珍しく君を待つ

仕事を終えて帰るが、今日は出迎えがいない。
部屋に入れば、いつも先客がいて明るい場所なのに今日は暗いまま。
俺は電燈をつけて明るくすると上着を脱ぎネクタイを緩めてソファへと放った。
珈琲を淹れながら新聞に目を通す。
特に変わった記事がないことを確認するとテーブルに置いた。
かちかち、という時計の秒針の音が静かな部屋に鳴り響いている。
いつもは特に感じる音ではないのにこういう時にばかり気になってしまう。

「そう言えば、久しぶりか」

今日はツナがいない。
俺は任務に出なきゃいけなくて、ツナは定例会議に骸と出席している。
いつも俺が行くのだが、任務の方が俺に適任だったため俺は一週間ほど留守にして、帰ってくる日の今日。
ツナは会議でいない予定だった。
予定通り行ったらしいことはメールで確認した。
いつも会議は長引くので、あともう少ししたら帰るだろう。
俺と行動を共にしていたツナはいつも部屋で俺を待っていた。
だから、俺が待つ日は早々なかったのだ。

「暇だな」

一人になりたいと思ったことは何度かある。
さすがに誰かと一緒の空間は疲れてしまう時があるのだが、いざこうして一人でいるとなんだか物足りない。

「あいつといないとき、俺は何をしてたんだ」

ツナに会う前は愛人と適当に遊びつつ一人を謳歌していたのに、今では一人でいることがこんなにもつまらないことになってしまうだなんて、誰が知っていただろうか。
珈琲をコップに入れて飲みながらソファに座れば、足を組んで近場に読みかけて置いたままの本へと手を伸ばす。
栞の挟んである場所を開いて適当に読み始める。
けれど、もうすでに読んでいない期間が長すぎてどういう話だったかも既に不明の状態だった。
俺は仕方なく元に戻して腕を組んだ。
俺がいない間、アイツは何をして時間を潰しているのだろう。
そわそわと落ち着かずにいれば、敷地に光が入ってきた。
ツナと骸の乗った車だろう、俺は立ち上がるが待っていただなんて気づかれたくなくて座りなおす。
暫くすると玄関の扉が開く音がして獄寺が出迎えているようだ。
そうして、待っていれば廊下を走る音がしていきなり部屋の扉が開いた。

「リボーンッ、ただいま」
「おかえり、何走ってきてんだ?汗だくじゃねぇか」
「だって、部屋の明かりついてたから、リボーンいるんだって思ったら、つい焦った」

ネクタイを緩めたワイシャツ姿で駆け寄ってくるのを立ち上がって抱きとめてやる。
焦ったと言われて嬉しくなる気持ちを押さえながら汗を拭ってやれば慌てて離れる。

「シャワー先に入ってくる」
「ああ、入ってこい」
「リボーンも…入る?」
「そうだな…入るか」

本当はもう少しあとにしようと思っていたが、上目づかいで遠慮がちに言われてしまえば頷かないわけにはいかないだろう。
ネクタイを解いて歩きながら脱ぐツナにそんなに急くことはないだろうと笑えば、悪いかよと顔を赤くしてジロリと俺を責めるように見てくるから、からかおうとした言葉もなくなった。
ツナの腕を引き寄せて、噛みつくように口づける。

「んん…ふぅ……はっ…リボーンだって、待ってたくせに」
「な…」
「俺の気持ち、少しはわかっただろ?」

唇を離せば、いつも俺が向けるのと同じようなニヤリとした笑み。
謀ったのかと睨むと、偶然だからと笑われた。
二人で脱衣場に入れば服を脱いで浴室に入る。
湯を溜めながらシャワーで汗を流した。

「お前の気持ちがわかったところでどうにもできないこともわかっただろ」
「まぁ、そうなんだけど……ひとまず、お疲れ様」
「入るだけじゃなかったのか?」
「そんなこと、一言も言ってないよ」

俺にねぎらいの言葉をかけながら触ったのは俺自身だ。
まだ反応していないそこを念入りに撫でさすり、暫くツナから離れていたそこはすぐに感触を思い出すように上向いた。
お互いに言葉遊びをしながら俺はツナの胸に触れた。
突起を引っ張りきゅっきゅっとひねってやればそこはツンッと硬くしこって主張する。

「ね、おねがい」

ツナは壁に背を預けて俺に腕を回してきた。
俺は胸に唇を寄せれば甘く噛んで吸ってやる。
上で息を飲む声がして背中にまわされた手に力がこもる。

「こっちも、か?」
「ひあっ…ん、うん…し、して」

突起ばかりを責めているのに自身はもう勃起して先走りを溢れさせていた。
自身をやんわりと握ってやればそれだけでますます硬くなりクスリと笑みを漏らせば、ばしりと背中を叩かれる。
胸から顔を上げると真っ赤になりながら無理やりキスをしてきた。
咥内を舐め拙い動きで俺の舌に絡めてくる。
俺はツナの好きにさせながら握った自身をくちゅくちゅと扱いて先端を指で強く撫でるとそれだけで腰を揺らした。
待ちきれないのだろう、腰がわずかに揺れている。

「強請らないのか?」
「強請ってほしいなら、いえよ」
「お前だろ」
「リボーンだ…」

今日はいつになく恥ずかしがるんだなと笑って、俺は自身をそのままにして再び指で胸をいじると納得のいかない顔。
もどかしいと感じて、それでも自分が言ってしまった手前、行動に移すこともできなくて戸惑った顔をする。

