疲れているお前に…
ふらふらしている背中。
いつものパリッとしたスーツはそのままに、後ろ姿がすごく疲れているのを教えてくる。
ここ数日リボーンは仕事に追われていた。
まともに俺の相手もできないほど、疲れているんだと思う。
俺がいる前ではあまり疲れた表情を見せないが、一人でいるときはホントに疲れているのだ。
「このええかっこしい」
俺の前でかっこつけるなんてばかだろとため息を吐いた。
普通恋人の前では力を抜くものだろう。
何を一人で背負いこんでいるのだろうか。
俺の前でくらい力を抜いてくれてもいいのになぁ。
何年一緒にいると思っているんだろう。
「リボーン」
「ん?どうした、ツナ」
背中に声をかけるとピクリと反応して振り返った時にはいつもの顔。
これじゃあ、俺が何のためにいるかわからないじゃないか。
「これ、どうすればいい?」
「ああ、それは雲雀だ。ついでだ、おいてくるか?」
「え、ホントありがと」
書類を渡してリボーンはそれを確認するとそのまま執務室を出て行ってしまった。
そして、暫くして俺はいつものように対応してしまったことに机に突っ伏した。
「違うだろっ、もう…なんとかしてリボーンを休ませてやらなきゃ…」
そう思ってリボーンの机の上を見る。
少し残っている書類、椅子から立ちあがってそれを確認する。
俺にでも処理できそうなそれに、ちょっとだけやるつもりで手を出した。
これで少しは早く仕事が片付けばいいと思う。
リボーンが帰ってくるまでに終わらせてそれを隼人に渡した。
そして、帰ってきた頃に驚いてリボーンは机の上を探し始めた。
「あれ?さっきの書類なら隼人に渡したけど…」
「ばかっ、あれ極秘情報は言ってんだ俺のとこにおいとけばいいやつっ」
「うえっ、ごめんっ」
俺のおせっかいのせいでリボーンを二倍働かせてしまった。
隼人がいったすぐあとだったので、大事には至らず書類はすぐにリボーンの元へと戻ってきた。
けれど、リボーンの疲労はますます酷くなったようだ。
「ごめん、リボーン」
「悪気がないなら別にいい、お前は自分の仕事してろ」
俺の方は自分でやれるからと諭されて俺の机の上の書類を指さしてきた、確かに俺の仕事もまだ残っている。
俺は仕方なく自分の席に戻り自分のものに手をつけ始めた。
仕事をしながら考える。
どうしたら、俺はリボーンにリラックスしてもらえる時間を与えられるのだろう。
珈琲でも淹れてやろうか…まだ満足できるものは淹れてやれたことはないけれど…。
リボーンに喜んでもらいたい。
少しでも、安心してもらいたい。
俺はいつもほっとさせてもらってるし、たくさん優しくしてもらってるから、少しでも返せたら良い。
リボーンが安心してよりかかれるように、なりたい。
仕事を終えると俺は我先にとリボーンの自室へと向かった。
豆を挽いて湯を注ぐ。
前にリボーンが教えてくれた方法で美味しい珈琲を淹れた。
俺は苦くて飲めなかったのだが、この苦さが良いのだとリボーンは言って、本当に美味しそうに飲んでいたんだ。
リボーンの気配が近づいてきたかと思えば俺はドアを開けた。
「ツナ、先に行ったかと思えば俺の部屋にいたのか」
「うん、リボーン最近疲れてそうだから…珈琲」
「そうか、ありがとな」
カップを差し出してやればすぐに飲んでくれて、飲んだ後に俺の頭を優しく撫でてくれた。
俺はほっと顔をほころばせて、次の瞬間にはハッとなる。
違うって、なんで俺が安心させられてんのっ。
リボーンの肩を掴んで反転させると背中を押した。
「なんだ、ツナ?」
「お風呂、入って背中流してあげる」
「は?」
驚いた声がして、早く飲んでと急かす。
もう、こうなったらとことんリボーンをリラックスさせてやる。
一人意気込んで、リボーンの服を脱がしていく。
途中まで脱がせたところで、自分で脱ぐと言われて俺は自分の上着を脱ぎ、ズボンのすそをたくしあげた。
「リボーン最近疲れてるだろ?だから、少しでも俺が疲れとってあげたらって思って…」
「…しかたないやつだな」
