トップの悩み


「恭弥、見てみろよ。すげー綺麗だ」
「本当だね」
「いつもはこんなの見れないから、新鮮だな」

俺達の住む新宿のネオンを見下ろしてオレは恋人である恭弥に言った。
恭弥も今日は機嫌が良いようで同じように見下ろしながら、目を細めている。

「ほら、あれが恭弥の店で…あっちがオレの店」
「ワオ、あんなに目立ってるんだ」
「目立つだろ、ホストクラブだし」
「1がここに居るけどね」

恭弥の言葉にオレはそれ以上喋れないように引き寄せて口づける。
そう、オレ達は互いに店で1に君臨するホストだ。
最初こそ、オレ達は互いのことを商売の邪魔だとしか思っていなかったが、いつの間にかオレは恭弥を好きになって両想いになりこうして二人で仕事をさぼって逢う間柄になっている。

「それは言わない約束だろ?今は忘れろよ」
「馬鹿だね、自分で言い出したくせに」
「それでも、だ」

クスクスと笑みを浮かべる恭弥から夜景を遠ざけるようにカーテンを引いてベッドへ移動する。
オレが仕事に嫉妬しているのがバレたのか、いきなりの行為を匂わせても腕が柔らかく首に絡んできて、オレの顔を上目づかいで見つめている。
その楽しそうな瞳に吸いこまれるように口付ければ柔らかい舌が侵入してきてオレはそれに応えるように絡めて堪能した。

「ん…もう、せっかちだね」
「お前が誘ったんだろ?」
「僕は舌を入れただけだよ」

ベッドへ乗り上げると服に手をかける。
シレッと我関せずなことを言う恭弥にそれが誘っているんだと言ってやりたかった。
だが、それを言って機嫌を曲げては意味がないので言葉を飲みこんで自分で服を脱ぎながら恭弥の服も脱がせた。
恭弥の身体を触るのはこんなに近くに居るのに久しぶりなのだ。
唇を寄せればピクリと身体が反応する。
これからの行為を期待しているとわかれば今度は大胆に突起に吸いついた。

「んっ…はっ、ディーノ…」
「気持ちいい?」

冗談めかして囁きながら顔を見れば濡れた瞳がオレを見つめていた。
あーもうっ、こっちが我慢できなくなるってのっ!
もう片方の突起を指でつまめば今度は明らかに感じた声をあげてオレの髪に指をからめてくる。
感じてきている様子に満足して下肢へと手を伸ばせば反応している自身があった。
口ではああ言っておきながら、身体は正直だと内心で笑みを浮かべて優しく撫でてやる。

「っ…そこ…」
「嫌じゃないだろ?」

ホストをやっているくせに童貞だったらしく、最初のころは慣れなくて大変だった。
でも、そんな風に世話を焼くのも嫌いではなかったため抵抗はなかったが何度か抱いても慣れないことには抵抗あるらしく唐突に触るとびっくりしたようにオレを見つめてくるのだ。
宥めるように囁いてキスをしたあとズボンも脱がし直接触る。
快楽を感じるのが嫌なのか、オレの腕を握る手はいつも強いぐらいに力を込めていて苦笑を溢す。

「きょーや、力抜いて…愛してる」
「ばか…いつも、そう言えばいいと思って」

実際、好きと囁くと力が抜けていくのだからしょうがない。
誤魔化すように首筋に吸いつきながら自身をそのままに秘部へと指を伸ばした。
入口を擦れば暫く触ってなかったせいかそこは固く閉ざされている。

「慣らさないとな…」
「面倒なら、やらなきゃいい」
「面倒なんて言ってないだろ?触らせて、優しくするから」
「……はやくしなよ」

どんなにとろけさせようとしてもそっけなく呟く恭弥にまったくとため息をつくが、それでも急かされれば秘部に用意されているローションを垂らして中に塗りこめていく。

「あっ…うぅっ…」
「唇噛むなって…呼吸して」
「やぁっ…ひっ、あっ…ああっ」

声がでてしまうのが嫌で唇を噛む相手に、それだと開かないからと口にもう片方の指を入れて口を開かせる。
途端に喘ぎ声が出てそれだけでオレは嬉しくてたまらなくなった。
オレはもっと声を出させようと一本の指を激しく掻きまわした。
その中で感じる場所を掠めるのか、だんだんの目の周りが赤くなってきて潤んでくる。

「やっ…ディーノッ…」
「いいとこなのわかってるだろ?大丈夫だ、これが普通だから」
「んっ…ああっ、なら…わかんなくなるぐらい、シて」

恭弥の誘い文句に応えるように指を増やした。
二本で広げるようにした後、三本に増やしてばらばらに蠢かす。
そのたびにぴくぴくと身体を震わせるから、オレもそろそろ限界だ。

「恭弥、中入ってもいい?」
「んんっ…はっ…欲しい、なんか…奥…」
「そーか、なら今からやるからな」

指を吸うように惷動している秘部から指を抜けば、無意識なのだろう腰を揺らしている。
視覚的に犯されている気分になりながら自身を扱いて秘部にあてがう。

「あつい…」
「熱いな、深呼吸してろよ」

恭弥の言葉に応えてやりつつ少しずつ自身を埋めていく。
先端を飲みこませるまでは苦しそうにしていたが、きついところを抜けてしまえばあとは奥まで一直線だ。
ズンッと最奥を突きあげれば悲鳴のような喘ぎがあがる。
感覚を取り戻してきたようでオレにしがみついて耐えている。

「恭弥、好きだぜ?」
「あんっ…ふぅっ、んっんっ…あああっ、やっ、そこっ」
「ここな、かんじて…?」

力の抜けた恭弥の身体をゆすりながら感じる場所を擦ってやると身も世もなく乱れる。
しつこいぐらいに責めると、首を振って嫌がった。
それすらもオレの興奮剤にしかならなくて、腰を掴んで逃げられないようにしながら強く腰を押しつける。

「うああっ、もっ…だめっ…ディーノ、イく…イくぅっ」
「きょうや、きょうや…オレも、も…イくから、一緒にな…」

激しく抽挿を送り込んでやると、泣きながら中をキツく締めつけて白濁を放った。
オレも締めつけられて抜こうと思ったが、恭弥の足がオレの腰に回っていたためにそれができず中に放ってしまった。
その余韻に小さく声を漏らして感じている恭弥にキスを贈って抱きしめる。

「すっげー、気持ち良かった」
「はぁっ、はぁっ…僕は、疲れたよ…」
「明日も休みだろ?今日はもう寝ようぜ?」
「そうだけど、僕は夜から仕事に行くからね」
「立てんのか?」
「貴方が無理してなきゃね」

自身を中から抜いて、もう眠そうにしている恭弥の横に寝転がると髪を梳く。
疲れきっているからか大人しくされるがままになっていて、幸せをかみしめる。
だが、そんな幸せも長く続く訳もなく理不尽にも言われた言葉に顔が青ざめた。

「無理は…してない、と思う」
「ふぅーん、貴方そんなに余裕あったんだ」
「いや、そうゆうわけじゃねぇっって」

恭弥と話していくうちにますます立場が悪くなって行く。
ああ、もう、こんなこと言いたいんじゃないんだけどな…。
何も言えなくなって、恭弥をキツく抱きしめるとくすくすと笑う声が聞こえる。
からかいやがって…。

「なら、明日お前の店にいってやる。で、恭弥を指名する」
「そう、好きにすれば…ただし、指名しただけ気前よく金を僕に貢ぐんだよ?」
「もちろんだ。お前の為にしかつかわねぇよ」

いちいちキスを繰り返しながら囁けばいい子だと言うように頭を撫でられる。
もう、ほだされているなと感じながらも恭弥に甘やかされるような感覚は嫌いではない。
久しぶりの脱力感と幸福感をもう少し味わいたくて目を閉じた。
明日になれば、お互い他人に愛想をふりまかなければならない生活に戻る。
だからこそ、今だけはお互いを独占したい…。





END