる。 だが、吾郎がそれを望んでいないので彼女の事は仕方なく目を瞑る事にした。 (10/11) |