突然の来訪者

最近気づいたことだった。
綱吉の夢を見てからと言うもの、あのかわいらしい顔が忘れられない。
かわいらしいと思っていること自体問題だ。
俺はどうすればいいのか悩んだ。
すごく悩んだ。
この馬鹿な俺がだぞっ!?
男同士とか、むしろその近くにいる奴の存在とか。
だが、俺の辞書に冷静になれと言う言葉はなかった。
だから、俺はここに来た。
ボンゴレファミリー…俺は門を叩いていた。
そのうち出てきた部下に話を伝えると中に通してもらう。
そうして、執務室の前。
俺は一人でいけると言って、ここまで来た。
閉ざされた扉の前で深呼吸する。
吸って、吐いて…。
手には、綱吉の機嫌を損ねた時のためにケーキを…俺は胸を張りドアを開けた。

「あぁっ…りぼ、誰か…きた、ら…?」

ドォンッ
最初に目に入ったのは、乱れ気味の綱吉の服。
そして、その上にのし上がっているリボーン。
俺がヤバイと思う間もなく、リボーンの銃声が火を噴いた。

「ひぃっ!?」
「なんだ、スカルか…アホ牛かと思ったぞ」
「ばかっ!!もう、離せよっ」

俺は慌てて銃弾を避けたが、頬を掠ったそれを見れば見事に実弾だ。
まぁ、俺相手にリボーンが手加減してくるはずもないことは重々承知だ。
ただ、実弾はやっぱり…ほら、アレだろ?

「なんだ、言いたいことがあるならはっきり言え」
「いいえっ、なんでもございません!!」

俺は両手をあげて思わず敬語になると、リボーンが銃を下ろすのを見つめた。
その間に綱吉は乱れた服を整えていて、何をしようとしていたかなんて聞かなくてもわかる。
本当に手の早い奴だ、こんな昼間から…。

「で、何しに来やがった。パシリの分際で」
「パシリって言うな!!俺はただ」

俺はつい言いかけて口を閉ざした。
リボーンに綱吉に会いに来たんだという必要はどこにもないはずだ。

「お前、まさか何もなしに来たんじゃないだろうな?」

暗に行為を中断されて怒ってるらしい。
綱吉を見れば、またやってるよと言うあきれ顔だ。
このままだといけないとわかった俺は隠していたケーキを出した。

「こ、これを持ってきたんだ」
「ケーキだっ」
「ツナ、安易に受け取るなこいつのことだ。何かまた変なこと考えてるのかもしれないだろ」
「えーだって、美味しそうだし…いいじゃん、ケーキに害はないから」

差し出したケーキを綱吉は嬉々として受け取ってくれた。
俺は嬉しくて勝ち誇った顔になるとリボーンはチッと舌打ちをしてソファに座った。
あれ、でもこれって…。
ここまできて俺は重大なことに気がついた。
だって、明らかにリボーンはここにいることになってしまう。
そして、その中での邪魔者と言えば…俺だ。
二人の時間(?)を邪魔した挙句、ケーキを持ってきたのは俺とは言え居座っていたらまたリボーンにどやされそうだ。
どうしようかと視線を彷徨わせているとさっそくケーキを皿に出した綱吉が戻ってくる。

「あれ?何してるの?座ればいいのに」
「え、俺ここにいてもいいのか?」
「へ?だって、ケーキくれたし、一緒に食べようよ」

綱吉が笑顔で言ったその言葉に俺は感激した。
この世界にこんな人間がいるのかっ。
俺はついケーキを置いたツナの手を握りしめて目を輝かせた。

「あんたは天使かっ!?」
「えっ!?」

ドンッ
途端俺の頬を銃弾が再び掠めた。
いや、だから実弾じゃねぇか。
俺はとっさに綱吉から離れて難を逃れた。

「何すんだ!!」
「俺のもんに手ぇ触れてんじゃねぇ」
「手出すなじゃなくて触るななの!?どんだけ心狭いんだよ」
「あはは、リボーンの心狭いから」

俺が喚くのもしらずに綱吉はいつもの調子だ。
え、これが普通なのか!?
こんなにこいつ沸点低かったのか!?
俺は信じられない気分でリボーンを見ればふんっと鼻を鳴らしている。
……なに、この何もかもわかっちゃってる二人。
元からこの間に入れるとは思っていなかった。
もっと言えば、リボーンはともかくとして綱吉の気をこちらに向けさせることも無理だと思っていた。

「ほら、ケーキ食べようよ」
「あんた、こんな生活…嫌じゃないのか?」

綱吉に促されて俺は仕方なくソファに座るが、何もなかったかのようにフォークを片手に手を合わせて食べ始める。
男三人でケーキをつつくなんて、結構シュールだ。

「嫌じゃないけど…普通じゃないの?美味しいっ、これいいね…どこのケーキ?」
「ああ、カルカッサファミリーの近くにあるスイーツの店で買ってきたんだ」
「ふぅん、じゃあ今度リボーンよろしく」
「…仕方ねぇな」

