愛するのは一つだけでいい


「あっ…ふぁっ…すくあーろ…」

昼間なのにカーテンを閉め切り、ベッドがぎしぎしと音を鳴らす。
親は出かけていて、幼なじみであるスクアーロが俺の部屋にやってきていた。
幼なじみと言ってもそれはに一年ぐらい前までの俺達の関係の名前だ。
今は、恋人。
薄暗い部屋で交わり、熱っぽい声が俺の耳元に聞こえる。
俺の声も響いていて、恥ずかしいのにスクアーロは俺の手をベッドに押し付けているから塞ぐことはできない。

「んんっ…ふぁっ、だめ、それっ…ひぁあっ」
「ここだろ?お前の好きな場所は…」
「やぁっあぁっ…んんっんっ…はぁっ」

ごりごりと擦り上げられるそこは俺の感じて仕方ない場所。
ますます声が大きくなり恥ずかしいと首を振るのに、スクアーロの腰の動きは激しくなるばかりで全く止める気配すらない。
長い髪が俺の頬に流れる。
見あげればスクアーロも汗まみれになっていて、俺で感じている姿に中を締めつけてしまう。

「っ…はっ…つなよし…」
「きす、して…ねぇ、すくあーろ…」

さっきから散々になぶられ続けたそこは限界が近く、もう達するまですぐだろう。
最高の気持ちを感じて達したいと強請る声を出せば、噛みつくようなキスをされて中も激しく擦られる。
俺の声は全部スクアーロの口の中へと吐き出されて、白濁を放った。
それと同時に中を締めつけ、スクアーロは俺の中へと白濁を注ぎ込んだ。
全部を送り込んで、ゆっくりと抜けていく感覚を感じ、かくりと弛緩する。

「はぁ…はっ…はぁ…あつい…」
「閉め切るときつい、な…」

梅雨の時期と言っても晴れた日には初夏の暑さが襲う昨今。
スクアーロはカーテンを引いたまま窓を開けた。すると、涼しい風が流れ込んできてさわやかな空気になる。
俺は指一本動かすのも億劫でベッドに身体を投げ出したままでいると置いておいたタオルが身体にかけられる。

「まだ暑いよ」
「ったく、またヤられたいのかぁ?目の毒だ」
「動けなくなるまでヤるのが悪いんじゃん」
「……チッ」

理不尽な理由に言い返せば窓枠に肘をついて風に当たっている。
髪の隙間から覗く耳が赤くなっているのを見れば、俺はふっと笑みを深めた。
スクアーロの部屋にいけばクーラーがあるのだが、スクアーロの家は家族がいるらしくて…要はセックスできないから俺の部屋にしたというわけだ。
別にただれているわけじゃない。
好きなら行う行為だと思うし、男同士でこれがどんなに非生産的なことなのかも理解しているつもりだ。
けれど、こうしている間がとても幸せなのだ。
もちろん普通にしていても十分味わうことのできる充足感だが、気持ちが重なる瞬間は何にも代えがたいものがある。
長い髪をなびかせているスクアーロをみれば、俺はますます愛しさが溢れるのだ。
かっこいい…。

「なににやにやしてんだぁ、気持ち悪ぃぞぉ」
「ニヤニヤって、そんな変な顔してないよ」

大きい掌が俺の頭をくしゃくしゃと撫でる。
くすぐったくて、俺はくしゃりと笑った。
すると、唐突に着信音が鳴り響いた。
俺は顔をあげて、音からメールだと判断するとそのままにしようとしたがスクアーロは見ていいぞと促してくれる。
別に隠すような相手はいないのでケータイをとって開くと、送り主はリボーンからだった。
リボーンは俺と同じクラスで、最近仲良くしてくれる人だった。

「リボーンだ…」
「あいつか、メアド教えたのかぁ?」
「うん、教えてって言われたら普通教えるだろ。最近仲良くしてくれるし、悪い人じゃないよ」

新学期が始まって一年の時一緒のクラスだったスクアーロとは離れてしまって、一人で居たら話しかけてくれた。
昼休みなどはスクアーロと一緒にいることが多くて、それ以外はリボーンと一緒にいることが多くなった。
スクアーロとの関係は隠しているから、クラスの奴等からすれば幼なじみとしか映らないだろう。

