短時間の逃避行


それは突然の出来事だった。
今開発中の十年前バズーカの効果を試すためにリボーンがここに持ってきたのだが、そこに子供ランボがどこからか現れて、しかも運が悪いことにリボーンに体当たりした挙句、怒られ泣き喚き近くに会ったバズーカを手にとってぶっ放そうとして俺はとっさに身を乗り出した。
子供ランボが十年前バズーカなんてそんなもの使ってみろ未知の世界で何が起こるかわからないだろ。
だから、俺はとり上げようとしたのだ。
けれど、俺は運悪くそこでドジを発揮した。絨毯に躓き、よろけたところとランボを庇って自分が当たったのだ。
まぁ、十年前なら俺だったら問題ないととっさに思っていたのだが、目を開けた時の見慣れぬ景色に俺は首を傾げていた。

「どこだ、ここ」

薄暗く、すこし煙たい空間。
壁には写真が貼ってあって、俺はベッドに寝ていた。
近くのテーブルには銃弾が転がっていて、明らかに俺の部屋でもなければ日本という雰囲気でもない。
どうして自分はこんなところに来てしまったんだろう。
早く帰らなくてはと思うのにバズーカで飛ばされてきたのだからそんなものは知らない。

「誰も、いないのかな…?」

人の気配がしない、生活感はあるから誰かしら住んでいるのだろう。
こんなところにいたらそれこそ不法侵入者だ。
とりあえずここをでようとして、俺はベッドを降りた。
けれど、ドアが開く気配がして俺は身を凍らせる。
ヤバい、どこかに隠れないと…。
とっさに思ったのはそんなこと、ここがどこだかわからない限りは迂闊には動けない。
見つかっても銃を持っている相手だ、こちらは丸腰だしどうにもならない。
俺は近くに見えたクローゼットに身を滑らせた。念のため気配を消して、息をひそめる。

「ったく、今日の仕事もつまらなかったな」

一人はいってきた男、聞きおぼえるある声に俺はまさかと思った。
クローゼットの隙間から外を見る。
見間違いではなかった、リボーンがいた。
なんで大きいんだろう、俺が思ったことはそんなこと。
十年前バズーカ失敗だろうと未来に行くことはない、と思う。
だとしたら、これは誰だ…?
見つめていたら、目があった。
まずいと思ったがもう遅い、いきなりクローゼットが開けられてさっき見た顔が底に会った。

「お前、誰だ…?」
「え…」
「人の家に忍び込むなんて、泥棒か?残念だが、俺はヒットマンなんだ入ったところが運のつきだな」

ちゃきっと向けられた銃口、有り得るはずのない男の行動。
俺は身体から血の気が引くのを感じた。
けれど、少し俺を見た後その男は銃を下ろした。
何だと首を傾げると、ため息を一つ。

「丸腰で俺の家に忍び込むとは馬鹿なのかと思っただけだ。殺す気が失せた」
「っ…あの、名前は…?」
「まず、お前から名乗れ」

何が何だか分からないけれどリボーンは俺を知らないらしい。
別の次元に飛ばされてしまったのだろうか。
そうしたら説明がつく。
けれど、どうしてこんなところに…。

「さわだ、つなよし…」
「ツナヨシ…ツナ…ジャッポーネの名前じゃねぇか」
「あ、うん…日本人だから」
「イタリア語もできるとは、お前何者だ?」
「その前に、名前」
「リボーンだ」

やっぱり、リボーンだった。
そして、次に俺が確認するべきことは新聞だ。
立ちあがるとリボーンの脇をすり抜け新聞を確認した、イタリア語は読めないが日付を見ることはできる。
自分が生きていた時間よりはるか昔だ。
そして、リボーンのこの姿…もしかしたらアルコバレーノの呪をかけられる前に俺は飛ばされたのかもしれない。

「なんだ?」
「いや…なん、でも…ない」

これは、どうすればいいんだ。
殺されるのだけは免れたが、下手をすればすぐにその危機は訪れるだろう。
リボーンに未来では恋人なんだと教えたところで信じてくれるはずもない。

「で、お前家は?」
「どこにもないんだ」
「は?」
「ここじゃ、俺の居場所がないんだ。だから、俺がいる間ここに住まわせて、欲しい」
「言っただろ、俺はヒットマンだ。足手まといいらない、早く出ていけ」

リボーンの冷たい言葉に俺の心臓が締めつけられた。
本来なら向けられることのない嫌悪を含ませた侮蔑の言葉。
これが、本当なんだ。リボーンがこういう男だということはよく知っていた、けれどそれが自分に向けられるなんて…。
俺は溢れそうになる涙をこらえて俯いた、出て言った方が良いこれ以上近くにいるのは辛い。
けれど、何もない俺には泊るホテルでさえ行くことはできない。

