沢山の戦いを乗り越えた俺達を待っていたのは高校受験という厳しい難関だった。
結局、俺はほとんど何も変わっていないわけで現実的なテスト数値を知ったリボーンは改めて俺を殴りつけ、死ぬ気で勉強させた。
たまに獄寺君や山本が来て一緒に勉強して、たまに徹夜させられて、過酷だったけど時間は待ってくれなくてようやく落ちついたと思った時には、卒業式だった。
「怒涛だったなぁ」
「それも全部お前がテストの点がダメダメだったからだぞ」
「はいはい、それはわかったって。高校に進学できるんだからいいだろ」
俺の身ににもなってみろ、なんて言われて高校に進学が決まってからリボーンの口癖みたいなものに適当に流す。
アルコバレーノ達は、それぞれ別の場所にいるらしいが日本にとどまっている奴等もいるらしい。
特に、風やスカル、ユニはいると情報があった。
ユニ以外の奴等は呪が解けて、ゆっくりと成長しているらしいとヴェルデが言っていた。
ヴェルデは実験施設があるというイタリアに帰ってしまったのだが、帰る前に色々なデータをとってリボーン達は通常の三倍のスピードで成長しているらしい。
それは元の姿にできるだけ早く戻ろうという意思が反映しているとかなんとか。
俺にはよくわからない説明をしていたが、リボーンは納得していたようだった。
計算上、俺が大学生になるころには元の身体に近づくらしくそれまでがもどかしい、とかなんとか言っていた気がする。
何がもどかしいのかわからないが、どうせ碌でもないことだろうと深くまでは聞かなかった。
「じゃあ、いってきます」
「気をつけてけよ、くれぐれも卒業だからって嵌め外し過ぎんな」
「いわれなくても」
靴をはいて、今日は卒業式。
俺は受験からほとんど家に帰れば勉強漬けだった。教科書全部を暗記しろという勢いだったが、それで合格できたので一安心だが、そのあいだ友達との連絡はすべて断たれていた。
なので、今日獄寺君達と話せるのが久しぶりなような気がする。
「十代目ー」
「ツナー」
「二人とも、久しぶり」
「心配したっスよ。無事に卒業式迎えられて良かったです」
「俺も、合格発表の時ははらはらしたけどな」
「皆高校いけてよかったよね」
いつものように外で待ってくれていた二人と合流すれば、並んで学校へと向かう。
今日で並盛中学に行くのも最後になるかと思うと感慨深い。
「そういえば、二人とも高校どこに行くことにしたんだ?」
俺は思い出したように話題を振った。
それを言うのも、自分のことに手いっぱいで受験の時も誰が一緒に受けて誰が受かったのかわかっていなかった。
「俺は勿論、十代目と一緒の学校っス」
「え、獄寺君学力相当上じゃなかったっけ?」
「俺もツナと一緒だぜ」
「山本は俺と一緒ぐらいだったよな」
「俺はっ、どこまでも十代目についていきますっ」
右腕になるために、と朝からテンションの高い獄寺君に若干呆れながらも人一人の人生を左右してしまったショックを地味に受けていた。
山本は野球で入れたらしい、高校でも続ける意欲を語ってくれて、俺はその話しを楽しく聞いていた。
学校につけば、教室に入って胸に花をつけられる。
これで最後だという、実感が今更ながらに込み上げて来て、懐かしさすら覚える。
雲雀さんはなんだかんだ、今でも風紀委員長をしていて、まだ続ける気なのかと思いつつも、あの人はそれが良いんだろうと思うことにした。
まぁ、逆に雲雀さんが卒業するのもなんだか変な感じがする。
「えー、それでは…今日でこのクラスに集まるのは最後になるが、元気でな」
担任の最後の言葉で皆は体育館に移動となった。
シャマルは今年で異動になるらしく俺達と一緒に卒業らしい、どこにいくかも聞けてないがどうせすぐに会える場所になることだろう。
長ったらしい校長のあいさつと、一人ひとりに手渡される卒業証書に本当にこの生活が変わってしまうんだと実感した。
顔見知りはいるとはいえ、新しい環境に緊張しないことはない。
ダメダメな俺はこれからもやっていけるかなんて、そんな疑問…湧き出てしまえば際限ない。
でも、どんなことを思っても時間は流れていくわけで四月から俺達は高校生なのだ。
リボーンはいつものように扱いてくるだろうし、獄寺君も山本もいつもと変わらない。
京子ちゃんは私立の高校に行くらしくて、ハルと一緒だと言っていた。
あそこの女子高は制服がかわいくて、街で会ったときにでも拝みたい。
「ツナ、写真とろうぜ」
「十代目―」
「うんっ」
式が終わればいろんなところでいろんなイベントがあって、俺達は最後勉強した教室で写真を撮ることにした。
写真を撮ったあと、すぐに山本は下級生から呼ばれて獄寺君も呼び出しされていた。
「二人とも、かっこいいもんなぁ」
「ツナ君、ちょっといいかな」
「きょ、京子ちゃんっ」
教室の窓から校庭を眺めていれば声をかけられて、振り返ればそこには京子ちゃんの姿があった。
友達宣言されて少し落ち込んだ俺だが、いまではいい初恋として俺の中で整理がついていた。
なんだかんだ、今でも時々こうして一緒に過ごす時はあるし、友達でよかったかもしれないなんて思ったりもする。
「卒業おめでとう。学校離れちゃったね」
「京子ちゃんこそ。学校離れたけど、すぐに会えるよ」
少し寂しそうにする京子ちゃんに俺は笑って、京子ちゃんはそっと自分の花を俺の花と差し替えた。
「記念に」
「いいの?」
「うん、ツナ君と一緒にいれてすごく楽しかったから」
どこまでも優しく笑う京子ちゃんに俺も笑って、そのうち京子ちゃんも男子に呼ばれて教室を出ていった。
青空の広がる今日はとてもいい天気だ。
そんな日に卒業できてよかったと思う。
少し寂しいけど、きっとまた会える。会う機会は何度でもめぐってくるのだと、思っている。
そして、これからの人生も同じように回っていくのだ。
「さて、高校生活…楽しみだな」
新たに始まるいろんな予感に、俺は胸を躍らせていたのだった。
プロローグ