悪い夢

暗く沈む意識の中、見えた光はお前だった。
俺の中の光。
振り返るツナは笑顔だった、いつも俺に見せる笑顔。
俺はここがどこかもわからないまま、ひたすらツナに向かって歩いていた。
他に行く場所もなく、そもそもこの世界は真っ暗で形を成していなかった。

『ツナ…』

声をかけても反応はない。
俺を見ているはずなのに、ツナからは声が聞こえない。
俺は柄にもなく不安になってツナに近づこうとするのに、一向に近づけない。
歩けば歩くほど、焦りは募って手を伸ばすのに触れることさえできない。

『ツナッ!!』

置いて行くなと叫びたくて、けれどそれはどんどん遠ざかっていく。
伸ばした手は届かなかった。
そのまま、俺の手は空を切りビクッと身体が震えた。





目を開けると、暗い室内。
目の前には見慣れた天井があった。

「………はぁーー」

今までのが全て夢だとわかれば心底安心して、詰めていた息を吐きながら額を押さえた。
全身汗を掻き、無駄に煩い心臓を押さえるように手を置いた。
隣には、ツナがいない。
今日は珍しく自室で寝ているのだ。
いつも一緒に寝るわけではない。
当然、俺には俺の仕事がある時があるしツナが寝ているところへ無理に入ることはしない。
気分によって、だが。
今日はたまたまツナが徹夜するから起こすの嫌だしと自室で寝たのだ。
けれど、今の夢を見てしまえば再び一人で寝ることも難しい。
時間を見れば、深夜…でも徹夜ならツナはまだ起きているかベッドに入ってもまだ起きている時間帯だ。
俺は起き上がるとベッドを抜け出した。
一刻も早くツナに触れたい。
触れて、そこにいると…確かめたい。
ツナの部屋の前に来るとノックをする。

「あれ?リボーン?」
「ああ、ちょっと眠れなくてな」

気配で気付いたのだろう、ガチャリと開いたドアから顔をのぞかせるツナはいつもどおりだ。
そして、今から寝るところだったのだろうボディーソープの匂いがした。
ツナはそのまま中に招いてくれ、寝室に入る。

「結局一緒に寝るの?」
「嫌か?」
「違うよ、俺が気を遣ったのにリボーンが我慢できないなんて珍しい」

いつもは俺に好き勝手するなって言うくせにと笑ってベッドに乗り上がる。
俺もベッドにあがればツナを押し倒してキスをした。

「んんっ…ふっ…」

ツナの存在を確かめるように強く、乱暴になってしまうのは仕方ない。
それでもツナはどこまでも優しく受け止め、舌を絡ませれば甘く絡ませてくる。
まるで包み込まれているようだ。
夢中で唇を吸っていれば、ツナの腕は俺の背中に回されて宥めるようにゆっくりと擦る。
唇を離せば、俺達を銀糸が繋いだ。

「はっ…やらしい…」
「ツナがだろ」
「リボーンもだよ」

くすくすと笑ってツナはちゅっと頬にキスをしてから俺の服を脱がしていく、胸に触れて何かを察したツナはちゅっと鎖骨の辺りにもキスをした。

「嫌な夢でもみた?」
「的確だな」
「こんな汗かくことなんて、そのぐらいだろ?」

的中させてきた予測の早さに俺は苦笑いを浮かべた。
ここまで察し良く育ってしまったのは誤算だったな。
もう少し鈍感でもよかったかもしれない、と思いつつこれが実践で役立つことはあまりない。
つまり、こいつは俺にばかり察しが良いのだ。
隠し事もたまに見破られるし、こうしたこともあまり誤魔化しはきかなくなってきている。
ぺろりと舐めてしょっぱいと笑う。
けれど、嫌がるそぶりは見せず俺の手をとると自分の肌へと招いた。

「次は、嫌な夢見ないように気持ち良くなって?」
「お前、その誘い文句はどうなんだ?」
「あれ?萎えてないけど?」

くいっと膝を曲げて確認してくるツナに俺は思わずひっぱたいてやった。
どこまでデレカシーを捨ててきてしまったのだろうか。
やっぱり育て方を間違えた…。
俺は舌打ちをしたくなりつつも、俺からも膝をツナの股間へと押し当てたらしっかりと反応していた。
つまり、そういうことだ。

「自分がやられるまえにやるたぁ、いい度胸だ」
「あっ…やめっ、ぐりぐりすんなっ…あぅっ」

にやりと笑って膝をそのまま押し付けていれば、そこはみるみる硬さをもち次第に腰を押し付けてくるようになった。
そして、ツナの服を脱がし下着姿にして胸を舐めた。
風呂上がりだからか洗いたての匂いがしてそれにますます興奮する。
ちゅっと音を立ててキスをして、そのまま吸い上げた。
舌でチロチロと先端を撫でて、時に強く押し付ける。
そのたびに開かせた足を立て腰を俺の太ももへと擦りつけてくるのだ。

