献身的な愛
「ツナ…仕事終わったか?」
「ん?…ああ、終わったけど?」
平和な毎日を送って来た日のこと、仕事が片付いたのを見計らってリボーンが俺に話しかけてきた。
何か話しでもあるのだろうかと首を傾げて見つめれば俺の腕をとって二枚のチケットが渡された。
よく見れば、有名な水族館のものだ。
ここはイルカやアシカのショーが見どころで館内も広いと言われている。
そんなものが何でこんなところに?
そう瞳で問えばニヤリとわらったあとこういった。
「久しぶりのデートだ」
「女装は?」
「しなくていい」
「仕事は?」
「休みだ」
「やったーっ、リボーン大好きっ」
リボーンの返事を聞くなり抱きついた。
恥ずかしいなんて思わない、だって久しぶりのデートで休みなのだ。
しかも女装なしっ。
いつもデートやら外出といった場面ではボスだとばれないように女装することが多かった。
まぁ、ボスとしてどうかと思って居たのだが。
「いつ行くの?」
「明日だ、不都合はねぇよな」
「まぁ、予定決めてるのはリボーンだし…」
「ラフな格好してこいよ」
「リボーンも私服なの?」
「当然だろ」
明日を楽しみにするために今日は別々に寝ることにする。
渡されたチケットを見て俺は嬉しさに笑みを浮かべた。
考えてみれば何もないデートなんて久しぶり過ぎるぐらいだ。
俺はワクワクと気持ちが高ぶるのを感じながら早めにシャワーを浴びて就寝した。
明日は、沢山遊びまわる予定だ。
次の日。
朝いつもより早く起きてしまい、そんな遠足前の幼稚園児の気分になりながらスーツじゃなく久しぶりに私服を着る。
「あー、なんか緊張してきた」
久しぶり過ぎるせいか服もこれが似合っているかわからなくて少し迷ったが最初着たもので行くことにした。
そういえば今日は車誰が出してくれるのだろう…。
二人で行くからリボーンなのだろうか…?
車を運転するリボーンとか、どうしよう。
思い悩みながら部屋を出て中央扉の方へと行けば、外からリボーンが顔を出した。
「ツナ、遅いぞ」
「わ、わかったっ」
いつものトレードマークのボルサリーノを脱いでスーツ以外の服を着ているリボーンに一瞬動きが止まるが急いでリボーンの元へと向かう。
外に出るともうそこには車が乗り付けてあった。
俺はそれに乗り込むとリボーンが運転しはじめる。
「…………」
「…………」
「なんか話せ」
「や、だって…こんなの久しぶり過ぎて何話していいかわからない…」
「緊張することかよ」
「リボーンだって、緊張してるくせに」
「俺がするわけねぇだろ?」
「知ってるんだからな、目を合わせないときって緊張してる時だろ」
俺が言えば言葉に詰まって黙ってしまった。
図星か…。
クスクスと笑えばくしゃりと頭を撫でられて耳をくすぐってくる。
「くすぐったい」
「お前が余計なこと言うからだろ」
余計ではないとおもう。
だって、喋らないなら喋らないでリボーンは煩いだろうし。
そんなことを言い合いながら水族館につけば二人で中に入る。
道順に添って入って行けば小さな魚から大きな魚までたくさんの生き物を見て回る。
「綺麗だなぁ」
「昼は魚にするか?」
「おまっ、ここで禁句いうのか!?」
「見てると食いたくなるだろ?ほら、こっちは蟹がいるぞ」
さきを歩くリボーンを見ればなんだかリボーンもはしゃいでるように見えてきてよかったと思える。
一通り魚類を見て回ると次は様々な種類のペンギンの集まる飼育槽へとやってきた。
「たくさんいるっ」
「おい、あんまりはしゃぐな」
「今日ぐらいは良いだろ?それにお前だってさっき楽しそうにしてた」
リボーンそっちのけでペンギンを見続けてそのうち中に飼育員が入ってきて餌をばらまき始めた。
「リボーン、リボーン、食べてるっ」
「あーあー食べてるなー」
「なげやりに頷くなよ」
まったくなんでそんなにやる気のない返事しかできないんだとリボーンを見ると他の方を向いていて、俺がペンギンに夢中になったから飽きてしまったのかと俺はリボーンの手を握った。
「ん?どうした、ツナ?」
「何でもない…そろそろショーが始まるよ」
「ああ、そうだな。じゃあ外に出るか」
ペンギンは見たかったけれど、リボーンと一緒にいる方が楽しい。
俺達は手を繋ぎながらショーの行われるプールへと向かった。
俺達が行くころにはもう始まっていて、沢山のイルカたちが宙を舞い、水しぶきを撒きあげていた。
「立ち見でしか無理っぽいね」
「これだけ人気があればな、仕方ないだろ?」
「いいよ、ここでも見えるから」
それに一緒にみれるのがいいのだからと笑うとそうかとリボーンも笑ってくれる。
というか、なんでこんな突然水族館なんて誘ってくれたのだろう。
俺は別に行きたいとも言ったことなかったのに…。
「ねぇ、リボ……?」
話しかけようとすれば、リボーンはどこかを向いて気を張っているように見えた。
つい、俺はそれを見てしまうが…なんだか嫌な予感がする。
俺は繋いでいる手を引いた。
「どうした?」
「みて、すっごい飛んでる」
「お前も飛びたいか?」
「っ…耳元で喋るなっ」
明らかに夜のことを言われていると気づいて、ばっと耳をふさげばにやにやと笑っている。
まったく今日はなんだというのだ。
俺だけなんかのけ者にされている気がする。
気のせいならいいが、そんな気がしない。
そうこうしている間にショーは終わってしまい、俺達はラッコが居る塔へと移動することにした。
その塔に通じる道は滝の裏側を通るような作りになっており秘密基地にきたみたいですごく幻想的だ。
「すごいな」
「ツナ…」
「えっ…へっ!?」
素直に感想を漏らしたが二人きりの空間でいきなりリボーンが俺の手を引き寄せてきて俺は、ついリボーンの胸の中へと収まった。
抱きつく形になってしまえば恥ずかしくてもがくと、リボーンの唇が耳元へと寄せられた。
「ツナ、ちょっと静かにしてろ」
「なっ…」
パンッパンッ、吐息が耳にかかってなんだと問いかけようとした矢先、いきなり銃声が響いてドサリと人間が倒れるおとが聞こえた。
なんでリボーン拳銃持ってるんだ?
