長く離れている時間
誰のことを考えているか、なんて
そんなのすぐにわかるだろ。
倦怠期はどこですか?
山のように積み上がった書類に目を通してしまうと俺は最後の書類に判を打ち大きなため息を吐いて机に突っ伏した。
「骸ぉ…おわったから、雲雀さんのところもっていって」
「あのですね、僕は今ほんの一秒前まで任務に行って帰ってきてこの部屋のドアを開けたばかりなんですが」
「いいから、ほら…雲雀さん待ってるんだって」
きっとイライラしているんだろうなぁと思いつつ、そんなところに骸がいけばどうなるか…なんて、そんなの考えるまでもないだろう。
書類の封筒をばさばさとやって振ると、するりととられた。
持って行ってくれるんだなと顔をあげればとても不本意そうな顔。
「ありがとう、骸」
「ボス命令なので」
ひらりと振って今来たばかりなのにお使いに出てくれる骸に笑顔を向ければくふふと笑った。
「アルコバレーノと、雲雀恭弥と…どちらがましかと言われれば…それは明白でしょう?」
「…お前」
一言余計だ、と言いながら出て言った骸に小さく呟いた。
まったく、表面上は仲良くやれているが、根本的なところでの意思の齟齬が発生している。
そこも含めて、このファミリーは団結力があるとは思っているが。
とりあえず、壊れるのは雲雀さんの方の部屋になるから良いかと楽観的に考えていた。
それもいつものことだ、なんの変哲もないボンゴレファミリー。
ただ、今はリボーンがいない。
骸と同じく任務に出ていて今日帰ってくる予定だ。
俺は大きく伸びをして、立ちあがった。
時間を見ればもう日付が変わってしまうころ。
あまり長く起きていてもリボーンに怒られる。
ずいぶん前になるのだが、リボーンが帰ってくるまで起きていたとき本当に怒られたのだ。
それはもう子供に叱るような感じで。
さすがに恥ずかしくてそれ以来俺は、リボーンを待つことはなく寝る時間と決めた時間にはしっかりとベッドに入るのだ。
執務室を出ると自分の部屋に向かった、備え付けのバスルームに入り身体を洗う。
「うう、眠い…」
お湯に浸かっている間に眠くなりながらも温まってふらふらとしながらベッドに向かえば、そこにリボーンがいた。
「あ、りぼーんかえってきてたんだ」
きょとんと首を傾げれば笑みを浮かべて両手を広げてくれるから俺は遠慮なくその腕の中におさまった。
「ただいま、ツナ」
「おかえりぃ…もうすこし遅くなるかと、思った」
「ああ、さっさと片付けてきたからな」
背中を撫でられて、スーツに顔を擦りつけるようにすれば、汚れると離された。
せっかくリボーンを感じていたのにと不機嫌になると顔中にキスをしてくれた。
「んっ…リボーン、俺…ねるよ」
「シャワーだけ浴びる。どうする?」
「まってる」
待ってられるのか?とからかわれながら耳をくすぐられて首をすくめれば甘い声が漏れる。
「大丈夫だもん…はやく、入ってきて」
あまり触るなとベッドに顔を埋めた。
いってくる、と頭を撫でられて離れていく体温が恋しい。
ベッドは少し冷たくて、リボーンがいたところが温かかったからその場所に丸くなった。
ベッドの中に入ってしまえば寝てしまいそうで、しばらくその格好のまま待ってみようしていたのだが、シャワーの音が聞こえてくれんばその音が心地よくますます睡魔を促進してきた。
「リボーン、はやく…ねる…」
無理に起きていることもできなくて、このまま寝て明日朝にリボーンがみれればいいかななんて思い始めた。
意識が遠のく、目を閉じているせいですぐに夢に落ちてしまう。
ぎしりと音がして俺の意識が浮上した。
けれど、瞼を開けるにはまだ足りない。
「寝たのか?」
優しく髪を梳くリボーンの指先。
心地いい隣、ここにいるために俺はどれだけリボーンに我儘を言っただろう。
そして、どれだけ努力しただろう。
俺じゃないと嫌だと言って困らせた気もするし、それなりに勉強もして、こうして当たり前のように甘やかされている。
それでも、まだ俺はリボーンの小さな仕草に胸が落ちつかなくなったりする。
リボーンに飽きる日なんていつくるんだろうか…。
「仕方ねぇな」
呆れたように言うのに嫌な気配はせず俺の身体がふわりと浮いた。
ベッドの中へと入れられている気配に俺は両手を伸ばしてリボーンに抱きついた。
目を閉じていても近くにいるのは気配でわかるし。
「起きてんのか」
「ん、今…おきた」
ボディソープの匂いと温まってきたからかほかほかとリボーンの身体は温かかった。
そうして、抱きついていれば背中を引き寄せられ、抱きしめられる。
近くなったリボーンの顔に俺の胸は高鳴った。
耳元に息がかかる。
俺は背中に小さく爪を立てて抗議するも、リボーンは聞いてくれない。
「俺、眠いよ?」
「少しぐらい、関係ないだろ?」
「そういう…ことじゃないんだけど、なぁ」
今日はなんだか甘やかされたい気分だ。
身体の力を抜けばベッドに再び沈み込む。
「寝ようよ」
きゅっとリボーンの手を握って引き寄せる。
見つめると仕方ないなとため息が聞こえて、疲れてるくせによく体力が残ってるなと苦笑を浮かべた。
そうして、隣に寝転ぶと腕を差し出してくるので、頭をあげた。
腕枕をされて優しく引き寄せられる。
胸に顔を埋めるようにされるとぐっと近くなって静かになった心臓が煩くなる。
「っ…」
「ツナ、我慢できるのか?」
「お前、卑怯だろ」
耳元で囁かれて吐息を混ぜられ鼓膜を震わせる。
そんなに含まされた声で言われたら我慢も何もないだろ。
恨みがましくリボーンを見つめれば甘い唇が触れてくる。
そんなんで絆されると思うなよ。そう思うのに、何度もされるとつい、気が緩む。
「ツナが俺に甘いんだぞ」
「そんなこと…」
「ないってか?」
言いきれるはずもない。
だって、明らかに俺の方がリボーンに惚れてるんだから。
「ああ、もう…ばか」
「ばかは、どっちだ」
もう、なんでもいいと俺は囁いて疲れているはずの身体をあげて、リボーンの後頭部を引き寄せ唇に噛みついたのだった。
離れた時間の分だけ、愛おしさが募って
触れるたび乱される。
新しい気持ちで、愛を伝えて。
END
イドさまへ
リボーンの仕草や声でドキドキするツナ、でした。
ツナがドキドキじゃなく、こっちがドキドキしましたいろんな意味で←
若干リクエストに添えてない気がしてならないのですが、気に入らなかったら書き直させてもらいます。
改めてリクエスト有難うございましたっ。