「ほう、まぁ…変なことには巻き込まれんなよ」
「ん?うん、スクアーロがいてくれるから大丈夫だよ」

俺はなんでか上級生から目をつけられることが多くて、多分スクアーロがあの目つきで歩いているから近くにいる俺が狙われるのだと思う…。
それで、結構いろんな目に遭いかけているがいつも助けてくれるのはスクアーロだ。
いつも俺のことを気にかけてくれるスクアーロには感謝しているけれど、時々自分の時間があってもいいんじゃないかとも思うことがあって、新しいクラスでもうまくやっているのか少し心配だ。
改めてメールの内容を見れば、今度遊ばないかと言う軽い遊びの誘いだった。
なんだかリボーンとの気も合うのだが、正直休日はスクアーロと一緒にいたい気分だ。
ちらりとスクアーロを見ればなんだぁ?とこちらに気づいてくれる。

「一緒に遊ばないかって…断る理由とかないかな」
「なんでだ、行けばいいだろぉ」
「うーんだって、俺人づきあいとか苦手だし…スクアーロとしか遊んだことないからわかんないよ」

きょとんとした眼で見られて、そんなに意外だったのかなと首を傾げた。
クラスでは喋る仲間がいたりするが、休日まで一緒に遊ぼうという友達はいない。
別に、俺はスクアーロがいればいいと思っているだけなのだが…これはいけない思考なんだろうなぁ。

「…俺と遊ぶから無理だって、いっとけ」
「うん」

なんだかんだいって俺はスクアーロに甘やかされてるなぁと感じるが、スクアーロがそれでいいと思うならそれでいいと思うことにしている。
俺は言われたとおりに文面を打つとそのまま送信した。
そのあとの返事は来ることはなく、ただ用件だけのメールだったのかとそれだけだった。
そうして、俺達は汗を流すためにシャワーを浴びてスクアーロは帰って行った。
いつもと変わらない、休日にすぎなかった。





週が明けての登校と言うもの以上にだるいことはない。
しかも、月曜日の授業には面倒な数学があるのだ。
数学の先生が一番眠りやすく、それと同じぐらい眠った生徒には容赦ない制裁が待っているのだ。

「ふぁ…眠い…」
「夜更かしでもしたのかぁ?」
「ううん、月曜日は反射的に眠いんだ…」
「なんだそりゃ」

億劫だと溢せば笑ったスクアーロが頭をかきまわす。
身長的に圧倒的な差があるため仕方ないことだから、もう慣れたけれど中学の時が一番この行動が嫌いだった。
なんというか、明らかに俺を子供扱いしてるからなぁ…。
背がどんどん引き離されていって少し寂しさを覚えた時期でもあったのだが、今はそんな大きな手もどれも魅力的にしか思えない。

「よぉ、綱吉」
「リボーン、おはよう」

校門まで行けば偶然リボーンの姿が見える。
俺は挨拶をしてスクアーロに視線を向けるが、背中をぽんっと押されたので走って向かった。

「昨日は突然メールして悪かったな」
「ああ、いいよ別に気にしてないから」
「あいつが、スクアーロか?」
「ん?そうだけど…なに?」
「いや、なんでもねぇ」

一瞬スクアーロに視線を向けたかと思ったけれど、それは気のせいだったらしい。
首を傾げるが、リボーンはそれっきり口を開くことなく教室へと向かっていく。
何かバレたのか、と思うけれど聞ける内容じゃないので何もないうちはそのままにしていようと思う。
けれど、今日のリボーンは明らかに少し様子が変なように思える。
それが何かもわかってはいないのだが、少し心配になりつつも教室に着けばいつものようにホームルームが始まって、いつものように変わらない授業が始められた。