カップを近くに置いて浴室へと入った。
シャワーを流しながら湯船にお湯をためていく。
ボディーソープを泡立ててシャワーであたたかくなった背中を洗っていく。
リボーンは気持ちよさそうだ。
俺はようやくリボーンをリラックスさせてやれてるなと感じて嬉しくなる。
「気持ちいい?」
「ああ、気持ちいいな…ツナが裸で入ってきたらもっと気持ち良くなってたんだがなぁ?」
「それは…あとで…いまは、ちゃんとしてやりたいんだよ」
大人しく洗われていろと命令しつつ、背中を洗うとスポンジをリボーンに渡す。
「なんだ、全部洗わないのか?」
「っ…ばかっ、自分で洗うっ」
からかわれて早くと急かしてやる、お湯の方もいい具合に溜まってきてるし、そろそろだと俺はシャワーをリボーンの身体にかける。
「はい、入って」
「ツナも入れ」
「一緒に入ったら絶対触るじゃん」
「触るのは当たり前だ」
「だったら…」
「手は出さねぇから早く裸になってこい」
湯船に入ったリボーンは抱きしめるもんないと落ちつかねぇと笑ってくるから、俺はため息を一つ吐いて服を脱いでくる。
湯船に入るとお湯が一気に零れたのに、それに構わずリボーンは俺を後ろから抱きしめ自分の腕に閉じ込める。
ぎゅっと抱きしめられて首筋に深いため息が聞こえれば、リボーンのガス抜きになったかなと安心する。
沢山溜めこんだ疲れが、すこしでも減っていけばいい。
そして、明日にはぴっしりとした背中でいてほしい。
風呂から出るとリボーンの髪を乾かす。
いつもは俺がしてもらうから、俺がするのはなんだか新鮮で、リボーンの髪に指を差し入れるたび嬉しくなった。
「なに笑ってんだ」
「んー?なんでもない」
くすくすと笑い合って、髪を乾かした後は俺は足を伸ばして太ももをたたく。
さすがにリボーンは首を傾げて、何をさせてもらうのか想像できないようだった。
「膝枕」
「そこまですんのかよ」
「恥ずかしいの?」
「っ……わかったよ」
挑発してやれば頭を俺の足へと置いてきたリボーンに案外かわいいところもあるなと笑って、髪を優しく梳く。
俺はこれをやられるとすごく気持ちいいのだけど、リボーンはどうなんだろう。
顔をのぞき込んだら満更でもない顔で目を閉じていた。
「このまま寝てもいいんだからね?」
「誰が寝るか、俺が寝るときはお前を抱きしめてからだ」
さりげないそんな言葉でも嬉しくなるんだから、俺は相当リボーンに愛されてるんだ。
リボーンも俺が愛してるってちゃんと伝わってる?
これは、リボーンの迷惑になってない?
俺はこうされて、すごく気持ち良かったり心地よかったりしたからリボーンにもしてるんだよ。
ねぇ、気付いて…。
「ツナ…」
「ん?」
「キスしろ」
「いいよ」
この体勢じゃ結構きついものがあるが、リボーンのためならと息を吐きながら身を丸めた。
そして、唇にちゅっと口づけたら満足そうに笑みを浮かべていたのだ。
そんなによかったんだろうかとちょっと不思議に思う。
そんなことなら、毎日でもしてやれるのに。
暫くの間、髪を梳いていればリボーンがうとうとし始める。
「ねる?」
「ああ、そうだな」
「じゃあ、寝ようか…明日は、リボーン休みね。仕事は他に任せて」
「あのな、俺がそんな簡単に休んでいいのか?」
「大丈夫だよ、もう何もできない俺たちじゃないし。ゆっくり休んで」
ね?と首を傾げれば、一日ぐらいいいかと笑みを浮かべた。
俺はそれを見るとベッドに入り、すぐにリボーンの腕が身体に絡んでくる。
抱きしめるの、好きだなと笑って好きにさせる。
今日はとことん甘やかしてやろう、なにも考えなくて良いように…リボーンを安心させれるように。
疲れたお前に俺をあげる。
END
あみさまへ
リボーンを甘やかしたいツナ、でした。
ちょっとぐだぐだしてしまったような気がするんですが、ツナがとことんリボーンを甘やかせようと奮闘した結果です←
寝るときに読んでもらおうと勝手に夜の話しにしてみました(笑)←
喜んでもらえたら幸いです。
改めてリクエスト有難うございましたっ。