「やらしいぞ、ツナ」
「う、うるさい…そこ、ばっかぁ…」
「どこしてほしいのか、言えるだろ?」

口を離して下を覗き込むと下着の一部が濡れて色を変えていた。
そこに手を置き重点的に撫でてやると艶を帯びた甘い声がツナの口から溢れる。

「あっんんっ…ふぁっ…もっと、もっとぉ…」
「このまま、出すか?」
「やぁ…ぬがせて…」

一度は離した手を再び俺の背中にまわしてぎゅっと抱きつき、熱い吐息を耳へと吹きかけてくる。
俺は言葉のままに下着を脱がせ、自身を扱きつつ、秘部へと指をいれた。
ツナの身体は少し乱暴にしても痛みを伴わないのか気持ちよさそうに喘ぎを漏らす。
そうして、ある一点を押し込んだときびくっと身体が震えた。

「ここだな」
「うあぁっ…ひぁっ…りぼーん、りぼーんっ…そこ、そこぉ」

カクカクと腰が揺れ、淫らに内壁がうねる。
だが、それだけじゃ満足できなかったのだろう、ツナは俺の頭を胸へと押し付けてきた。

「舐めてほしいのか?」
「んっん…なめてぇ、かんで」

要望のままにしてやればツナは俺の髪をかき乱しつつ、ビクビクッと身体を震わせた後白濁を放った。
そうして、力が抜けたのかぱたりと腕がベッドを滑る。


「まだこれからだぞ」
「いいよ、きて…おく、きてぇ」

充分にほぐれたそこに自身を宛がうと一気に突き上げる。
息をつめたのは一瞬、そのまま動き出せば声を漏らす。
声を抑えるなと教えた通りに素直な声が口から洩れる。
それがとても愛しいと抱き寄せれば優しく頭を撫でられた。
くしゃくしゃと、行為中にも関わらずだ。
似つかわしくない接触にツナの顔を覗き込めば優しく微笑んでキスを強請るように薄く唇を開ける。
吸い寄せられるようにキスをして、それでも動きは止めないまま声はくぐもって漏れた。

「んんっ…ふぅっ…っ…はっ」
「…ツナ、つな…」
「ん…リボーン、俺はここにいるよ」

唾液を絡ませての激しいキスなのに、なにかが足りなかった。
もっと身体を埋めるほどの何かが欲しい。
さっき見た夢のせいで、心が冷え切り寒いまま。
もっと欲しいと貪るように身体を貪った。
ツナはずっと俺の好きなようにさせ、時には自分から腰を振って見せた。
どこまでわかっていてそんなことをしているのだろうか。
時々、ツナの成長が怖いと思う自分がいるのにとても愛しい。
どこまでも俺に染まってしまえばいいと、思う。

「ツナ、すきだ…好きだ」
「愛してる、ねぇ…俺は、傍にいるから」

お互いに感じさせながら俺は最奥へと白濁を放ち、ツナも同時に果てていた。
充足感が俺を満たし、中から抜けるとツナは柔らかく笑う。

「リボーン、キス」

求められるまましてやれば、甘い舌が絡みつく。
好きなだけ吸って、離れた時には指を絡ませて握られた。
お互いに汗まみれになって、結局もう一度シャワーを浴びて、再びベッドの中に入れば心地いい睡魔に襲われる。

「もう、寝れそう?」
「そうだな」
「なら、よかった…」

ツナは俺の胸に身体を寄せて俺を見つめてくる。
視線を合わせてやれば、そうやっていてくれないと困ると苦笑い。

「なんだ、それ」
「だって、拍子抜けして…ちょっと、かわいいなって思うじゃん」
「あのな」
「しょうがないだろ、惚れてるんだから」

惚れた以上、相手のどんな仕草にでも惚れ直すんだとツナは自棄のように言ってもう寝るっと勝手に拗ねてしまった。
俺はそれに笑って、優しく髪を梳いて次は幸せな夢が見れますようにと、そっと願って目を閉じたのだった。

傍にいないだけで不安になるほど…はまり込んだつもりはなかったはずなのに。
いつの間にか、ペースを全部持っていかれている…。
とんでもない奴を育ててしまったと、思うと同時にそれは後悔には結びつかない。

それほど、俺も惚れこんでいるのだと…思い知った。





END
For You
ツナが精神的に強い(しっかりしてる)感じのリボツナ、でした。
リボーンが精神的に弱っている、とも書かれていたのでそれもつけ足してみましたが、どうだったでしょうか。
満足いただけたら幸いです。
苦情はご本人様からのみ受け付けていますので、いつでもどうぞ。
書き直しもいたします。

素敵なリクエスト有難うございましたっ。




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