イタリアに来てから、三ヶ月が経とうとしている。
ツナは着実に仕事を覚えていっている、俺が任務に出ている間少しずつマフィアの道に踏み込んで行っているのがわかるのだ。
それは何とも複雑な気持ちで、言葉には言い表せない。
日本とは違い、ここはいつでも危険に満ちている。
平和なのは昼間と、この屋敷の中だけじゃないだろうか。
平気で人を殺す道具を持ち歩ける国。日本とは違うことを、ツナはわかっているのだろうか…。

「リボーン、眉間にしわがよっとるぞ?」
「…俺の心労の一つが自分だってわからねぇのか?」
「なんのことかな?」

いつの間にか現れた九代目に俺は舌打ちを出さんばかりに言ってやれば、ほっほっほ、と笑らわれた。
俺の激務の要因はこの男にある。
が、何を考えているのかわからないあたりとんだ狸である。

「綱吉くんが知識を増やしていくのが許せないかね?」
「…本音はな。だが、選ばれた男だといわれれば聞くしかねぇだろうが」
「そうだな、でなければ…綱吉くんとお前は出逢っていなかっただろう」

にこにこと笑いながら話す九代目はいったい何がいいたいのか。
真意はわからないまま、廊下を執務室に向かって歩く。
また俺は任務に出なければならなくて、出かける前にツナの顔でも見ておこうかと思ったが、邪魔してくるらしい。

「恋愛までさしずされなきゃいけねぇのか?」
「そんなことはない。第一、彼がお前を選んでいるのだから」

ツナが好きならばそれでいい、そういうことだ。
なら、どうして俺とツナはここにきてから会うこともままならないのか。
まともに会えていたのは最初だけで、最近はまったくすれ違いで顔を見るぐらいしかできていない。

「ただなぁ、今の時期は少しばかり邪魔を入れられない」
「何をさせる気だ?」
「お前はわかるだろう?こちらの道に入ったら、まず何をするか…何を、覚え込ませられるか」

九代目の意図することを俺は知っている。
避けては通れない道だ。俺ならば、それを見せずにいてやりたいとさえ思う。
けれど、それが現実。

「俺は、いつか恨まれるな」
「恨まれるとしたら、こちらだ。お前たちは、ちゃんと前を向いていなさい」

九代目の言葉に俺は九代目を見るが、いつもと変わらない笑顔を浮かべていた。
まるで、それが当然のような声色に少し怖くなった。
執務室につくと、ドアを開ける。が、そこにツナの姿はない。

「どこにやった?」
「なに、少しばかり職場体験させてみようと思っただけだ」

心配するなと笑う九代目に、やっぱりこいつは楽しんでいるだけじゃないのかと本気で思えてくる。




「…戦場だ」
「ボスが暴れるといつもそうなんですー」

気にしない方がいいですよー、とさも自分は無関係ですと言わんばかりにそこを去ろうとするフランの首根をしっかりと捕まえた。

「なにするんですかー」
「お前が、ベルと騒いでこうなったんだろ!?」
「でも、ミーがやったんじゃないですよ」

むしろ悪いのはボスですから、なんていって俺の手から逃げていく。
おい、今力を使うのはなしだろう!?
目の前に広がるは焼け野原。
もともとそこには、そこそこ立派な屋敷が建っていた。
そして、ここが俺の仕事場になる予定だった。
俺は九代目の命でヴァリアーの助っ人として派遣されていた。
毎日のように何かを覚えさせられていた俺にとって、ヴァリアーとはどんなところだろうという疑問がわいていたのも事実。
ここにきてから、ヴァリアーはもちろんキャバッローネにもミルフィオーレにも顔を出せていない。
知り合いの顔も見ておきたいと思ったのだが、まだそれはできなさそうだ。
とりあえずのところ、ザンザスが一番気になっていたものでもあるので、今回のこの派遣はとても充実している…はずだった。