なんで、こんなに楽しかったのに…。
「仕事だったの?」
「お前以外はな」
「卑怯だっ、なんで俺ばっかりっ」
「仕方ないだろ、お前を付け回してるやつらが後を絶たないんだ」
「だからって、こんなやりかたないだろっ」
俺がどんな想いでこんなに楽しみにしてたかわかってるのかっ!?
憤りで言おうとした言葉は言葉になる前に俺の涙となって頬と流れた。
「もう、ヤダ…帰る」
「わかった…帰るか」
本当はもっとたくさん遊んで帰りたかったが、もうこうなってしまえばここにいることもできなかった。
俺はせっかくの大切な日を台無しにされたような気持ちで、帰りは無言の車内にリボーンは文句言わず運転した。
帰ってくれば俺は一人部屋に閉じこもったのだ。
「おやおや、やはり君は僕の予想を裏切りませんね」
「どっかいけ」
「泣いているんですか?」
「うるさいっ」
一人でいたはずなのに、骸が入ってきてベッドに顔を埋めている俺の頭を撫でてきた。
お前に撫でられても嬉しくないと手を払うとふぅとため息が聞こえた。
たぶん、俺が楽しんでいる裏では沢山の人たちが動いていたのだろう。
「僕は反対したんですよ…というか、アルコバレーノ以外は反対してたんですが。でも、少しでも楽しんでもらおうと思っていたんじゃないですか?」
「あんな風になるってわかってて楽しめるわけないじゃないか」
「言っておきますが、行く場所もコースも、考えたのは全部アルコバレーノですよ。少しでも綱吉君に楽しんでもらいたかったんじゃないですか?だって、きっと…貴方を想っているのは誰より一番だと思いますからね」
「……」
無視しようと思った骸の声は案外響いてきて、もう頭の中がぐちゃぐちゃだ。
俺だってリボーンのことは好きだし。
あれぐらいでまず最初に嫌いになるはずもない。
ちょっと怒っただけだ。
せっかく、今日は二人で休みかと思っていたのに、それを裏切られた悲しみは怒っても良いぐらいだろう?
「さぁ、そろそろ謝りたくなったでしょう?」
「………」
「アルコバレーノなら、部屋の外でうろうろしていましたよ」
それを聞くなり俺は身体を起こした。
にやにやと笑っている骸を見れば、問答無用で頬を殴った。
「いたっ、酷いじゃないですか」
「俺の命令なしに動いた罰っ」
どすどすとできるだけ足音を大きくしてドアを開ければ目の前にドアを開けようとしていたらしいリボーンが居て驚く。
でも、俺は唇をかみしめて部屋の中を指さした。
「骸に襲われたっ!!」
「俺の部屋に来るか?」
「いくっ」
仲直りのきっかけを作ったんだと両手を出せば引かれて深く口づけられた。
そのキスは優しいばかりで、俺は怒っているのに尖っていた何かが丸くなっていくのを感じていた。
もう、あとはリボーンが部屋に連れてって俺の機嫌をとって。
きっと素直になれないから。
お前の愛に俺はいつも、支えられてるよ…。
END
ゆず様へ
かっこいいリボーンとデート、でした。
かっこいい、ってこんな感じでよろしかったでしょうか?ああ、なんか最後はへたれにしか見えない気がするのは気のせいです、気のせいですよ〜。
でも、ところどころに私がかっこいいと思うリボーンをとりいれてます。どこかは秘密ですが(笑)
気に入ってくれたらうれしいです。気に入らなかったら書きなおし希望承ってます。
素敵なリクエストありがとうございました。