ことの始まり。


思ったのは一種の独占欲だったのだろうか…。
今となってはその感情の判別すら不可能に近かった。
ただ、強さを確かめて僕が強いのだと知らしめたかったのだと思う。

「愛しいと思うことすら、許されませんがね」

彼に喧嘩を売って、現れたのは約十年前のことだった。



「やぁ」
「よく来ましたね」

もうそこにはなくなってしまったけれどその当時根城にしていた黒曜ランドで初めて出逢ったのだ。
運命的とは程遠かったが、それが彼との出会い。

「随分探したよ、君が悪戯の首謀者?」
「クフフそんなところですかね。そして、君の街の新しい秩序」
「寝惚けてるの?並盛に二つ秩序はいらない」
「まったく同感です。僕がなりますから君はいらない」

ただそのときはボンゴレのボスをのっとりたかった。だけど、一般の彼に手を出していたのは興味本位だったのだと思う。
トンファーを僕の強さも知らずに構えている彼に僕の何かを知ってほしかったのだと今ならわかる。

「君は、ここで咬み殺す」

彼は挑発してくるが僕はそのまま動かなかった。当時の僕は彼に負ける気がしなかった。
実際そのあと何度戦ったが、彼は僕に勝てはしなかった。

「座ったまま死にたいの?」
「クフフ面白いことを言いますね。立つ必要がないから座っているんですよ」

彼を挑発すればするほど僕は楽しくて仕方なかった。
彼が感情を乱すたびにいろんなところを見れると、意味もなく嬉しくなっていた。
それに、そのとき僕は取って置きの武器を用意していたのだ。

「君とはもう、口をきかない」
「どうぞお好きに。ただ、今喋っておかないと二度と口がきけなくなりますよ」

僕の態度に彼は無謀にも突っ込んできて、それでも彼の変化を僕は見逃さなかった。
身体を伝う汗、上気した頬、何もかもが興奮材料だった。

「汗が吹き出していますが、どうかなさいましたか?」
「黙れ」
「せっかく心配してあげているのに。ほら、しっかりしてくださいよ」

自分の反応に戸惑っている彼を見ればその正体を明かすべく僕はリモコンを取り出してスイッチを押してこぼれ落ちるぐらいの桜を見せる。
そして、驚きに見開かれたとたん冷たいコンクリートに跪いてしまうのを僕は見下ろしていた。

「クフフ、面白いですね。桜だけでこうも動けなくなってしまうとは」

弱弱しい彼の髪を掴んで無理やり顔を上げさせる。
それでも僕を睨みつけてくる瞳は力を失わず、僕はそれをねじ伏せたいと思った。

「生意気な態度が気に入りませんが、僕の好みの顔ですね。このままボコボコにするのは惜しい。……君には捌け口になってもらいましょうか」

彼の顔が屈辱的に歪むのがわかったが、僕は止まることが出来なった。
近くにあった縄で両手を拘束して、抵抗する身体を押さえつけていた。
彼はそれでも命乞いをすることはなかった。



僕は感情のまま服を破るように脱がせてうつ伏せにさせ腰を持ち上げた。
相手の感情なんて関係なくなにも濡らすことなくそこに指を突きたて乱暴にそこをかき回し広げた。

「っ…やめ…ろっ…」
「そういわれて僕が止めると思いますか?思ったとおり、ここの締まりは最高ですね」

グチュグチュとかき回しているうちに爪で中が切れたのか鮮血が流れ、僕の指を赤く染めていく。
その赤が僕を現実に引き戻すが見てみぬふりをした。
そして、手ひどく抱いた。
その間彼は一度も助けを請うことをしなかった。
僕はてっきりそれぐらい強いプライドを持っているのだと勘違いしていた。
本当は、そのときの彼には助けを呼べる相手なんていなかったのだ。
それを知ったのは約十年も後のことだった。




そして、自分の気持ちに気付いたのも…。

「何もかも、あの時会った時点で終わっていたんです」
「骸君は、後悔しているの?」
「いいえ?今は貴方がいてくれるじゃないですか、ねぇ白蘭?」

いろんな過去があった…けれど、僕が最後にたどり着いたのは僕と同じようにしか感情を表現できないこのしょうがない人のところだ。
それに、彼にも…今は助けを呼べる相手がいる。
僕は幸せを祈ることだけで満足です。





RND