青空と林檎 「ああ、これは美味そうだ一つくれ」 「おにーさんお目が高いね。一つおまけしてあげるよ」 「ありがとう」 店先で見つけた林檎を手にとれば、もう一つと手にのせて俺は笑みを浮かべた。 ここは平和な町だ。 これを俺が護っていると思うとまだしっくりこないのだが、こういう天気のいい日に見て回ると人々が幸せだというのがわかって俺のしていることが間違っていないのだとわかる。 今では仲間も集まり、大きな組織になってしまったが人々はそんなにその変化を気にしているものも少ないようだ。 「部屋の中は窮屈だからな」 林檎を齧りながら久しぶりの清々しい様な空を仰ぎ見てほほ笑んだ。 ここ最近は外を歩くのもままならない位の忙しさだったが、ようやくそんな日々からも解放された。 「まぁ、まだ残っているがなんとかなるだろう」 「なんともなるわけねぇだろ?」 「……そうか、それは残念だG」 後ろから肩を掴まれて逃げていた相手に見つかってしまえば、それでもわかっていたことでもあり笑みを浮かべたまま振り向くといつもの眉間に皺を寄せた姿で立っていた。 どうも、最近その眉間のしわが消えなくなっているらしいが…大丈夫なのだろうか。 「残念だ、じゃねぇよ。あんたはいつも勝手にどこかにふらふらと…」 「もう忙しくはなくなった」 「あんただけな。俺達の仕事はまだ残ってんのに、自分だけこんなところにでるんじゃねぇよ」 「お前がきてくれたじゃないか」 「…そうじゃぇねぇ…だろうが」 ふるふると怒りで俺の肩を掴む手が震えている。 少し苛めすぎたか、Gにおまけしてもらった林檎を差し出せば乱暴に受け取り齧っている。 真っ赤な瞳に似合いだなと眺めていればなんだと見返してくる。 「お前もなんだかんだいいつつ楽しんでるじゃないか」 「…楽しんでなかったら大人しく帰ってくれんのか?」 「お前だけな」 「だと思ったぜ。このまま俺が護衛としてつく、好きにしろよボス」 ボスと嫌味のように言われて少し腹がたつが、自分がそういう立場になってしまったことを思い知らされるようでなんだか寂しい。 少し前までは、なんら権限もない一般市民と同じようなものだったのにな…。 「なんつー顔してんだよ」 「…いや、なんでもない。Gがついてくれるならなんでもできるなと、思っただけだ」 「勝手はゆるさねぇぞ?」 「では、一緒にするなら問題ないだろ?」 俺は嬉々としてGの手を握って手を引く。 食べ終えた林檎の芯を近くの犬へと与え、俺達が向かうは少し路地に入ったところの歓楽街。 昔はよく使った場所だ。 最近はこんなところ必要ない十分な場所があるが、こっちの方が近場だ。 「ジョット、てめぇ」 「なんだ、昼間からは嫌か?」 「…お前は、いつもそんなことしか考えてねぇのかよっ」 嫌がっているようにも恥ずかしがっているようにも見える態度。 今回は後者が正しいなと顔を見て判断すると、そのまま一つホテルへと入っていく。 仕事が忙しかったということは、それ相応にこちらもまったくなかったということだ。 Gもだからこそ本気で嫌がることはしないのだろう。 可愛い奴だ。 つくづく、愛しいと思う。 部屋に入れば続いて入ってきたGのネクタイを引き口づける。 「んっ…ふっ……」 舌を差し込めば小さな喘ぎが漏れて感度がいいことを知らせてくる。 こいつも溜まってたのか…。 唇を離して甘噛みながら赤い瞳を覗き込む、少し濡れているように見えるのは勘違いなどではないだろう。 「シャワーにするか、それともそのままベッドか?」 「あんたは、本当に質が悪い」 「それでも、好きなんだろ?」 「ナルシストめ」 真っ赤な顔をして言うさまが本当にからかいがいがある。 唇を指先でなぞって、シュルリとネクタイを解けばこちらのネクタイも解かれる。 「で、どちらがいいんだ?」 「ベッドだっ」 「はっ…ジョット…っ…」 「どうした?嫌ではないだろ?」 言われたとおりベッドに押し倒して組み敷くなりカチャカチャとベルトをはずしてくるジョットに俺は戸惑った声をあげた。 確かに、嫌ではない…だが、俺がその行為に感じている感情もわかっているはずだ。 まぁ、わかっていてそんなことをしてくる男だ。 俺が戸惑えば、それだけあいつは楽しむ。 どうしてこんな面倒臭い奴を好きになってしまったのか、今更考えたところでどうしようもないと思うが…。 そうこう考えているうちに下着ごとズボンを抜かれてしまい、体つきの割に節くれだった指がさっきのキスで感じ始めた自身に絡んでくる。 先端が濡れてくれば見ていられずに顔をそむける。 「G、はっきり言え」 「いやじゃ…ねぇよっ…あっ…」 促されれば、少しやけっぱちで言えば指の動きが大胆になり扱き始めて濡れた音が聞こえてくる。 耳も塞ぎたくなるような想いにかられながらふっと笑った気配がしてそこに生温かいものが触れる。 そのあとの気持ちいいほどの快楽を想像してまた先走りをあふれさせた。 「あっ…ジョット、ああっ…はっ…」 綺麗な金髪の髪に指を差し入れて堪らないほどの快感を伝える。 舌が自身に絡み、先端の割れ目をいじるように刺激されて腰が勝手に揺れる。 