許せないこと

任務から帰ってくるとツナは獄寺と話していた。
けれど、俺を見るなり笑顔を向けてくる。

「帰ったぞ」
「おかえり、お疲れ様」

報告書をツナに出してやればそれに目を通して、そうして机に置いた。
それだけで獄寺に視線を戻してしまう。
…しかたない、獄寺と先に話していたのだからこちらを優先できなくても仕方ないことなのだ。
俺は自分に言い聞かせるように心の中で自制という呪文を唱える。

「シャワー浴びてくる」
「うん、いってらっしゃい」

言い捨てるように言った言葉にしっかりと返事が返ってきて俺は笑みを浮かべた。
ツナが俺の存在を忘れて誰かとの話を優先することなどあり得ないんだ。
そう自分に言い聞かせて自室へと向かった。
汗を流すためにすぐにバスルームへと入り、シャワーを頭から浴びた。




すっきりとして執務室に顔を出したが、もう誰もいなかった。
時間を見ればもう終わって良いころ合いだった。
ツナの部屋かと足を向ければ廊下でクロームと楽しそうに話している姿を見つけた。
もう骸の力を使わなくてもよくなったクロームは最近活発に任務をこなしたりショッピングを楽しんだりと女性らしさが増してきている。
そして、クロームは秘かにツナを慕っていることも…だ。
浮気なんて考えるだけ馬鹿だと俺の中の誰かが言った気がした。
けれど、勝手に歩き出す足が止められない。

「おい、ツナこんなところで何してんだ。話しがあるって言っただろ」
「え?そうだっけ?」
「そうだぞ、すまねぇなクローム」

適当なことを言ってツナの身体をツナの部屋へと押した。
ツナは戸惑いながらもさっき獄寺と話しながらだったから聞き流したのだと勘違いしたのだろう大人しく部屋までくれば俺はほっと溜息を吐いた。

「で、話ってなんだよ?」
「あ、いや…それは…」
「綱吉、少しいいかい?」

ツナに問い詰められたところで上手く言葉が出てこず、どうしようかと迷っていたところ雲雀の声が聞こえた。
ノックもなしに部屋に入ってくるとツナは雲雀と向き合い話を始める。
そう言えば最近こいつとの時間が取れていないことに気づく。
俺は任務で忙しかったからというものあるが、こうやって誰かに邪魔されるのだ。
それにツナは優しいから一つ一つ話を聞いて納得するまで話をする。
そうすると時間がなくなってしまって、結局いつも同じ部屋で寝ていたのがなくなって、別々の時間を過ごしている。
そう考えている間にツナたちは話を終えて、雲雀は部屋を出て行った。
けれど、一つ気配が残ってる。
ツナの部屋に入り込んでる輩が一人。

「骸、てめぇは覗きが趣味か?」
「…いやですねぇ、覗きだなんて…最初からいただけじゃないですか」
「最初からいるなよ。まったくお前は、いつもそうだ」
「綱吉君、そんなに邪険にしないでください…二人で夜を過ごした仲じゃないですか」

俺は骸の一言にぴくっと反応した。
ここでツナがすぐに否定してくれれば何の問題もない話だ。
けれど、ツナは骸と視線を合わせるのが嫌だと言わんばかりに顔を逸らした。
それに骸も苦笑を浮かべるだけ。
何があったんだ。
俺は骸の胸倉をつかみあげて睨む。

「てめぇ、俺のモンに何してくれてんだ」
「何の話ですか?僕は綱吉君の護衛で部屋の外にいただけですよ?」

くふふ、と意味深な笑みを浮かべて言う言葉にはツナも戸惑いながら頷いた。
だったらそんな思わせぶりな行動とるなっ。
骸の胸を押し返しながら離せば、馬に蹴られる前に逃げましょうかね、と笑いながら姿を消した。
気配を辿っても、もう骸のものは感じない。
やっと二人きりになったと、ため息を吐けば次はツナに笑われる番だった。