「ほら、ツナ…」
「もう…なんで俺ばっかり…」

俺が促してやればぶつぶつと文句を言うも耳元で欲しいから、と囁かれてしまえばこれ以上我慢できるわけがないだろう。
ツナの尻を掴むと秘部へと指を侵入させた。

「んっあぁっ…はやく…ほし…」
「だから、いつもいってるが、早いだろ」
「だって、もう慣れたよ…リボーンの形、覚えてるもん」

むすっと拗ねたような顔をしながら腰を揺らすツナはなんだかいつもより幼くなっているような気さえする。
どうしたんだと首を傾げてツナを見ればもうすでにとろんとした目で俺を見つめてくるだけだ。
骸と行ってなにかあったのだろうか…?
ようやくいつもの感じと違うことに気づけばツナの頬にキスをする。

「なにか、あったのか?」
「んー、あったといえば…あったけど、変わりないといえば…かわりない…かな」

少し寂しそうな顔を見せたツナに愛撫の手が止まりそうになるが、俺は何とかそれを抑えて行為を続けた。
ツナは感じながらも切なげに顔を歪めて俺にしがみつくように身を寄せてくる。
シャワーの音がやけに大きく感じられて少し弱めた。

「骸か?」
「…そう、認めてくれない人は本当にいつになっても駄目だから…」

骸は忌み嫌われる存在だ。
今も、昔も、変わらず。
ボンゴレに来て尽くしてくれていると思うのだが、なかなかそれは周りに伝わらない。
骸自身もそれは熟知していてツナと同行したのだろう。
あいつも自分が言われることでツナが傷つくことを知っていたのだ。
愛情の裏返しもあるのだろうが……あいつ、あとで締めあげてやる。
まったく、うちの守護者は素直じゃない。
特に霧と雲が…。

「気にするな、骸だってどうせ気にしてなかったんだろ」
「…そうだけど…」
「それに、二人の時はそれ以外考えないのがマナーだぞ」
「あんっ…はっ…やぁ、そこ…」

もうその話はしまいだと中の指を大きくかき回して感じる場所を突き上げてやればそれだけで甘い声を上げる。
そろそろかと指を抜き、片足を上げて自身を宛がう。

「この体勢きついんだよ」
「いいだろ?目の前でお前のイき顔みせろ」
「悪趣味…っ〜〜あ…あぁぁっ」

ツナの悪態を聞きつつ自身を一気に挿入すると足から力が抜けたのだろう、もっと深く合わさればそれだけでイきそうな声を出して、なんとか耐えた。
中をきゅうきゅうと締めつけてくる圧迫感に息を乱しながら俺は腰を揺らした。

「はぁっ、ああぁっ…かんじるっ…んんぅ…も、だめっ…イく、イ、くっ…」
「早いな、まぁ…今日は焦らし過ぎたか…」

ちゅっとキスをして、片手で腰を抱き寄せ身体を大きく戦慄かせて果て、俺も中に放った。




湯船にツナを後ろから抱きしめるようにして入りながら目を閉じていた。
心地よい充足感と倦怠感、お互いに満足して湯から出ると俺はバスローブを羽織って、先程作った珈琲をコップに注ぐ。
ツナの分はロンググラスに入れて砂糖と牛乳をたっぷり。
かき回して、俺のあとから出てきたところを渡すと嬉しそうに受け取った。

「リボーンのこれ美味しいんだよね」
「俺には甘ったるくてかなわないけどな」

風呂上がりの一杯とばかりに腰に手を当てて一気に飲み干すとごちそうさまと笑みを浮かべた。
俺は手を伸ばして首にかけてあるタオルでツナの頭をくしゃくしゃと拭く。

「リボーン、ベッド」
「…わがままだな」

そう言いながら俺はツナの歩調に合わせて頭を拭きながら移動する。
今日はとことん甘いなと自分で思うが、ツナもそう思っているのだろう始終笑みを浮かべたままだ。
寝室に入ってベッドに座ると拭くのを止めてドライヤーで乾かす。

「つーか、自分で乾かしてこいよ」
「えー?何―?」

わざとなのか本当に聞こえないのかよくわからない返事をされて俺は無視をした。
こいつにからかわれるなんてごめんだ。
すっかり乾いた髪を手櫛で整えてサイドボードに持ってきていた珈琲をとり、飲んで一息つく。

「ありがとう」
「ご褒美はないのか?」

にやりと笑えば俺の方を向いてツナからちゅっと可愛く口づけられた。
そのあと顔を歪めてにがっと言っているのを見れば噴きだす。

「ブラックが飲めなくてどうすんだ」
「…別に、飲めなくても不便ないもん」

ごろりと横になって甘えるように腰に抱きついてくる。
いつもより本当に自分がツナを甘やかしていることを自覚して、まさか寂しかったなんてことは…ない。
絶対、それはない。
二人でいることが当たり前になっていたことに、俺は驚きを隠せないでいた。

「ツナのせいだぞ」
「…何が?」
「何でもねぇ」
「変なの…もう眠いよ…」

ツナに言われるまま自分も横になれば抱きついてくる。
しっとりとした甘い身体を抱き返しながら充足して、眠るツナにおやすみを囁いた。

まさか、本当に…ツナなしでいれなくなる日がくるなんて
そんなことは、ない。
ただ、この笑顔を絶やさずにいたいとは思うけれど
そこまでのめり込んでいるなんて…それは、まだ自覚させないでくれ…。





END
ゆず様へ
改めまして、リクエストありがとうございます。
甘々でツナの帰りを待つリボーン、を書かせてもらいました。
書いてみればそんなにリボーンは待ってない気が…でも、とことんツナを甘やかしてみました。
若干キャラ崩壊が垣間見えます←
気に入らなかったら書き直しいたしますのでっ。
楽しませていただきました、ありがとうございました。




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