「ヴァリアーって暗殺部隊だよな…?」
「ミーが入った時はそういう名前だったはずですー」
「フランが入った時って?」
「二ヶ月前」
「…そうか」

俺より後にこっちにきたんだな、と少し共感を得るがあきらかに俺よりこのヴァリアーになじめてる風なのはなんなんだろうか。
つか、ザンザスが一気に焼け野原にしちゃったせいで何もなくなったのはいいけど、ほかの奴らも下敷きになっていると思うんだ。

「いいのか、放っておいて」
「大丈夫ですよー、みんなゴキ○リ並みの生命力でそのうち出てきますからー」
「…へぇ」

ザンザスはザンザスで腹が減った、とか何とか呟いてさっさと帰ってしまったし。
ぶっちゃけ残された俺とフラン…とスクアーロとベルはどうなるんだろうか…。

「うぉおおおっ、ザンザスの野郎、いきなりやりやがってぇ」
「本当によみがえった!?」
「はぁ、任務も何もあったもんじゃねぇな」

がれきの下から現れたスクアーロとベルに俺は驚きを隠せなかった。
さすがザンザスに仕えているだけあるというところなのだろうか。

「おい、生きてたのかぁ?」
「う、うん…フランが隣にいたから盾的な何か出してそこに隠れてた」
「そうかぁ、まぁお前に何かあったら叱られんのは俺だからなぁ」

行くぞ、と先を歩き出すスクアーロと興がそがれたような顔をしているベルについていきながら、フランは何か考えるように後ろを歩いていた。

「フラン、お前は骸と一緒にいるかと思ってた」
「…そのつもりでしたー、こんな面倒くさいことミーはやる気ないですからー」
「だよな」
「でも、師匠はこれが契約だからといって、無理矢理ミーをこんな得体のしれない国に連れてきたんですよ」
「……はぁ」

なんだか、だんだん芝居がかってきたぞ。
まぁ、たぶんヴァリアーと骸で何か約束でもしていたのだろう。
確かに十年後ではフランはヴァリアーにいた。
同じことをなぞらえる必要はないかもしれないが、そこがあるべきところだろ骸が判断してフランがここにいるのならそういうことなんだろう。

「ちょっと、聞いてますー?」
「え、あ…ごめん」
「まぁ、いいですけどねー。なかなか、ここはミーにも居心地がいいですよって、師匠に伝えておいてくれませんかー?」
「…うん、そうする」

フランに言わせれば、ここも気に入ったということなんだろうな。
いいことだ、と笑って助っ人のつもりだったのにまったく助っ人できていない状態だったがヴァリアーの屋敷へと戻ることになった。

「で、お前はなんでここにきてるんだぁ?」
「助っ人だけど?」
「そんなのいらないのわかってんだろ」

ご飯を食べながらフォークを向けられ決めつけられてしまえば、頷くしかない。
九代目が何を思って俺をここに派遣したのか。
わからないわけではない。
ザンザスが踏み込んでこなければ、俺は自ら誰かを殺すことになっていただろう。
マフィアとしての現実を、俺にわからせるため…なのかもしれない。

「そんなんで、本当にネオボンゴレプリーモなんかになれるのか?」
「…不安になるようなこと言わないでくれよ」
「どうでもいいけどな。俺たちはお前についていくだけだぁ」

肉を食べながらそんな人生ささげたような言い方をされると、心臓が痛む。

「善処するよ」

ああ、きっとこれからもつらいことがあるんだ。
それこそ、今の生活よりもすべてを任されてしまったあとなんかは特に…。
それに耐えれるように、少しずつ慣れていかないといけない。

「それより、俺の方からもフランを頼むよ」
「そりゃ心配いらねぇ、神経図太いからなぁ」

お前の比じゃない、なんていって笑うスクアーロの心労は少なくなったのかどうなのか。
ヴァリアーは一日派遣されただけじゃなにもわからない。
これから、理解していかなければならないようだ。







「#お仕置き」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -