大学につくなり、俺はいきなり拉致られた。
開き教室に連れ込まれて、そこで雲雀さんと骸と山本と獄寺くんまでいた。
「み、みなさんおそろいで?」
「まったく、言わないと口を開かないんだね君は」
「殴らせてくれません?」
「暴力反対っ」
「十代目すみません。俺には止める権利が…っ」
「ツナ、俺たちがこうして集まってる理由わかってるか?」
一番やさしい声で言ってきた山本に俺はわけがわからずに首を振った。
ここに連れてこられて、リンチまがいなことをされている理由さえも見当がつかないんだからわかるはずがない。
「昨日、なにがあった?」
「……あ」
「忘れていたとは、あきれましたね」
「雲雀から聞いて心配したんだぞ?」
獄寺くんは必死に首を縦に振り続けていて、あの誘拐まがいのことだったのかと納得すると知れ渡っていた事実に驚いた。
そして、俺がディーノさんに助けられたって聞いたからきっとそれを雲雀さんは聞いたのだと思う。
「すみません、でした」
「謝ってほしいけど、僕たちが言いたいのはもっと違うよ」
雲雀さんがあきれたように言って、俺はわからず口を閉ざした。
こんなにみんなが一緒にいるのも珍しくて、なんで誘拐まがいでこんなに大事になっているのだろうと不思議だった。
「ツナ、なんで俺たちに助けてって言ってくれなかったんだ?」
「信用されていないのはわかってましたが…そこまでとは」
「え、あ…あれはっ」
「どうして、俺を呼んでくれなかったんすか…俺は十代目のためならっ」
「君は黙ってて。ファミリーだっていうなら、一番に連絡するのは僕たちであるべきじゃないの?」
雲雀さんの言及に俺は言葉に詰まった。言われてみればそうだ。普通ならリボーンでもなくみんなのはずなのに…。
信用していないわけじゃなかった、ただみんなを巻き込みたくなくてリボーンならそれをわかってくれるって勝手に思っていただけだ。
「どうして、連絡しなかったの?本当に信用されてないわけ?それとも、別に理由があるのかい?」
言葉にしてみろと言われて俺は迷った。
どう言えばいいのかわからなくて、言葉を探す。
「信用してないわけじゃないです、頼もしいと思います。けど、あんなことに巻き込みたくなかったって言うか…」
「ボスが誘拐されるのを黙ってみてろっていうのかい?」
「ちがっ…そもそも、俺はまだボスじゃ…」
「僕たちにとっては、もう君はボスなんですよ。そのボスが誘拐される、その時に近くにいれない。何一つ知らされずそうなっていいと思いますか?」
俺は無言で首を振った。
俺はいいと思っていたこと、けれどみんなはそれが裏切り行為だという。
でも、よく考えたらそうなんだ。
「君はまだ子供でいるかもしれないけど、たぶんこれから命を狙われる危険は高まっていく、僕たちは君につき従うんだ。ちゃんとトップとしての自覚をもちなよ」
「……」
「雲雀、あまり言いすぎるのもどうかと思うぜ?」
「黙ってろって言っただろ。ただでさえ僕はここにいるのが耐えられないんだ」
「お前こそ、その言い草何とかしろよ」
「なに、僕に指図するの?」
キッと睨みをきかせる雲雀さん。
山本と獄寺くんは俺の盾になろうとしてくれて、骸はあきらめたようにため息を一つ。
俺はそれを止めたくてどうしようかと手を伸ばして、やめた。
けれど、それを掴んだのは骸だった。
「言いたいことがあるんでしょう。呑み込まずしっかり言いなさい、子供じゃないんですから甘えるのはやめたらどうですか」
「…ごめん。あの、連絡を怠ったのはすみません。でも、なんとかなると思ったのは本当で、最初はリボーンに連絡したんだけど、そこからディーノさんに話がいったらしくて…俺もよくわからなかったんだ」
「赤ん坊に頼るのはもうやめたらどう?君をボスにするのが仕事なんだ、君の足枷になってどうするのさ」
「足枷って…そこまでじゃ…」
「埒があきませんね」
言われるほど頼っているという感覚がなく、俺は困り果てて言い返そうとすればそれを遮るように骸の声が割って入った。
さっきは促したくせになんなんだと骸を見れば、とりあえずと山本と獄寺くんを締め出してしまった。
「おい、なにするんだよ」
「ここからはおり言った話をするので、外野には消えてもらっただけですよ」
鍵を閉めて完全にここは密室になった。
骸は雲雀さんに視線を向かわせ、俺に戻した。
「君は、まだ答えを出していないようですね」
「なんの?」
「骸、何の話?」
「どうせ雲雀恭弥も、跳ね馬の隣にいたんでしょう。それなら、どうして綱吉くんがアルコバレーノに頼りたがるのか、うすうす気づいているんじゃないんですか?」
骸の落ち着いた言葉に、雲雀さんは俺を見て、まさかという顔をした。
だから、なんでいつも俺だけ蚊帳の外で話をするのだろうか。
いい加減泣きたくなってくる。
「なんなんだよ」
「ここまで拗れるとは思いませんでした」
「拗れてるの?」
「はい、たぶん…綱吉くんがここまでしらを切れるとも限りませんから」
予想ではなく確信に近い形で僕の考えは当たっていると思います。と話す骸に雲雀さんは俺を見て、そうかもしれないと小さくつぶやいていた。
「一体何なんだよ」
「率直に言います。アルコバレーノとはどうにかなりましたか?」
「どうにかってどうなるんだよ?」
「キスした?セックスした?」
「えっ…は?なんでそんなこと」
いきなり雲雀さんが言ってきて、どうしてそんなことを聞くのだとあわてた。
それに二人の顔が真面目に俺をみてきて、そんな予定もないと首を振れば二人して深くため息を吐いた。
「振り回されてますね…」
「まったくだよ」
「なんで二人はわかってるんですか」
「僕にはわからないのがわからないよ。それにしても、赤ん坊がこんなにも奥手だったなんて…」
「僕も同意見ですよ、いっそセフレというセリフでもいいから聞きたかったですよ」
「それ、爛れてるよ」
おかしい、いつもは口を開けば喧嘩の二人が、今はこんなにも意気投合して話している。
ある意味貴重だとじっと見ていれば、二人してこちらを見てきて一瞬びっくりした。
「君は赤ん坊が好きなんだよ、いい加減自覚して」
「…な、なんで…そんな、嘘です」
「嘘じゃないでしょう。無自覚に好きだとオーラを出しておいてそれを知らないふりとは…」
「あきれた、なんでこんなに子供なんだろうね。赤ん坊は何をしてたの」
「じっと待ってたんじゃないですか。この子供が育つのを…」
あきれたとため息を吐かれて、もうこれ何回目だと泣きたくなった。
すると、いきなり俺の手を掴まれて両側からホールドされるようにして二人が俺を挟んでくる。
「なに、なにするんですか!?」
「連行。このままじゃ本当に何の解決にもならないからね」
「いっそ、当たって砕けてしまいなさい」
俺の知らないところで話が進んでいる。
どうしよう、どうしようと思っているのに俺の身体は勝手にずるずると引きずられてマンションへと逆戻りしてしまった。
山本と獄寺くんは俺を心配そうな目で見てきたけれど、骸と雲雀さんが家に帰すとそれだけいって二人の視線なんか顧みず通り過ぎてしまっていた。
「何するんだよ…」
「君には今から赤ん坊に告白してもらうよ、好きじゃないって言ったって言い訳にしか聞こえないから」
「君は、アルコバレーノが好きなんです。無意識で…なので、とりあえず何か変化をつけるために告白しましょう」
にっこりと骸に笑われ、雲雀さんの言葉には抵抗すらできず、マンションの前まで来てしまうと俺はちらりと二人を振り返る。
「まだ好きかどうかわからないです…けど」
「嘘ですね」
「なんでっ」
「いつまでも、その関係を続けられると思わないことです」
正直、本当は言いたくないだけなんだと思った。
リボーンとのちょうどいい距離感でまとまった今の関係は崩せない。
変えたくない。
いくら、俺がリボーンの気持ちに変化を持ったとしてもこれ以上離れることなんてできないから。
「嫌だ」
「君に拒否権はないよ」
俺の言葉も聞き入れてもらえず、問答無用で雲雀さんに背中を押された。
「それと、文句は振られたときに聞いてあげる」
突き放したような言葉に俺は後戻りなんかできなくて、ゆっくりと覚悟すると頷き部屋の中へと入った。
「なんだ、ツナ。授業はどうした?」
「あの、好きなんだ」
「……誰にそそのかされたんだ?」
「なんで」
「そんなこというやつじゃないってわかってるからな」
リボーンの言葉は冷たかった。
どうしてそうなってしまったのか、こんなにも辛いことなら言わなければよかったと後悔が押し寄せてくるが、もうどうしようもない。
「骸と…雲雀さんに…」
「ったく、あいつら…碌なこと吹き込まねぇな」
「でも、俺がリボーンを好きな気持ちに偽りはないよ。だって、リボーンでヌいたことも、あるんだ…気持ち悪いだろ。俺だってわけわからなくて、怖くなった…けど、たぶん…俺の好きはそういう好きで…もしかしたらこれから先、リボーンに迷惑かけるかも…しれなくて」
言葉にすればするほど、自分が重い人間だと思われてしまいそうで、けれどもう離れることはできないのにと頭の隅で声がした。
俺の気持ちを知ってもらおうと知らなかろうと、俺はリボーンから離れてしまったら…どうにもできないと思う。
ああ、だから俺は考えないようにしていたんだ…こんな怖い気持ちなんて知りたくなかった。
リボーンからの言葉がなくて、俺は不安になりこの場にいれないと顔を上げた。
「っ…何、その顔」
「知るか」
その時みたリボーンの顔は後になっても忘れないんだろうなと思った。
それぐらい、見たことなくて俺は返事の肯定を予測することもできた。
「ねぇ、抱きしめても…いい?」
「んだよ、今更」
「気持ち的に、いろいろ違うじゃん」
どきどきと心臓が痛いぐらいに高鳴っている。
緊張しているんだとわかって、俺もリボーンみたいに真っ赤になっているのかと思ったら妙に笑えた。
手を伸ばしたら強引に手首を掴まれて、次の瞬間には胸の中に納まっていた。
リボーンにも聞こえてしまうんじゃないかって思うぐらいに、俺の心臓はうるさかったが重なった瞬間にリボーンの心臓も同じ振動を伝えてきて、安心する。
「リボーンの心臓うるさいよ」
「お前もだろうが」
「怖かった…すごく、怖かった」
「杞憂で終わってよかったな」
クシャリと頭を撫でてくる優しい動きに、俺はギュッと抱きつく手に力を込めた。
「ところで、俺でヌいたってのは本当か?」
「…食いつくとこそこかよ」
「まったく、急な召集で二限を出損ねましたよ」
「僕は単位に問題ないから関係ない」
「……」
綱吉を見送った後僕たちは学校へと戻るためにとぼとぼと道を歩いていた。
骸は何を思っているのか言葉少なに隣を歩いている。
「でも、うまくいけばいいね」
「行くに決まってるじゃないですか、僕が見る限り相思相愛。振られることなんてありえませんよ」
「その自信はどこから来るんだい?」
「綱吉くんを見てる限りですよ」
骸の言葉に僕はふぅんと気のない返事をして、泣きついてくることがないなら一安心だなと満足した。
くぁとあくびをして、昨日は寝れなかったから今日は早めに切り上げて昼寝にいそしもうと考えていた。