逆転妄想

「あ、あれ?」
「ああ?」

目の前に俺の顔がある。
間抜けな顔してるなと思うけど、眉間にしわが寄っていてなんだかリボーンみたいだ。

……………

「ええぇぇぇっ!?」
「……信じらんねぇ」

中身が入れ替わるなんて、どうして?
俺は慌てて目の前の自分の顔を触った。
どこもかわったとこがない…というか、中に入ってるのは…リボーンだよな…?
なら、俺の顔って
急いでベッドから降りて鏡の前に行く。
するとそこには、見慣れた…けれど、妙に焦った顔のリボーンが…

「なんでっ!?」
「知りたいのは俺の方だ」
「いや、お前なんでそんなに飲み込み早いんだよ」

焦っている俺を差し置いてリボーン(俺)はスーツに腕を通していた。
仕事あるけどっ、今日一日ならまだしもこの先もこんなんでやっていけるわけがない…第一、ほら…その、色々問題も出てくるだろうし?

「仕方ねぇだろ、とりあえずは仕事してからだ」
「でも、どうやって…みんなに言った方がいいの?」
「やむおえないときは仕方ないだろうがそれ以外ならこの状態は知られない方がいいだろ」
「なんで?」
「俺の姿だったらお前は外にいける」
「…ぁ……」
「今日はお前に暇をやるから良い機会だ行って来い」

リボーンから唐突に告げられた意外な一言。
てっきり近くにいろ、俺の体で変なことするなといわれるかと思ってたのに…。
思い返してみれば、リボーンは仕事が早いからやるべきことなど少しだ、それにこの姿ならいるだけで牽制になる。
そう考えれば嬉しくなって浮足立つ気分になってくる。
けれど…

「俺だけ…なの?」
「その顔で悲しそうな顔するな。仕方ないだろ、こっちはこっちで仕事がある」
「ん…そうだけど……」
「行ってこい、ただしもう少し普通の顔していけ」

つまらなそうにしていればリボーンは手を伸ばしてきて俺の頬にふれる。
けれど、目の前にいるのは自分の顔だ。
リボーンもそれを思ったのだろう、そっと手を離してしまった。

「……戻った後だな」
「………そうだね」

なんだろう…この物悲しい気分は……
誰がこんなことをしたのだろう。
大体目星はつくが、こんなことをする理由が見つからない。
こんなでは一番心配なことが一つだけある。

「重大な、問題だよな」

自分の掌を見つめて小さく呟いた。
本当の自分とはかけ離れた大きくて節くれだった指先。
この手のひらが心地いいと思っていた。
それなのに、いざ自分の身体になってしまうと何の魅力も感じない。
これはリボーンの為にある身体だ。
自分には果てしなく不似合いな身体だと思う。

「……止めた」

外に向かおうとした足をとめた。
とてもこの身体で外に出る気がしなかった。
リボーンの身体が嫌というわけではない。
自分が今リボーンの身体に入っているという事実を知らされるのが嫌なのだ。
俺は仕方なく執務室へと向かった。
リボーンが仕事を変わってくれるなんて滅多にないことだから観察していようと楽しくなってくる。




「獄寺、この書類片付けろ。雲雀、これはできた分だもってけ」
「…なにこれ」

執務室に入れば異様にやる気に満ちた空間が広がっていた。
なんだか俺がいるときとは大きな違いが…これ、リボーンはばらしてないんだよな…?

「なんだ、つ…リボーン、お前遊びに行ったんじゃなかったのか?」
「そんな気になれなかった…適当に時間つぶす」

リボーンが俺を真似ているんだと思うがとてもそうは見えない。
俺もリボーンを真似るがどうにも上手くいかない。
俺は自分の顔を見るのが嫌で、適当にテラスに出ると窓の下あたりに座り込むと昼寝に勤しむことにした。
どこにもいかないのならすることもないし、この事態の元凶を確かめに行くのもいいが犯人を突き止めるのも面倒だ。
多分、そのうち戻るだろう。
俺はそんな暢気な気分のまま昼寝に興じたのだった。



「おい、てめぇいつまで寝てやがる」
「んっ…いたい」

声がして目を開ければ俺の顔が眉間に皺を寄せて立っていた。
俺はそんな顔滅多にしないのに…。
つい面白くて笑うと、なに笑っているんだと頬を抓られた。
あたりはすっかり日が傾いて夕日の雰囲気だ。

「これ、リボーンの顔なのに」
「馬鹿、そんなの気になるか…ったく、お前外行かなかったんだな」
「うん、だってリボーンの顔で外に出て銃撃戦は勘弁」

俺は本当の理由を話すことはせずに怖い怖いと別の理由を付けて笑った。
リボーンはそうかと小さく呟けば中に入ってしまおうとしていて、つい俺はリボーンの手を引っ張った。

「ん?なんだ?」
「…俺に構ってくれないの?」
「……俺の部屋に入ってろ、飯持って行くから」
「ん……わかった」

今日は皆と接するのを避けようという意味なのか、夕食を持って行くと言われて俺は大人しく大きく伸びをしてリボーンの部屋に向かった。
その道すがら、反対側から骸が歩いてくる。

「おやおや、アルコバレーノかと思ったら…綱吉君でしたか」
「なんでわかるんだよ、お前は」
「幻覚使いとして、当然でしょう?」
「これは、お前の仕業じゃないよな?」
「そんなつまらないことするわけないでしょう?僕は君の心が君の身体に入っているのが好きなんですから」
「…だよな、ありがとう」
「いえ、大変ですね…」

