少し離れてよ、だーりん

いつものように執務室で仕事に励む俺。
今日はよく晴れた日で、ほとんどの人が外へと足を運んでいた。
つまり、俺を見張る人もいなくなったということでもある。
俺は肩をとんとん、と叩いて疲れのでる身体にため息をつく。
まだ二十五歳ともあろう男がこんなに疲れてどうするんだと思うがそれなりの仕事量が俺を襲ってきているのだ、どうにもこうにも仕方ないことだろう。

「ちょっとぐらい、昼寝していいかな」
「ここ空いてるぞ」

どうしたものかと思案したが、その独り言に答えた声が一つ。
俺は驚いてその声がしたほうを向けばいつの間にかリボーンがソファに座っていた。
さっきまではいなかったはずなのに、どうしてそこにいままでずっといましたよ、的な風にいるんだ。

「……リボーンさん?」
「なんだ?」
「お前、昼に外でなきゃなんねぇって出かけてたよ…な?」
「そうだな」
「なんでそこにいるんだよ」
「帰ってきたからだ」

帰ってきたって音しなかったけどっ!?
突っ込みたい気持ちを抑えつつ、俺は一つため息をついて昼寝をしようとした考えを却下した。
リボーンがいるとなれば話は別だ。
扱きが厳しい?それだったら、どれだけ嬉しいだろう。
いや、嬉しくないけど…それ以上に、この状況はまずいのだ。
執務室とは言え部屋に二人きりと言う状況はいろんな意味で、危ない。

「帰って来たなら少しは音立てろよ、びっくりするだろ」
「びっくりさせる予定だったんだ、丁度いいだろ」
「丁度いい?」

どこがだ。
むしろ丁度よさ加減がわからない。
そうして、リボーンは俺を見て両手を広げた。
あ、きた…一番ひくパターン。

「ほら、俺が膝枕してやる」
「遠慮します」

リボーンは二人きりになると、異常に俺を甘やかしてくる。
というか、べたべたになる。
それはもう本当にうざいぐらいに。
最初はいいかなと思っていたのだ、けれど確実にそれは俺をダメにするし何より仕事が進まない。

「なんでだ」
「なんででも、夜までお預け」

それでも、結局突き放しきれないのも惚れた弱みと言うことだろうか…。
リボーンはまだ納得できない様子で視線をこちらに向けてくる。
じっとみてくるそれを最初は無視ができた。

「………」
「………」
「……」
「あーっ、もうなんだよっ!!!」
「別に見てるだけだぞ」

視線に耐えきれず喚くとリボーンは素知らぬ顔で答えてくる。
もう、それが耐えられないんだって気付いてるくせに。

「もう、早めに終わらせるから…待っててっ」

ぴっと人差し指を向けると、もう自分の仕事がないのかソファに横になりつつ、リボーンは笑みを浮かべて、おう、と短く返した。
俺もそれに一安心すると自分の仕事に取り掛かる。
さっき折れそうになった集中はリボーンと話したことによりできるようになって、滞っていた仕事も少しずつだがなくなっていく。
リボーンも俺のことをからかうことなくソファで寝ていてくれたおかげで視線も気にならなかった。




終わってみれば夕日がリボーンの顔を照らしていた。
ボルサリーノをとって寝ている顔を覗き込めば、やっぱりかっこいいとおもう。
喋らなければいいのに、な…とか。
いや、喋ってもかっこいい時もある。本当にかっこいい。
でも、でれでれしているのはちょっと引くかな…と。

「こうしてればいいのに」
「ん?」
「いや、何でもないです」
「終わったのか?」
「え、うん」

俺の言葉に反応したのか俺が近づいたことに反応したのかわからないけれど、ぱちりと目を開けて俺を見つめてくるリボーン。
相変わらず、まっすぐに俺を見てくる。
そうして、伸ばされた手に俺は身を委ねる。

「お疲れ」
「うん」

優しい言葉につい、ほっとため息をついてしまう。
こうやって抱きしめてもらえるのは好きで、安心する。
背中を撫でる手に安心しきって、眠ろうかと目を閉じたとことでガチャリとドアのあく音がし、俺は思わずリボーンを押しのけて顔をあげた。