「ははっ…もう、リボーン…」
「なんだよ、笑うな」

なんだと訝しんでツナを見ればひとしきり笑った後ぎゅっと抱きしめられた。
それから背中をぽんぽんと叩いてついでに頬にキスまでされた。
なんなんだ、本当に。
ツナを引きはがして顔をのぞき込めばまだわからないの?と首を傾げた。

「お前、俺を試したのか?」
「まぁ、そういうこと。皆は関係ないよ?皆は普通に話しかけただけ、俺がリボーンより皆を優先しただけ」
「何考えてんだ」

ツナの言葉に俺は呆れたように言った。
今までのストレスが一気に何もなくなったかのように軽くなる。
それでいて、この怒りの矛先をどこに向ければいいのかわからない。

「何って、リボーンにヤキモチ妬いてほしかっただけ」
「……それだけか?」
「うん、それだけ。だって、リボーン最近俺に構ってくれないから、ちょっと悪戯したくて…骸はなんか気づいてたみたいだけど」

あれにはひやひやしたよと笑って話すツナはソファに座って隣に座れと催促してくる。
とりあえず、頭を一発叩いておいた。

「ったいっ…何するんだよ、ちゃんとキスしたのにっ」
「それだけで許すと思うな、あんな子供のキスで全部丸く収まるわけねぇだろ」

どかっと隣に座ればいいきり、ツナはむすっと唇を尖らせて俺のネクタイをいきなり引いてきて、身体をツナの方向へと倒せばそのまま唇が重なり薄く開いた唇の隙間から舌が忍んでくる。
咥内を舐めて、舌を絡ませる動きをするが上手くいかないらしく苦戦しながら蠢かせ。
ツナのされるままにしているとツナは睨んできた。
俺にしろってことかよ。
肝心なところで押しきれないのはやっぱりツナらしいと笑えばそのまま舌を吸って甘噛んで、丁寧に愛してやれば唇を離したところでくたりと俺に身体を預けてくる。

「っとに、甘いな」
「リボーンがね」

ぎゅっと腰に抱きつくように身体を横たえてぐりぐりと頭を押しつけてくる。
俺はツナの髪をわしゃわしゃと撫でてやれば結局怒りきれない。
こうまでして甘えられてしまえばどうにもならないだろう。
それに元をただせば俺が悪い様なものなのだし…。

「俺にヤキモチ妬かれて嬉しかったか?」
「うん、嬉しかった…なんかいいたいのに言えないリボーンとか新鮮で…それに、それだけ愛されてるんだなぁって…幸せになれた」
「そーかよ」
「リボーンだって、俺にヤキモチ妬かせるくせに」
「俺はそんなことしてねぇだろ」

そもそも、ツナに意図してヤキモチをやかせようとは思ったことがないといえば意外な顔をされる。

「お前は無意識に俺にヤキモチ妬いてたのか?」
「…そ、そんなこと…」

見つめ返せば視線が逃げる。
俺はニヤリと笑ってツナの顎を掴んでこちらを向けさせる。
不服そうな顔がそこにはあった。

「ヤキモチ妬いてたんだな?」
「そうだよっ、悪いかよっ…だってしかたないだろ…リボーンに触ったり話しかけたりしてるのを見てるだけで嫌になるんだ」
「それは…重症だな」
「重症だよ…責任取ってよ」

拗ねたような声で言ってツナは俺をまっすぐ見つめてくる。
俺はそれにSiと小さく答えれば、甘い口づけをツナにした。
それぐらい独占したいと言うなら、喜んで俺の身体を預けてやろう。
そのかわり、お前の身体も俺のものだ。

離れないようにキツく抱き合って。
お互いしか見れなくなればいいのにと思いあって、
そんなこと、できないけれど…いつまでもそれを願っている。




END
キュン様へ
遅くなってすみません。
10年後でリボーンが守護者達にヤキモチやく、です。
というか、主犯がツナになってしまいました(笑)←
気に入らなかったら書き直させていただきますのでいつでもどうぞ。
素敵なリクエスト、ありがとうございましたっ。





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