妙に飲みこみの早い骸に不思議に思うが、こいつは嘘をつくことはしないと思うので納得しておくことにする。
ここで疑ってもやってないなら栓なきことだ。

「でも、多分すぐに戻りますよ」
「本当?まぁ、このままでは何かと不便だと思いますしねぇ?」
「……」

何が言いたいんだと睨んでやると、それでは僕はこれでと歩いて行ってしまった、
逃げられた……。
骸の口調にはしっかりと夜のことが含まれていて大きなお世話だと思った。
まったく、どうでもいいことばかり気にして。
俺はむかむかとした感情のままリボーンの部屋に入ると何もすることがないので寝室へと入る。
ベッドに座れば、たくさんリボーンの香りがした。
嗅ぎ慣れたそれに、ちょっと安心して大きく息を吸い込めば身体のそこから欲情が湧きあがってくるようだ。

「っ…」

まずいと思うのに止められなくて、俺は自然と下肢へと手を伸ばしていた。
握ったそこはいつもと質量が違って驚く。

「リボーンの身体…だ……んっ…」

今は自分の身体ではないと感じるがそれすらも興奮材料になっていた。
自身を取り出し、いつも自分が舐めているものをまじまじと見てそれを擦り上げる。
どうやったら感じるのだろう、と考えてしまうと裏筋やら先端やらを自分で刺激しはじめた。
いつも自分がやっているやり方だとやっぱり性感が違うらしくてあまり気持ち良くない。
なにが良いのだろう…。
扱いてみたりして、先端をぎゅっと握った時にそれは唐突にやってきた。

「はっ…ふぅぅっ……」

締めつけられるのがいいのかと思ったところでいつも自分がしていることを思い出せばぼっと赤くなる。
なんだよ、俺とリボーンって実はすごい身体の相性いいんじゃん。
ここまで付き合ってきて身体の相性など問題ではないと思ったが、相手の性感を知ったときにまじまじと知らされてしまえば嬉しくて仕方ない。
リボーンを喜ばせるつもりで自身を握ってあやし、感じてくればこのままイってしまいそうだと、息をつめたそのときだ。

「おい、なんでこっちにいるん…ツナ?」
「わぁあっ…!!」

リボーンが入ってきて俺は驚いてついベッドの中にはいった。
いや、もう何してたかなんてわかりきってるけどっ、恥ずかしいんだっ。
リボーンは俺の顔でにやりと笑って、食事は向こうのテーブルに置いてきたのだろう楽しそうな顔をしながら入ってきた。
っていうか、お前自分の顔じゃ反応しないんじゃないのかよっ。

「な、なんだよ」
「お前、俺の身体で何してたんだ?」
「だって…つい……」
「つい?」
「今日はできないのかと思ったら…反応したんだよっ、生理現象なんだから仕方ないだろっ」

それだけで感じるなんて簡単な身体だなと笑われて、これはリボーンの身体なんだけどっと喚きたくなるがその前にリボーン(俺)が覆いかぶさってくる。
え、これはちょっと…いろいろまずいんじゃないんだろうか…だって、あれがそれだろ。
自分で考えていることが分からなくなりながらリボーンの掌が俺の瞼を覆ってきた。
そのまま触れた唇は今日一度も触れてなかったからかすごく感じた。
もっと、と思えばリボーンの頭部を引き寄せて深く重ね合わせていた。
気持ちいいと感じるが、やはりいつも感じるものではなくて名残惜しげに咥内を舐めて離れる。
リボーンもそう思っていたのか無理に続けることはせずに離れた。

「俺の身体で遊ぶのも大概にしろよ」
「ちょっとぐらい、いいじゃん…イってもいい?」
「自分でできるなら、しろよ。多分俺はできねぇから」
「ん…じゃあ、さっきみたいに目隠ししてキスして…というかリボーンがしてくれたら俺は気持ち良くなれるよ」
「わがまま」

自分ばかり気持ち良くなりやがってと言われるがこうなってしまったものは仕方ないというか…。
さっきと同じように目隠しされて唇を塞がれるとリボーンのというか俺の指先が自身を触ってくる。
びくっと感じて俺は必死に舌を吸っていると舌を逆に絡ませられて一気に感じさせてくる。
やっぱり自分の場所を熟知しているだけあって気持ちいい。
ヤバい、イく…っ…
俺は声を押し殺してリボーンの手の中に白濁を放った。

「はぁっ…はぁっ…なんか他人の身体でイくのって…変な感じ」
「なら戻るの待つしかねぇな…とりあえず、飯食え」
「はーい」

リボーンは手の平の白濁を拭いながら至って普通に俺を寝室の外へと促した、
本来ならここからが本番だったりするが何度も言うがとてもそんな気分にはなれないのだ。

こうして俺達は類稀なる貴重な体験をして、翌日にはすっかり元通りだった。
何が原因でそうなったのかはまだ不明だが、もうこんな体験しなくてもいいと思う。
だって…自分の身体に触るのはやっぱりつまらないものだからだ…。




END
三琳様へ
入れ替わり、とちょっとリボーン(の身体)で自慰でした。
こんな形でしかやっぱりできませんでした。でも、書いていて楽しかったです。
いずれはどこかでリボーンガチ自慰も書いてみたいものです。
遅くなってすみません。
素敵なリクエストありがとうございましたっ。





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