その間にも足を立てさせられて先走りで濡れた指先が秘部へと侵入を始めた。 俺はさすがに耐えられないと足でジョットの肩を蹴ろうとするがその前に一気に指が入り込んできて力が抜ける。 「止めっ…はああっ…てめっ…」 「好きなくせに、意地を張るな」 「意地じゃ、ねぇ…」 意地というよりとてつもない羞恥心のせいだ。 それでも楽しそうな顔をしたままのジョットにはそんな反応すらも楽しんでいるのだろう。 口を離されたお陰で少し楽になったと思いながらも与えられる愛撫には感じるしかない。 こいつも、少しは理性をなくせばいいと思うのにいつも余裕綽々で実は内緒で誰か手慰みにでも抱きに行っているのかと思ってしまう。 「心配するな、俺はお前だけだ。不安なら、もう入れてやろうか?」 「……入れろよ」 多分俺を戸惑わせたかったのだろう、ジョットの言葉に俺は胸倉を掴んで言い放った。 こいつに抱かれる以外は何もしてない身体だ、痛みを伴うのもわかっている。 だが、俺を不安にさせておいてただで済むと思うなと自棄になっているところもあった。 「馬鹿だな…無理はするな」 「無理じゃない」 「まったく、どうなってもしらないぞ」 「いい…」 ジョットの焦ったような顔を見て、つい勝った気になった。 それも、そんなに長くは続かなかったが…。 指を抜かれてジョットの熱いものが代わりに宛がわれる。 あまり濡れてないため、ぐっと押されて痛みを予感した。 「っく…はぁっ…うあっ…」 「辛いか?やはり、一度抜いて…」 「んなことしたら、一生入れさせねぇ」 案の定痛みを感じて思わず背中に爪をたてれば、秘部の締めつけと背中の痛みに抜こうとするジョットを腰に足を絡ませて引きとめる。 まっすぐ見据えて言うなり、ふっと笑ったジョットはそのまま抜くのをやめて慣れるまで待つことにしたようだ。 動くことはしないまま、俺をただ抱きしめている。 「強情だな…そんなこと言われたら、抜けない」 「抜かなくていいって言ってんだろ、キスしろ」 なんだかんだいって優しい男だ。 俺が本気で嫌がることはしない。 そんな男が、もう俺だけのものじゃないというのも最近は悩みの種だ。 自警団といいつつ仲間が増え、組織になりジョットを中心として動き出している。 つい数年前は俺だけのものであったのに…そう思うと、こいつを意地でも繋ぎとめておきたいと思う。 強請るままに近づいてきた唇を噛みつくようにして迎えると舌を絡ませ、吸って自分の咥内へと導いた。 ジョットの舌は好きに蠢いて、上顎を舐められてくすぐったさに震える。 それに笑みを浮かべてジョットの手が俺の胸へと伸びてシャツを肌蹴ただけのそこに侵入すれば突起をいじりまわす。 そこから秘部へと感じた分だけ力が抜けていく。 「あっ…はっ、ああっ…」 「だいぶ楽になってきたな…いれるぞ」 「んっ…はやく…」 逆にじれったさを覚え始めれば強請るような声が出るも、それを気にしている余裕はなかった。 中途半端に入れられたそれは、もう奥へと誘っていてずるっと中に入り込まれて出そうになる声を必死に押し殺す。 女の様な声なんて、自分から出ることなど考えたら気持ちの悪いことのうえない。 「声をだせ」 「いやだ…あっ…ふぅっ…ううっ…」 「強情な奴だ」 「ふぁぁっ…やめ、ああっ…じょっと…ぉ…ぁあっ」 声を殺そうと思ってもそれを許さないジョットは感じる場所を狙って続けざまに擦り上げられ声が抑えられなくなる。 それなのに、ジョットは満足そうな顔で俺をみつめてきてこの時ばかりはこいつの余裕もないようにみえる。 俺はそれが好きだった。 俺しか見えないという顔をして、俺を貪って、ああ、なんという幸福だろう。 「G…お前が、愛しい…」 「ジョット…あっ…イくっ…はっああっ…やっ…ああっ!!」 「はっ……くそっ…っ!!」 イったあと思いっきり締めつけて中に満たされる感覚に見舞われるとようやく身体の力を抜く。 久しぶりの快感に、疲れた。 仕事詰めということもあって、睡魔がやってくる。 ここで寝たらヤバいと思うのに、意識が遠のく。 「ジョット……」 「少しぐらい、大丈夫だ…寝ておけ、お前は最近働き過ぎだ」 お前に言われたくないと思いながらもジョットの掌が俺の髪をなでるたびますます意識が危うくなって、眠ってしまった。 せっかくお前を探しに来たのに、結局一緒にサボる羽目になってしまった。 これはどう説明すればいいのか…アラウディあたりは愛想をつかしてまた遠出してしまいそうだ…。 言いたいことは山ほどあるのに、お前はいつもさらっと流してしまうんだろうな。 どうせ、大丈夫だと言うに違いない…。 だったら、ボンゴレへの帰り道も心配することもないのかもしれない。 「G…余計なことは考えるな…俺がなんとかする」 「ばぁか……お前が言えば、大体のことは許されると思いやがって」 「でも、その通りだろ?心配しなくても大丈夫だ」 その根拠は一体どこからくるのか…。 もう、それすらもどうでもいい。 お前が大丈夫だと言い続けるかぎり、俺は安心して傍にいれる。 助けてと言われた時には、全力で護ろう…。 それほどに俺達は近い…手を伸ばせばすぐそこに…お前がいる。 END |