嫌じゃないと言うことに驚く前に、ケーキを美味しい美味しいと食べる綱吉を見ていたらもうどうでもよくなった。
リボーンは面倒臭そうに、けれどしっかりと頷いているし、こういうことが頻繁にあるのだろう。
ここまで甘やかせるのは惚れこんでいるからだ。
とことん綱吉には甘いんだなと感じて俺は意外そうにリボーンを見つめた。
リボーンはリボーンで甘さ控えめのものを割り当てられていて綱吉はよく見ているんだなと感じる。

「何見てんだ、パシリの癖に」
「いや、リボーンでも誰かのために何かしてやることがあるんだなと思って」
「……悪ぃか」

開き直りか。
別に良いけど、リボーンがここまで丸くなれるものを見つけたと言うのなら、俺までに無駄な飛び火がなくていい。
そう思うことにした。
ケーキを食べ終わるなり、俺はそれじゃあなと立ちあがった。

「ケーキありがとう、スカル」
「良いってことよ、こんなに喜んでもらえるとは思ってなかったからな」

声をかけてきた綱吉に笑みを向けて、俺は執務室の扉を開けた。
そうして、俺はボンゴレファミリーを後にしたのだ。
ヘルメットをかぶり、バイクにまたがる。
そうしてみて初めて気がついたのだ。

「あれ、俺なんのためにここにきたんだ?……あーっ、告白しに来たんだった」

すっかり目的を忘れて楽しんでいたのを思い出せば俺は項垂れるしかない。
いや、だが結局のところ俺が告白したところで答えは明白だ。
綱吉はリボーンにぞっこんだし、あのリボーンですらもあそこまで惚れこんでいる始末。
間に割って入ることはおろか、無理やり奪うこともできまい。

「ってことは、俺はただケーキを届けに来ただけかっ!?」

本当に何がしたくてここまで来たのだろう。
何のために、リボーンの銃弾を二発も避けたのか…。
いや、今回の目的を遂行したら銃弾は完璧に自分の心臓を貫通していただろう。
ああいうのは、無駄に手を出さないに限るのだ。
まぁ、あれだけ綱吉が喜んでくれたのなら嫌われるよりましだと…そのとき、俺は思っていたのだった。




「あー、ケーキ美味しかったね」
「まあまあだな」
「リボーンには甘すぎた?」

スカルが帰った後俺はケーキの皿を片づけていた。
ついでに飲みものをとリボーンには珈琲を淹れた。

「俺にとってはどれも甘いぞ」
「そう?あまり甘くなさそうなの選んだのにな」

まだ箱にはケーキが余っていてリボーンが言うなら、残りは全部俺が食べてもいいのだろう。
嬉しくなりながら中のケーキをしまって、明日食べようと冷蔵庫へとしまった。

「あれ?そう言えば、何事もなく帰っていったけど」
「ん?」
「スカルって、何しに来たんだろうね。わざわざケーキをと届けに来てくれた…ってことは考えにくいけど」

何もすることなく帰っていったスカルを思い出せば首を傾げる。
リボーンは何を言うでもなく珈琲を飲んでいる。
大体、リボーンがあんな風にしなければスカルはスカルの目的を遂行できたんじゃないんだろうか。

「リボーンのせい?」
「はぁ?こっちはアイツのせいで中断してんだぞ、こっちからすればアイツのせいで何もできなかったんだろうが」

忘れたなら自業自得だ、と切り捨てるのを見て俺はさっきのことを思い出しつい忘れていた羞恥を思い出す。
つい、昼間だと言うのに身体を許してしまいそうになった。
残念だと思う反面丁度よかったと安堵したのもあったのだ。
これで、仕事に戻れる。
そう思った瞬間後ろに感じる熱に、俺の動きは止まった。

「逃げられると思うなよ?」
「そんなぁ…」

自分のしたいと思ったことに関しては逃がしてくれない恋人の囁きに俺は心の底から嘆きの声をあげたのは言うまでもない。




END
あみ様へ
リボツナ+スカル、でした。
もう、本当スカルがちゃんとスカルになっているかすごく心配なんですが、結構楽しんで書いてました。
想像してるスカルはもう少し違うんですけど…とかありましたら、気軽に言って下さいね。
誠意を持って書き代えさせてもらいますです。
いつもコメントありがとうございますっ。
そしてそして、リクエストもありがとうございます。
こんなものでよかったら、受け取ってやってください。
これからも、よろしくお願いします。




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