「おや、お取り込み中でしたか」
「む、むくろっ」
「てめぇ…」
「おわっ、ごめん」

きょとんとした顔を見せたのは、骸だった。
そして、下から死にそうな声が聞こえて慌てて顔をふんでいたことに手を退けリボーンから離れた。
骸は普通に偵察だったはず、この時間に帰ってくるのは予想できたことで一瞬でもここが執務室だということを忘れた自分を呪いたい。

「仲が良いのは結構ですが、ソファで寝るのは行儀が悪いですよアルコバレーノ」
「お前に言われたくねぇぞ」

リボーンと骸は一瞬睨みあって、後俺に報告書を手渡してきた。
そういえば、骸のアジトにしていたところはソファで寝ていたような形跡があったしな…。
そんな昔のことを蒸し返すのかと思ったが、二人の間ではそれが普通のようにやりとりに含まれているあたりまだ有効なのだろう。
そんな昔のこと、気にしないでほしいなぁ。
少なからず、ここでは皆楽しく過ごして欲しいんだから。

「お疲れ様、骸」
「いえ、簡単なものでしたから。それでは、何かあったらなんでも言ってください」

力になれるのなら、できるだけ協力しますからと笑みを浮かべるなり骸は執務室を出ていった。
言われなくても、頼ってしまうだろう。
かけがえのない、俺の仲間なんだから。

「ツナ…」
「鍵かけるのは、なしだぞ」
「なら、早く部屋に行くぞ」
「…まだ、来てない人いるから先に部屋戻ってろって。終わったらいくから」

どこまでも俺を振りまわしてくれると苦笑しつつ、返事をすればリボーンはのそのそと身体を起こして部屋を出ていった。
シャワーでも浴びて待っていてくれるだろうか。
それなら俺もシャワーを浴びてから行こうかと考えつつ、執務室で書類整理をしていると、外に出ていた人たちが帰ってくる。
疲れた表情はみてとれて、それにねぎらいの言葉をかけながら書類を受け取った。
皆が帰ってくればようやく俺の仕事も終わりとなる。
自室に戻るなり、すばやくシャワーを浴びた。
そのあとで、部屋を出てリボーンの部屋を目指す。
ノックをすれば早く来いと言われて、どっちがボスなんだかと笑った。

「きたぞ、リボーン…っ」

入ってリボーンの前にきたとたんいきなり抱きしめられた。
今日一日抱きしめられてなかったからなと思いながら、俺もその背中を抱きしめ返した。

「もうなんだよ、そんなに俺にベタ惚れなのか?」
「見てわかんねぇか?」
「イエ、わかりました。ありがとう」

照れも何もない言葉に、こちらが恥ずかしくなってしまいつつリボーンの温もりに身体を預けていれば腰を抱かれてベッドへと移動した。
その間もちゅっちゅっとキスを繰り返して、甘い雰囲気に全部を預けてしまいたくなる。

「ほんと、俺に甘いよな…リボーンは」
「お前も、俺と遜色ないだろ」
「そうかな?俺はまだ理性的だよ」
「自覚がないのは、問題だな」

くっくっと笑って言われて、俺はむっと唇を尖らせた。
自覚がないってそんな俺はリボーンを甘やかしていないぞ…多分。
二人きりの時は少しばかり、許してしまうだけだ。
ベッドに押し倒されて、身体を密着させてくる。
さっきは拒んだけど…今はいいや。
なんでも許してしまう気分になりながら、結局リボーンがつけあがらせてしまうことをしているのは自分なのだと気付くのはもう少し遅くなりそうだ。



END
For You
リボツナで先生がツナにすごいベタ惚れでツナがちょっと困ってるくらいの話、でした。
ベタ惚れになってたでしょうか。
ちょっとやり過ぎてしまった感じがしているので、ちょっと不安です。
気に入らなかったら書き直し本人様のみ受け付けていますのでいつでもどうぞ(笑)

素敵なリクエスト有難うございましたっ。




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