「Buon Compreanno恭弥。誕生日おめでとう、恭弥。ハッピーバースデー恭弥」
「煩い、何度も言わなくてもわかる」
「言いたい、せっかく0時まで起きてたんだから」
「もう寝るよ、僕は」

風呂に入り寝る準備をして0時になるのを待って発せられた言葉の嵐。
鬱陶しいと思うが、悪い気持ちはない。
ただ、もう眠いのだ。
今日はこの人が来るって言ったから仕事を早く終わらせて、明日は強制的に休みにさせられた挙句ずっとくっついてると宣言されてしまっている。
とりあえずは体力確保のために寝させてくれとベッドに入ったが、ディーノは寝る様子がない。
外国人はどこまで元気だと頭を抱えたくなるが仕方なく息を吐くと僕はディーノの首に腕を回した。

「ねぇ、明日ずっと一緒に居るんでしょ?」
「もちろん、ケーキもプレゼントも買ってきてある」
「じゃあ、今日はもう寝ようよ。僕が寝不足でもいいの?」
「駄目だ、ちゃんと寝ような?明日はたっぷり祝ってやるから」
「そう、楽しみにしてるよ」

チュッと音を立てて口づけられ、笑みを浮かべる。
ようやく眠ってくれる気になったディーノにすりよれば心地いい場所を探す。
肩のあたりに頭を置いて、僕はすぐに睡魔に襲われて眠っていた。




目を開けると、そこにはまぶしいくらいの金。
僕は目を細めてしっかりとそれを見ると、ディーノだった。
しかも、なんか小さい。

「君は……?」
「あ、きょうや起きた」
「ん?ホントか?」
「恭弥、祝うぞー?」

誰だと問う前に他の方向を向いて誰かを呼ぶように言うので何かあるのかと身体を起こせばぞくぞくとディーノがやってきて僕の顔を覗き込んできた。

「なんなの、兄弟か何か?」
「ん?ああ、全部オレだけど?」

周りを見回して言えば自分だと言い張る。
同時刻に同じ人間が存在できるなんておかしいと口を開こうとすればいいからいいからと手をひかれて無理やり起こされどこかもわからない場所を歩いてくとドアが現れてそれを開くと大きなケーキとたくさんの花が広がっていた。

「なに、これ」
「恭弥の為に準備したんだぜ?」
「ケーキだって運ぶの苦労したんだ」
「きれいだろ?」

次々と言われて、確実に夢だと思い当たった。
こんな、不可思議なことが現実に起きるなんてありえない。
それに、こんな大量の花も集められないだろう。

「本当だね。貴方にしては、よくやった方じゃない?」
「オレにしてはってなんだよ?」
「ケーキ運ぶのだって二度目には成功させたんだからな」
「馬鹿っ、それは言わない約束だろ?」

わーわーぎゃあぎゃあと言い争いが聞こえてくれば、夢の中といえど全く変わらないと笑みが浮かぶ。
どうすればいいのだろうかと迷っていると、小さいディーノに手をひかれた。

「もうケーキくっちまおうぜ?」
「それもいいけど、皆で…ね?」

なんだかんだ言っても、やっぱり祝い事は皆でしなければ楽しくない。
席に座ってまだ言い合っているディーノ二人を呼べば、ろうそくに火をともしていく。

「っていうか、適当にろうそく立てたけど…恭弥は今年で何歳なんだ?」
「教えないよ…僕は僕の好きな年齢なんだから」
「またそれかよ」
「まぁ、良いけどな。そんなところにも惚れてんだから」
「きょうや、付けたからふーってして」
「そこまでするのかい?」
「そこが醍醐味なんだろ?早くしねぇと蝋がケーキにつく」

早く早くと三人に急かされて僕は仕方なく蝋に息を吹きかけて炎を消した。
すると、いきなり視界がブラックアウトして再び目を開けた時にはいつものディーノの顔がそこにはあった。

「ふふっ…ばか面」

よだれをたらして、マフィアのボスには見えないぐらいダラケきった顔。
きっとこんな風にできるのも僕のせいだ。
そうだと思いたい。
この人に、安らぎを与えられていると…。


「ねぇ、今度はちゃんとろうそく消すからケーキ食べさせてよね」




END