「綱吉、ちょっといいか?」
「え…俺これから、隣のクラスに行きたいんだけど…」
「ちょっとだけだ」

昼休み、リボーンに声をかけられてそれが真剣な表情をしていたから俺は逃げようと試みた。
これは、何かあるかもしれない。
それでも、リボーンは譲ろうとしなくてしかたなくリボーンの後をついて行けば非常階段のところまできてしまった。
非常階段とあって、誰もいない。昼間と言えど二人だけの空間に逃げ場所を探してしまうが、リボーンが道を塞ぐように立ってしまっていてどうにも無理そうだ。
俺は真っすぐにリボーンを見つめた。
悪い男ではない、それはよくわかっているから…なにかあっても大丈夫。

「あのな、気付いているかもしれないが…俺はお前が好きだ」
「…そうか、うん…って、好き?」

てっきりスクアーロといて何か気にくわないと当てつけがましく言われるかと思った俺は思わず答えてしまってから首を傾げた。

「その、ライクじゃなくてラブの方だ」
「え…ええぇえっ!?そんな、えっ!?」
「そんなに驚くことないだろ、お前が誰とも付き合ってねぇなら…付き合ってくれないか?」
「そ、そんな…え…」

突然の告白に驚いたのは俺だ、付き合ってと言われるなんて夢にも思ってなかったことだし、それに俺にはスクアーロがいる。
一歩一歩と近づいてくるリボーンに俺は逃げようと思うが手すりに追い詰められていたことに気づいた。

「ダメなのか?まずは試しでいい」
「むりだよ、だって俺付き合ってる人…いる」
「誰だ?」
「スクアーロ」

名前を出したら舌打ちが聞こえた。
顔をあげれば、リボーンは俺を見つめていて真剣味が伝わってくる。
男に告白するぐらいだそんな生半可なことではないってわかる。

「ごめん、俺…リボーンのこと好きだけど…そういう風には見れない」
「スクアーロがいるからか?」
「ん?まぁ、そう…かも?」

リボーンの問いかけに頷いて、顔をあげたら掠めるように口づけられた。
一瞬のそれに気づくのが遅れて、驚きに目を見開けば俺の後ろの手すりに手をかけて俺はリボーンに囲われた。
逃げ場が完全に塞がれて、次は何をするつもりなのかと見あげていれば後ろのドアが開いた。

「おい、何してんだぁ?そいつは俺のもんだ、手ぇだすんじゃねぇ」
「あ…」
「ホントにすぐ来るんだな」

スクアーロが現れて俺は安堵する、それと同時にこれから何が起こるのかと息を飲んだ。
二人は睨み合って、俺は逃げられないまま。

「俺は諦めるつもりはない、こいつの魅力を知ったからな」
「やるつもりなんて更々ねぇぞぉ、手を離してもらおうか」
「スクアーロッ」

手を離されて、俺はリボーンの傍からスクアーロの傍にいった。
けれど、リボーンだって大切な友達でいたい人間だった。
そんな感情を持たれているのにとスクアーロは思うかもしれない。
でも、今のクラスになって救われたことは何度かあるのだ。

「俺、リボーンと友達でいたいよ」
「綱吉っ!?」
「俺は、なにするかわかんねぇぞ?」
「うん、でも俺はどんなことされてもスクアーロが好きだから。こんな俺だけど、友達でいてくれる?」

俺がリボーンに手を出せば、スクアーロは呆れてしまって、リボーンは一瞬あっけにとられつつも笑った。

「ったく、こいつには敵わねぇな。同情するぞ」
「お前に同情なんかされたくねぇぞぉ」

リボーンは仕方ないなと手を握ってくれて、俺の腰はスクアーロに抱かれた。
俺のわがままだけど、でもスクアーロが好きなのは変わらないし、リボーンはいい人だし。
少しだけ甘えてもいいかな。





END

えみんこ様へ
スクツナ幼なじみでリボがツナに横恋慕。でした。
結局リボーンを突き放すことはできず、こんな落ちになりました。
スクアーロ書けてとても楽しかったですっ。
なんだか、とても新鮮で面白かったです。
スクアーロが別人になった気もしないでもないですが、スクツナいいですよね。

素敵なリクエスト有難うございましたっ。