「リボーン…」
「なんだ、気安く呼ぶな」

違うよ、俺が呼んでいるのは、お前なんかじゃない。
優しい、俺を甘やかして上手に叱ってくれる俺の元家庭教師の恋人…。
五分以上経っている、どうして戻らないのだろう。
故障なのは見るからにわかっていた、こんなところに一人取り残されてしまうのだろうか。
そんなのは、嫌だ…。
もう一度会いたい、どうしてリボーンじゃないんだろう。
帰りたい…。

「……早くしろ」
「無理、だよ…だって、俺、何もないもん」

必死にこらえた涙は隠しきれただろうか。
笑って言ったのにリボーンは何も言うことはしなかった。
その代わりに俺の身体をまさぐってくる。
身体を上から下に、性的なものは感じることはなく何かを探しているようだと思った。

「な、なにっ!?」
「何も持ってねぇな」
「持ってないよ、自分でも悲しくなるぐらいに」

なんでボスなのに銃一つぐらい持ってきていなかったのだろう。
自分の馬鹿さが現に呆れるが、それでも良い環境を作ってくれていたのだ。
そしたら、リボーンは舌打ちして俺をベッドに突き飛ばした。

「うわっ」
「大人しくしてろ、俺はそこまで冷たい人間じゃないからな…行くところがなければここにいりゃあいい…ただし、だすもんは出してもらうがな」
「はっ…!?なに、なにするんだよっ」

リボーンは俺に覆いかぶさってきたかと思えばいきなり俺は身体を押さえつけられた。
そして、同一人物だけど全然違う男の顔が近づく。
キスされそうになってとっさに顔を逸らした。
いくら同じだからといっても違う。
俺が許したのはあのリボーンだけだ。

「ここにいられなくなってもいいのか…?」
「それは…だけど、俺はあいつしか…いやだから多分アイツ以外はダメだ」

身体がそもそも受け付けることはしないだろう。
現に押さえつけられている腕には鳥肌がたって、キスされると想像しただけで嫌悪感が溢れてくるのだから。
逃げようともがく、ここにいるぐらいなら…さっさと逃げてしまおう。
大体いつ帰れるのかわからなくてもそこらへんで野宿してやり過ごしていれば時間などすぐに過ぎていくだろう。
リボーンの近くにいたら、危険だ。
それに、これ以上そうやって俺に酷くするリボーンを見たくなかった。

「放して、俺すぐにでていくから…」
「嫌だといったら…?」
「は?…やだっ、俺は…リボーンに会うんだ、リボーン」

リボーンの問いかけに信じられない気持になって必死に腕を動かす。
それなのに、力は込められていくばかりで離れる気配がしない。
怖い、ヤダ…リボーン、りぼーん

「誰を、呼んでるんだ。リボーンは俺だけだっ」
「やっ、やめっ…」

服を引かれて破かれる、恐怖に身体が動かなくなった。
情けなくも涙が溢れて、泣きだし、嫌だと叫んで抵抗した。
そのときだ、俺の周りを煙が包んだ。
リボーンは驚いて俺から手を離し、俺はそのまま意識を飛ばした。




「…な、つな…ツナッ」
「…ん……」

頬を叩かれる感覚に俺は意識を浮上させた。
目を開ければリボーンの姿、俺は一瞬驚いて顔をこわばらせたが周りを見渡せばそこが俺の世界だと気づく。
戻ってきたんだ。
安心して、また涙が溢れた。
手を伸ばして、自分からリボーンに抱きつく。

「こわ…こわかった…こわかったっ…ふっぅ…」
「大丈夫だ、もう戻ってきたからな」

ぽんぽんと背中を擦られて温かいそれにまた涙が溢れた。
あのときと全然違う、俺へのきもちも扱い方も。
何もかもが違って、ぎゅっと握りしめた背中はどんなにしようと離れることはなく俺が落ち着くまでしっかりと抱き返してきた。

「ったく、自分から飛び出すからだ、ドジしやがって」
「ごめ、もう…しないから、なでて…撫でてて」

もうこれしか、いらないとばかりにそれしか欲しくなかった。
あんなのはリボーンじゃない。
いや、確かにリボーンではあるけれど…でも、俺のリボーンは今目の前にいる俺を甘やかす男だけだ。
泣き続けて落ちついてきた頃には優しいその腕の中で眠っていた。
不意に出逢ってしまった、リボーンの原点。
確かにリボーンだったけれど、でも、もう一生会うことはないんだろう…。
俺にはこいつしか、本物じゃないんだから。






END
えりんぎさまへ
リボがアルコになる前にツナがタイムスリップする話、でした。
こんな感じを妄想しましたがよろしかったのでしょうか。←
気に入ってくださるとうれしいです、満足できなかったら書き直しますのでっ。

改めまして、リクエスト有難うございましたっ




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